第30話 牛を育てて有機肥料も作ろう

 精霊の風車は巨大だった。今は平屋(ゆくゆくは大豪邸!)の家屋の二倍以上の高さがあり、威圧的にそびえている。


 なんか……すごい。巨人に見えたドン・キホーテの気持ちがわかった気がする。

 正直、今の敷地の規模感だと持て余してしまう立派さだ。でもまあ。


「ぼくらが建てた風車だよ」

「とっても便利な風車なの」

「くるくる回るよ」

「くるくるー、くるくるー」


 ポンッとこの巨大な風車を出現させた、小さな風の精霊シルフとシルフィーネは、例のひたすらくるくるやっている回転ダンスを披露してくれている。ご機嫌でなによりです。


「二人ともありがとう、大事に使わせてもらいまっす」

「いいの、いいのー」

「わたしたち、ともだちなのー」

「ふぉっふぉっ」

「あ、ノームのおじいちゃんも、土地ありがとうございました」


 お礼に三人にピクシー特製のレモンパイとオレンジジュースを振舞う。そうしていると、リンゴの木の下で日向ぼっこしていたうちの幻獣ヒッポちゃんが、のそのそ動き出して。


「ほげー」

「おやっ」「あらっ」「ひえっ」


 三人が、ヒッポちゃんの渋い声に飛び上がって驚く。


「す、すみません、驚かせて。ヒッポグリフのヒッポちゃんです」

 自慢しようと紹介したんだけど、

「食べられちゃう」「おさらばっ」


 手乗りサイズの小さな風の精霊二人は、パチと姿を消してしまった。

 ふぉっふぉっと笑うノームのおじいちゃんも、ギロッと目のヒッポちゃんに、つえを持つ手が震えている。


「わ、わしも、そろそろ次の予定がありましてな——」


 で、消えちゃった。


 ありゃー。ヒッポちゃん、ピクシーにも人気ないけど精霊にも喜ばれないんだね。今後、ノームのおじいちゃん、うちを避けるようにならないといいけど。土地、増やせなくなったら困るよ。


「ほげー」

「だめだめ、ヒッポちゃんにレモンパイは早いですよ。ぴーっ、ミミズ持って来てあげてぇ」


 クチバシでパイをつつこうとするから皿を遠ざける。

 それにしてもヒッポちゃん、ぐんぐん大きくなってきてるね。この間までタマゴだったのに、今じゃ、後ろ足で立つとテーブルに顔が出る大きさだよ。


「どんどん大きくなって温厚に育つんですよ」


 そしてわたしを背中に乗せて空飛んでください!


 🍃


 ノームのおじいちゃんから土地を3ブロックも貰えたから、スペースに余裕がたっぷりある。それに経験値も上がり、ついにレベル20だ。


「それでも相変わらず称号はアマチュア園芸家なのか」


 育てている野菜の種類も増えたし、果樹もたくさん。

 ハーブだって育ててるんだよ。花もいっぱい。


 でも力を入れているのは園芸だけじゃない。

 動物飼育にだって励むのだ。

 ニワトリ小屋をもう一つ増やして、今度こそ黒色のコッコちゃんを……。


 ピロンッ♬


【クエスト:牛を育ててバターを作ろう】


 へっ!?

 牛、それにバター?

 牛乳搾ろうどころじゃないんだね、バター!?


 🍃


 乳牛も色選べるんだね。茶色、茶白、白黒。

 やっぱりスタンダードな白黒ですかね。一番安いし。

 二頭購入して、牛小屋も建てて。


「そういやコンポストも……」


 もう一つ、設置したほうが良さそう。 

 牛が増えることだし、アレよ。有機肥料作り!!


 今あるコンポストは野菜の残渣や果樹の葉で作る腐葉土用にして。

 有機肥料用に、蓋付きのグレードアップしたコンポストをショップで……あった。購入。これなら発酵中のくっさい臭いも防げるはず。


 鶏糞に牛糞かあ。糞かあ……。まあ肥料になると思えばね。


 実際に糞を集める作業はしなくて良いし。糞を肥料に利用しますか、コンポストに投下、で完了! ゲームって楽ちん♬

 


 

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