第29話 風車を建てよう
くるくるくるくる……
くるくるくるくる、らんたった、らんたったー。
二人向かい合い手を重ねて回転していたと思ったら、お次は肩を組みスキップする風の精霊シルフ&シルフィーネ。褒めちぎったら「嬉しくないんだからねっ」「褒めたって何でないんだからねっ」と真っ赤になりながら怒るのだが、次々と踊りを披露してくれている。
ふぉっふぉっふぉっ……と笑っているのは、ノームのおじいちゃんだ。
そんな時間がしばらく続き……。
「今日はこれくらいにしておいてあげるかな」
「べつにあなたのためじゃないんだからねっ」
腰に手をあて、ぷくっと頬を膨らませている。シフルとシルフィーネである。
ハアそうですか。っていうか、何しに来たんだこの二人。
「べつにあげなくてもいいんだけど」
「お礼とかじゃないんだけど」
「ぼくらが踊りが上手なのは当然だし」
「褒められても何も嬉しくないしね」
ちらっと何か期待する眼差しで見てくる二人。でも何がご期待なのか、さっぱりだ。ノームのおじいちゃんは「ふぉっふぉっ」って笑ってばかりだし。
「えーと。素敵なダンスだったよね。二人とも上手です」
フンっとそっぽを向く二人。でも、ちらっちらっとこっちを見る。
「欲しいならあげるけど?」
「どうしてもっていうなら、あげてもいいけど?」
「……何をでございましょう?」
二人は「エッ」とのけ反っている。そんなに驚くかな。
「ぼくらに会ってアレを作ってほしがらないなんて」
「わたしたちといったらアレをくださいってねだるものでしょう?」
「……すみません、鈍くって。アレとは?」
「ふぉっふぉっ」と笑いを挟んできたノームのおじいちゃんだ。
たっぷりした髭を震わせながらちょっと前に出てくる。
「精霊の風車じゃよ。風車」
「そう、ぼくら風車をプレゼントするのっ」
「わたしたちの風車はとっても便利♪」
再び、あのくるくるダンスを始める二人の精霊。またこの時間が続くのか、と思いきや。
ピロンッ♬
【シルフとシルフィーネに気に入られたあなたに、二人が風車をプレゼントしようとしています。精霊の風車を建設しますか?】
建設かあ。風車ってどれくらいの規模だろう。いちおう、開けておいた場所はある。今はヒナギク畑にだけしているだけ。収穫したら建設スペースにしてもいい。
でも。
「あちゃー。風車って大きんだね。これだと建てるスペースが足りない」
俯瞰図を見ながらぼやくと、くるくる上機嫌で踊っていた二人が、ぴたりと動きを止める。
「そんなに狭い場所で暮らしているなんて」
「少しも余った土地がないなんて」
「せっかく風車をあげようと思ったのに」
「風車があると、脱穀、粉ひきが素早くできるようになります」
「ピクシーたちの力仕事も軽減、他の作業に時間が割け、効率的に生産できます」
……途中からやけに説明口調になったけど。
そっかあ。米と小麦を収穫するようになって、料理のレパートリーはぐんと増えたけど、あれって料理するためには、脱穀したり、粉ひきする必要があるもんね。そういやピクシーたちが何やら石や木製の道具を使ってゴリゴリざくざく忙しそうにしてたよ。
風車、欲しいな。
でもなあ、土地なあ……。
「ふぉっふぉっ。……お嬢ちゃん、土地欲しい?」
「欲しいです!」
「1万コインです」
「1万コインっ」
えーっ、今回はコインいるの。なんだかんだで今まで無料だったのにぃ。
渋っていると、風の精霊シルフとシルフィーネが、コソコソやり出す。
「ノームってケチよね」
「ケチケチ。あんなに土地持ってるのに、コイン欲しがるなんてね」
「わたしたちは無料で風車をプレゼントするのにね」
「ぼくら親切で心が広いよね」
「ノームったらねー、やーよねー」
「コインよりも大切なことってあるよねー」
「ふぉっふぉっ。……お嬢ちゃん、リンゴジュース一杯もらえる? そのお礼に土地をあげます。1ブロック分の土地を——」
「ケチケチ」「ケチケチ」
「——2ブロック分の」
「ケチケチ」「ケチケチ」
「——もってけ、3ブロークッ!!」
キノコがてっぺんについた木の杖で、どーんと地面を突くノーム。
ピロンッ♬
【ノームが土地をくれました】
【広げる土地の位置を俯瞰図で指定してください】
やったあ!!
へっへへー。じゃあ、前方に3ブロック、土地いっただきまーす!
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