最終話 結婚
雪音が絡まれる事件が起こってから結構な時間が経った。
時間が経ったからといって僕たちの関係が変わるようなこともなく今までと同じように僕の家でゴロゴロしていた。
「なあ、雪音」
「なに?」
「僕たち結婚しないか?」
「ん~」
「ん!?!?!?!?」
「おお、いきなり立ち上がってどうした?」
「いやいやいや、いきなりなんてこと言ってくれちゃってるの!?」
はて?何か変なことを言っただろうか?
別に普通のことを言った気がするんだけどな。
「いや、雪音と結婚したいなと思って。ダメだったか?」
「ダメとかじゃなくて!もうちょっとロマンとかタイミングとか考えなかったわけ?」
「いや、そういうのをするよりも素直に気持ちを伝えたほうがいいかなって思ってさ。」
「う~ん。気持ちは嬉しい。でも、もっとロマンチックなプロポーズをされたかった」
むぅ~と頬を膨らませながら僕を睨みつけてくる。
そこまで睨まなくてもいいのに。
「あと、これ」
「え?これって///」
「そう指輪。最近というか結構前からバイトして買ったんだ」
「うれしい!秋ありがとう!その、指にはめてくれない?」
「お安い御用だ」
僕は跪いて雪音の左手の薬指に指輪をはめる。
「本当にうれしい。ありがと、ね秋」
少し涙ぐみながらも雪音は喜んでくれる。
「なんで泣くんだよ」
「だって、嬉しくて。それに前に秋が彼女できたっていう嘘をついたときは目の前が真っ暗だったのに今が幸せ過ぎて」
「あの件は本当にごめんなさい」
「いや、そうじゃなくて嬉しくて。じゃあさ、これから私たちは婚約者ってことになるのかな?」
「そうだね。僕たちがもう少し年齢を重ねていろんなことに責任が取れるようになったらその時にしっかり籍を入れよう」
「うん!」
◇
「思い返してみれば酷いプロポーズだったよね~」
「言うなよ。というかもう何年も前のことをそんなにも引きずるなよな」
「だってしょうがないじゃん。印象に残ってるんだから」
「いや、悪かったって思ってるよ。さすがにもう少し何かいい言い方があったと今は思ってるけどあの時はそこまで気が回らなかったんだよ」
「全く、でも嬉しかったからいいけどね」
結婚式の前日の夜に僕たちはそんなことを言い合っていた。
あの告白から数年たって僕たちはついに籍を入れる。
長いようで短かったけどこれからは婚約者ではなく夫婦としての新しい生活が始まる。
「でも、雪音がプロポーズのことを言ってくるなら僕にだって手があるぞ?」
「言ってみなよ!」
「お前が照れ隠しで僕のことをずっと罵倒してた話」
「くっ、」
「あれが無ければ僕たちもう少しスムーズに付き合えてたと思うんだけど」
「だ、だってしょうがないじゃんか。本当に恥ずかしかったんだからさ」
「いやいや、やり方が小学生男子だしな~」
「いいじゃんか。別に私達こうして結婚できるわけだし」
「それもそうだな」
紆余曲折ありはしたけど、確かに僕たちは結果的に結婚するわけで。
結果良ければすべてよしという奴だろうか。
「でも、私だって反省してるんだから。口は災いの元っていうからね。今度から言わないようにする」
「それは何より。妻から毎日のように罵倒されるとか僕には耐えられそうにないからな」
「言わないよ。そもそも秋に不満なんてないし」
「嬉しいことを言ってくれるじゃないか」
「まあね。でも、秋が罵倒してほしいっていうならいつでもやってあげるよ?」
「遠慮しておく」
僕はそこまでMじゃないし。
何より新婚でそんなプレイなんかしたら性格が歪んでしまいそうだ。
「残念。まあ半分は冗談だけどね」
「半分は本気なのかよ、、、」
「あはははは」
「笑い事じゃないんだが?」
「あはははは」
「おい。笑ってごまかすなよ」
と、こんな感じで前から変わらない関係性で僕たちは続いている。
これから先、何があるかはわからない。
苦しいこともあるだろうし辛いことも幸せなこともあるだろう。
でも、雪音と一緒ならどんな困難でも乗り越えられる気がする。
「まあ、でも本当人生何があるかわかんないよな」
「いきなり何?」
「いや、一時は雪音に嫌われようとしていたのに今はもう結婚前夜なんだもんな」
「確かに。というか、嫌われようとしてたわけ?」
「あっ、」
そういえばこのことは雪音に言ってないんだった。
「詳しく話してもらいましょうか?」
「あははは」
「笑ってごまかさないで」
「あははは」
「こら~」
こんな感じで僕たちの中は続いていくんだと思う。
これからもずっと。
幼馴染に彼女ができたと言ったら泣き出した 夜空 叶ト @yozorakanato
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