第26話 ヒッポグリフのヒッポちゃん

 タマゴから生まれたのは待望のペガサスじゃなくてヒッ、ヒッポ……。


【幻獣ヒッポグリフが幻獣図鑑に登録されます】


 そうそう、ヒッポグリフ。——って、幻獣図鑑って何?

 ウインドウを確認してみると、新たに幻獣図鑑って項目が出来ていた。

 掲示板で見かけた名前もちらほら。で、ヒッポグリフの欄を見ていると。


【グリフォンと馬の間に誕生した幻獣。前半身がワシ、後半身が馬の姿をしている】


 なるほど。まあアレだね、羽の生えた馬ってところはペガサスとそう変わらないよね。無事成長して大きくなったら、背中に乗せてもらおっと。


 で、そのヒッポグリフなんだけど、まだほとんどがタマゴの中にいる。目とクチバシ、羽と足は出ているんだけどね。それでまあ目つきが何て言うか……。


「怒ってる? ヒナの目じゃないよ。前半身はワシらしいから猛禽類の鋭い目ってやつなのかな」


 ギロッとしている。ギロッとして一点を見つめている。

 わたしを見ているんじゃない。ピクシーのぴーだ。

 ほらー、蹴っていじめたりするから。タマゴ越しでも見てたんだってぇ。


「ぴっ」


 ぴーは短い悲鳴を上げると、「ぴぴぴぴぴ」と震え出した。ちょっとかわいそうになってきたから、エプロンのポケットに入れて保護してあげる。

 ハア。ピクシーとヒッポは仲良くできないのかなあ。


 ギロッ。


 うーん、まだにらんでるね。っていか瞬きしないんだな。コワ。

 しかし、あまりに動かないから置物みたいだ。

 目つきで怖気づいてしまうけど、相手はまた半分タマゴの中にいる赤ちゃんだし。勇気出して近づいてみる。つんつん。残りの殻、取ってあげようか?


 かさぶたを取るように、てっぺんにあるひび割れた箇所を軽くめくってみると。


 ブルブルブルッ!


 刺激になったのか、からだを水浴びした犬みたいに激しく揺すり始める。するとポロポロと殻が剥がれ落ちていった。

 最後はおむつ履いたみたいに下半身だけタマゴが残ってたんだけど、それもお尻を振り、蹄の足を踏み鳴らすと、ポロリと落ちる。


「ほげーぇ」


 ……鳴いてる?

 何か、……フレッシュさがない子だね。早くも人生に疲れ切ってます、みたいな声して鳴いてる。目はギロッとしてるけど。


 ピロンッ♬


【あなたのヒッポグリフに名前を付けてあげましょう】


 ほう、わたしのヒッポグリフ!

 そうだねー。ヒッポグリフだからヒッポ? それともグリちゃん?

 うーん、ヒッポちゃんにしよ。

 ヒッポちゃんでお願いします!


【本当にヒッポちゃんでいいですか?】


 いいです。


【一度名前を付けると変更することはできません。本当にヒッポちゃんでいいですか?】


 しつこいな。いいの、ヒッポちゃんで!

 この子はうちのヒッポグリフのヒッポちゃんです!!


 ピロンッ♬


【ヒッポグリフの名前がヒッポちゃんに決まりました】

【経験値がアップします】

【神獣クエスト:ヒッポちゃんに餌をあげよう】


 おおっ、餌か! 

 そうだよね。お腹空ているよね。ミルクで良いのかな。

 でもうちには牛やヤギはいないしなあ。


 でもショップで確認してみたけど幻獣用ミルクとか幻獣用フードとかは売ってない。困ったな。そうだ、市場を見てみようかな。誰かが、それっぽい良いもの販売してるかもしれないし。待ってて、ヒッポちゃん。すぐに餌を用意しますからねっ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る