第68話 〇×クイズ、正解すると優勝チャンス!?

「わくわく、ドッキドキ♬」

「ショートカットで優勝ゲット!」

「〇×クイズに正解すると、ゴールが目の前に」

「これまで100人のプレイヤーが挑戦しました」

「でーすーがー……」


 愉快な司会者のようにして、交互に話していたクレオパトラ風美女に変身している水の精霊ウンディーネさんと、我が家で誕生したのち、彼女の養子になったスフィンクスさん。何やらためを作り、フフフと似たような笑みを浮かべている。仲いいですね、すっかり似た者親子だわね。


「なんと正解者は一人もいないっ」

「ええっ!!」※驚くウンディーネ

「このクイズ、難しいのかー!?」

「そんなー」※頭をかけるウンディーネ


「いえいえとっても簡単」※サムズアップするスフィンクス

「〇か×の二択。正解のほうへ飛び込めばオッケーのらくちんイベントです」

「すごーい!!」

 ※拍手するウンディーネ(某〇グループの通販CM風でお送りします)


「さあ、次の挑戦者は誰だ!!」


 ドルルルルルルル……どどんっ!!


 効果音のあと、スポットライトが突然わたしに降り注ぎます。ナニコレ?


「現在最下位、つまりこのゲームイベント最後の挑戦者だっ。プレイヤーの名前はー?」※獅子の手を人面の耳に当てるスフィンクス


「チョーコちゃーーんっ」※カゴから紙吹雪と飛ばすウンディーネ

「では問題!!」

「ででんっ」※ウンディーネが口で表現


「スフィンクスのママでとっても美人なのは……」

「ウンディーネっ」※ウンディーネが自分で言う

「でーすーがー……」

 ※あっ、とわざとらしく口に手を当て、頭をこつんするウンディーネ

「彼女が最初に変身したのは、どんな人物でしょう!!」


 スフィンクスさんが祭壇から飛び降りる。するとスポットライトが後ろに隠れていた〇印のある赤いドアと×印のある青いドアを照らした。


 ノブがないからドアというよりパネルかな? 

 バラエティとかでよく見るアレです。材質は発泡スチロールのなのか、それともかなり薄そうのなので模造紙なのか。どっちにせよ知ってるよ。飛び込んで不正解だと、その先に泥があるんでしょ。


「初恋は甘酸っぱく。清楚なおさげ髪の少女。〇か×か!?」

「わーお、かーんたんっ」


 で。

 えっと……二人の視線が集まっているのですが?


「コレ、やらないとダメなんですか?」

「ほげげ?」


 ヒッポちゃんと二人、質問します。するとウンディーネさんとスフィンクスさん。同時におっしゃいました。


「エッ、こんなに簡単で超お得なイベントなのに挑戦しないの!?」


 ハアまあ……なんとなーく理解しました。

 正解するとゴール目前までショートカットできるってことですよね?

 でも不正解だと泥まみれ??


「あっ、いっけね。ママー、ぼく大事なこと言うの忘れてた!!」

「あらあら坊やったら。しっかりして」


 巨大な人面頭部を、ヨシヨシしている美女ウンディーネさん。


 なーんか、見ていて居心地が悪いです。微笑ましくないの。スフィンクスさん、ミニチュアなら良かったのに、でっけーんだもん。見た目、成人ファラオだしさ、シマヘビみたいな髭あるしさ。ヒッポちゃんですら「ほげー…」と視線そらしてるしさ。


「あのー、それで大事なことって?」


 やっぱりペナルティーの泥?

 泥を派手に顔に浴びないとダメなやつですよね。べったりつかないとオイシクないんでしょ? 


「えーっと、不正解だと泥を浴びます」

 やっぱり。

「そしてその前に、そもそも挑戦者の方には参加料を頂いておりまして」

 ……金ですと?

「この参加料、正解不正解問わず、頂戴いたしますのでご了承ください」


 ぺこりとするスフィンクスさんとウンディーネさん。

 ハイハイ、わかりましたよ。このゲームがなんだかんだでコインを支払わせよとする仕組みなのは理解してます。クレーム言いましたが、改善する気がないと見た。


「で。いくらですか、参加料」

「ほげげ?」

「うん、参加するよ。だって正解したらショートカットできるんだよ。優勝できるかもなんだよっ」


 いきなり始まったバラエティのノリに乗り遅れていましたが、しっかり理解しました。完走を目標にしてきましたが、ここへきて大逆転チャンス!! 

 しかも失敗しても泥浴びるだけでしょ? ぜーんぜん平気。やるやるぅ♪


「参加料はプレイヤーが所持しているコイン数によって変動します」

 とスフィンクスさん。ウンディーネさんが、それに続く。

「あなたの全財産、そちらが参加料になります。すべてゴッソリ頂きます」


 ……ハイ?

 全財産ですと??


「ちょ、ちょっと待ってください。それって全財産没収されて〇×ゲームに参加したとして、もしも不正解だったら、一文無しになるってこと?」


「没収なんて……参加料です」

「そうです、参加料です。イベント参加は強制ではありません」

「どうします? 参加しますか?」


 じーーーーっと見てくるスフィンクスさんとウンディーネさん。横からも視線を感じるなと思ったらヒッポちゃんも心配そうにこっちを見ています。


「あのー、クイズは一回だけですか?」

「ハイ、一度のみのチャンスです」

「正解してもレースで絶対優勝できるって訳じゃないですよ?」

「ショートカットできます。ただしゴールテープが目前の状況まで移動できますので、限りなく優勝に近いでしょう」


 フム。

 今回のフライングレース。優勝者には1000万コインです。

 2位でも500万コイン、3位で100万コインがもらえるのです。

 ……フム。なーるほどね。


「わかりました」

「それで参加しますか、しませんか?」

「参加は任意です。強制ではありません。このままレースを続けることも可能です」


 ちょっと心配そうにしているウンディーネさんです。

 ですよね。正解不正解のどちらにせよ全財産を失います。


 それでも賞金が手に入れば、3位でも100万コインゲット。現在の所持金はそれ以下です。正確にいうと32万4339コインですね。思ったより少ない。王族ベッドなんて買ったからだな。


 で、まあ。答えは簡単ですよ。

 きりっと宣言します。


「この賭け、乗りましょう!! 参加料の全財産、ひとつ残らずもってけー!!!」


 ピロンッ♬


【〇×イベントに参加したため、所持するコイン数が0になりました】


 よーーーーしっ、絶対正解して優勝するぞおおお!!!


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