第27話 ミミズがいっぱい
ヒッポグリフのヒッポに餌をあげたいんだけど。
市場で牛乳とヤギ乳を購入してみるも、ヒッポのお口には合わなかったみたい。平皿に入れて与えてみたんだけど、ぜんぜん見向きもしない。やっぱ鳥に牛やヤギは違うかあ。
それにしてもヒナっぽくない目をしているヒッポちゃんだ。ギロッ。眼光鋭いとはこのことだね。
孵卵器に敷いてあったクッションが柔らかくて温かいから、それをそばに置いたら座ってくれたんだけど、蹄の足を前に投げ出して、ぺたんこ座り。で、ギロッ。どこ見てんだろ。エプロンポケットの中のぴーかな。
そのぴーはポケットから、ちらっとたまに顔を出してるんだけど、そのたびにギロッに遭い、「ぴっ」と引っ込んでいる。
うーん、うちの重要な働き手の一人なんだけどなあ。怯えちゃってダメだ。他のピクシーたちは、びびりながらもいつもの作業に戻ってくれてはいるけど、今日は掲示板のリクエストは在庫でまかなって、あとはお休みするかな。
それよりヒッポちゃんだよ。餌ねえ。この場合、馬なのか、ワシなのか。口はクチバシのワシだからワシの育て方でいいのかな。でも消化器部分は馬だよ。鳥類のやり方でお腹壊したりしない?
そうだ、幻獣図鑑を見たらいいんだよ。何を食べるか書いてあるかも——ほら、やっぱり書いてあった。なんですぐ思いつかなか……。
【成長したら何でも食べるようになりますが、ヒナの時は柔らかい幼虫をあげましょう。ミミズもおすすめです】
ミ、ミミズですと。
「ぴー」
「?」
「畑からミミズ取って来て。ヒッポちゃんにあげるからさ」
「……ぴっ」
ポケットの中に声をかけると、ぴーは一瞬考える素振りをしたが、ゆっくり這い出てくる。ギロッ。ぴぴぴぴぴ。ああ、ああ。ほらそんなに睨まないでよ。今からこの子がヒッポちゃんの餌を取りに行ってくれるんだからさ。
しかし、ミミズかあ……ミミズねえ……。
🍃
うわあ、バケツ一杯のミミズだあ。ぴー、がんばって捕まえて来たねえ。
うじゃうじゃしてる。
うわあ……あんま見んとこ。畑でたまに遭遇するくらいなら平気だけど、この量はちょっと、ね、うん。
目をそらしつつ、ヒッポちゃんにミミズ入りバケツをそっと差し出す。
すると、
「ほげー……ホッゲッ!!」
がつがつがつがつっっ
めっちゃ食べてる。すごい勢いだ。両翼でバケツ抱えて食べてる。
お腹すいてたんだね。ごめんよ、時間かかって。これからは毎日たくさんミミズあげるからね。……ぴーがとってきてくれるよ。そうだよね?
「……ぴっ」
こく、とうなずいているぴー。蹴った謝罪と仲直りもかねてさ。じゃんじゃんとってきてあげてよ。
しかしあれだ。ミミズの踊り食いってすごいね。うわあ、クチバシからはみ出して。つるっと飲み込んで、ぐちゃぐちゃ……見るのやめとこ。
バケツいっぱいのミミズをあっという間に完食。
もしかしてまだ食べるのかなあ。でもあんまり食べ過ぎても良くないよねえ。
「ぴー、あんたにヒッポちゃんの世話係頼んでもいいかなあ。」
「ぴっ!」
ログアウトしている時はこっちでは寝てるしね。その時もヒナ鳥の面倒をみてくれる子が必要だからさ。
「ね。いいでしょ?」
「……ぴっ」
ものすごくイヤそうにしたけど敬礼ポーズするぴー。
よろしく頼むねー。
きっとさ、餌やる人にはすぐ懐くから。数日で二匹も仲直りするよね。
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