第2話 てんわやんわの追いかけっこ
イリアとドッコイの二人は森を駆ける。
その際、迫るウルフをドッコイが払っていく。
「ふはははははっ。無駄無駄無駄っ。」
「凄い! 強い! なんか笑い方が悪役っぽいけど…。」
言葉通り、止まること無く進んでいく。
もはや、止められる者などいないだろう。
そんな二人へと一斉に飛びかかって来るが…。
「無駄だと言ってるだろうっ!」
迫るウルフへと突っ込んだドッコイがまとめて吹き飛ばす。
どれだけ数が増えようが関係ない。
「ふははっ。恐れるに足らずっ。」
「凄いですね。この調子なら、すぐに友達も助けられるかも。」
「当然だ。どれだけ来ようとも、私が払って…。」
グルルルル。
「え?」
「え?」
声が聞こえた方へと振り向く二人。
そこから、新たなウルフが現れる。
いや、そこからだけではない。
二人を囲むように、沢山のウルフが現れる。
「えーと。こんにちはー。」
グルル。
囲うウルフは、二人に向かって唸る。
挨拶をしたところで、仲良くなれる筈もない。
そんなウルフは、二人へと一斉に飛びかかる。
「うおおおおおおおおおおおっ。」
「わあああああああああああっ。」
迫るウルフを見て、叫びながら逃げ出す二人。
当然、その二人をウルフが見逃す筈もない。
逃げる二人を追いかける。
「ドッコイさんっ、どうにかならないんですか? どれだけ来ても払ってやるって言ってたじゃないですかっ。」
「限度があるだろうっ。あんなにいるなんて聞いていないぞっ!」
「さっき、沢山いるって言いましたよねっ!」
「沢山にも程があるだろーーーーっ!」
言い合いながらも逃げ続ける二人。
どうにか出来るにも限度がある。
後ろのウルフは、その限度を越えている。
「くうっ。武器さえあればあの程度っ。」
「あるじゃないですか。腰の剣っ。」
「そ、そうだった。しかし、振るには距離が無さすぎるっ。」
武器なら、腰についてる剣がある。
しかし、抜いて振るまでには追い付かれてしまう。
一瞬でも、ウルフを止める必要がある。
「時間があれば良いんですねっ。稼ぎます!」
「そうか、頼むぞ!」
「はいっ! いきますよ!」
「「せーのっ!」」
同時に振り向く二人。
それと同時に、イリアが魔法を放つ。
「浮けっ。風よっ!」
イリアが放った風は、ウルフを掬い上げるように吹く。
それにより、飛んだウルフが後ろのウルフと衝突。
「今です!」
「おう!」
少なからず、時間は生まれた。
その隙に、ドッコイが剣に手を当てるが…。
「………ドッコイさん?」
一向に動こうとしないドッコイを見るイリア。
ウルフもまたドッコイを不思議そうに首を傾げて見る。
その視線が集まる中で、ドッコイは剣を持つ手を震わせる。
「剣が錆びて……抜けません。」
申し訳なさそうに呟くドッコイ。
その声は、若干震えている。
「え、ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
イリアの声が辺りに響く。
心の底からの絶叫だ。
その声に、近くにいた者が反応する。
「あら? あの声は?」
その声の主は、その声のした方へと向かう。
一方、イリアはドッコイへと詰め寄る。
「ど、どうするんですかっ。」
「決まっているだろうっ。逃げるぞっ!」
「結局そうなるのっ!?」
頼みの剣も使えない。
こうなると、逃げるしか無いだろう。
再び追いかけっこが再開される。
「「ああああああああああっ。」」
あっちへと逃げ。
「「ああああああああああっ。」」
そっちへと逃げ。
「「ああああああああああああああああああああっ。」」
とにかくひたすらに逃げていく。
そうしてついに、元の蔵へと戻ってくる。
「どうしよう。戻って来てしまいましたよっ。」
「ぐぬぬ。獣どもめっ。」
蔵へと辿り着いた二人は振り向く。
そんな二人を、ウルフ達が囲んでいく。
逃げ場など無い。
「仕方ない。こうなったら破れかぶれだ。まとめて相手してやるっ。」
「ええっ。でも、仕方ないか。」
「そうだとも。そもそも、試さずに諦める訳にはいかないからな。」
「そうですね。言われてみれば、出来るような気がして来ました!」
「当然だ! さぁ、我と共に戦おう!」
「はい! 戦いましょう! 一緒に!」
気合いは充分だ。
負けてたまるかとの気持ちが伝わり合う。
そんな気持ちが二人を動かす。
「行くぞっ!」「行きましょう!」
同じ気持ちを胸に駆け出す二人。
その時だった。
「伏せなさい。」
「え?」「え?」
何処からか声が聞こえた直後、複数の爆発が起きる。
それに巻き込まれたウルフ達が吹き飛ぶ。
そして、同じく受けたイリアとドッコイもまた吹き飛ぶ。
「「ああああああああああっ!」」
滑り込むように地面へと落ちる二人。
しかし、爆発を見たウルフの群れが逃げ出す。
その様子を、首を上げた二人が見送る。
「逃げていきますね。」
「あぁ、一体何が?」
突然の謎の攻撃にウルフの群れが逃げていったのだ。
その事実に疑問を持っていると、何処からか声が聞こえてくる。
「こんなのも払えないなんて。相変わらずね、イリア。」
「っ! その声はっ。」
声が聞こえた方を見るイリア。
その先で、蔵の上に立つ一人の少女がため息をついた。
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