第24話 タマゴ、動く
ピクシーたちには悪いことをした。
疑ってスマン。
で、でもさあ。まさかタマゴがひとりでに動くなんて思わないじゃーん、アハハ——なあんて笑っている余裕はなかった。
ピクシーたちも疑いが晴れて良かったとか疑いやがってコンチクショウと思っているだろうが、それどころではないようだ。全員、わたしの後ろに隠れて「ぴーぴー」「くくく」「しいいいい」と警戒&怯えている。
キッチンに転がり込んできた幻獣のタマゴが……めっちゃ振動しているんである。
ガタガタガタガタ
ガタガタガタガタガタガタ……バリ。
あっ、ヒビが入った。
も、もしかして幻獣が誕生するのかな。
緊張してきた。何が生まれるんだろう。
ペーガサスッ。ペーガサスッ。
背中に乗って空飛ぶんだー。楽しみだなあ。ペガサスって白毛のイメージだよねえ。栗毛のペガサスっているの——足ッ!!
ベリッと音を立て、タマゴから足が突き出した。
わたしは大興奮、ピクシーたちは「キイイイイ」と悲鳴を上げて怖がっている。
あの足は間違いなく蹄!!
馬だあああ、馬幻獣だああ!!!
「ペーガサスッ、ペーガサスッ!!」
応援だ、がんばれー。
それにしても、ピクシーたち、そんなに怖いならキッチンを出て行けばいいのに、しゃがんでタマゴを見守っているわたしの尻にしがみついたり、背に登って来て震えたりしている。
この子たち妖精にとって、幻獣って敵なのかなあ。
まあピクシーたちの部屋はキッチンの壁の中にあるし、居住区に不審タマゴが入り込んできて急に誕生しようとしているから迷惑っちゃ迷惑か。
「あんたたちねえ、そんな怖がるような相手じゃないって。そりゃあ、大きさはあんたらピクシーよりあるだろうけど、まだ赤ちゃんだよ? これから一緒に暮らすってのにさあ」
そんな調子でどうすんの、と背中によじ登ってきていた子を振り落とし、尻にしがみつく子を(軽く爪が当たっていたくて仕方ない)引き離す。
「ぴー!」「くー!」「……し、ししししし」
ぴーとくーは胸張って「怖くありませんけど」とやっているけど、しーはダメだな、全身震えて声までブルブルだ。
って、そうこうしているうちに、タマゴから両足が飛び出し、がしりと床を踏みしめて立つ。蹄だ。パカラッパカラッてなりそうな見事な蹄。うひょー。
でも一点気になるところが。
足の毛、茶色なんだよなあ。白毛のペガサスじゃないのかあ。
まあ茶色でもいいよ。栗毛最高!!
「ペーガサスッ、ペーガサスッ」
応援、応援、がんばれえええ。
バリッベリバリッ!!
うおおお、タマゴからつばさが生えた。す、すごい立派なつばさだ。茶色い。羽も茶色いのか。白じゃないんだ……いや全然、良いけどっ。茶色の羽、最高!!
——で。
「あ、あれ? 動かなくなっちゃった?」
仁王立ちするつばさが生えたタマゴの状態から変化がなくなってしまった。
なんかすごく威圧的なオーラは感じるんだけど。タマゴ、動かないなあ。何か困ってるのかな。カラを剥ぐのを手伝ったほうが良いんだろうか?
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