第22話 わたしのタマゴちゃんが……!!

 幻獣のタマゴって、どれくらいで孵化するものなんだろう。

 早く生まれないかなー。

 調べたところによると、タマゴだからって鳥類とは限らないらしい。馬とか牛。哺乳類系の幻獣も生まれるんだって。

 ペガサスが良いなあ。大きく育ったら、乗せてもらって空飛びたい!


 夢ワクワク、期待満々。

 でもまあ昨日の今日でタマゴは孵化しないだろう。


 ……なーんて思っていたら。


「あ、あれ?」


 ログイン後、ベッドから飛び起きて楽しみに見に来てみたら。孵卵器にタマゴが——ない!!


 幻獣欲しさに夢見たかな……いや、絶対畑で掘り出したよ。ジャガイモ畑にタマゴが埋まってるのは謎過ぎるけど掘り出したもんは掘り出したんだもん。その証拠に孵卵器(3000コイン)がほらっ、ここに置いてあるし!


「ピークシーーーッ」


 キッチンに飛び込む。この時はまあ何があったのか、タマゴの行方を知らないか、住み込みピクシーたちに聞くつもりだったのです。でも。


「な、なななななな」


 ワナワナ震えてしまう指先が指し示すもの。それはテーブルの上にでーんと鎮座している巨大オムレツです。その周りにも「いっただきまーす!」といったふうに大口開けて群がるピクシーたち。


「ピクシー!! あんたら、ついに本性現したわねっっ」


 日給100コイン(33匹分)で健気に働くピクシーたちにすっかり気を許していたけど、元々はコイツら全員イタズラ畑荒らしのピクシー共なのだ。


「しんっじらんない。幻獣のタマゴをオムレツにするなんて。アンタら、バカでしょ。んもー!!」


 すでにかぶりつきモグモグやっているピクシーを一匹、むんずと摘まみ上げる。キーッやビーッとざわめき始めたピクシーたちをひとにらみし、まだモグモグしている吊るしあげたピクシーを左右に揺さぶる。


「何で食べるのっ。取って食べていいのはお外のニワトリ小屋のタマゴだけっ。それだって本当は許しなく食べちゃいけないけど、まあ100コインで働いてるんだし、少しくらいは食べても良いよって融通してあげてるだけなんだよ」


 なのに孵卵器のタマゴをっ、幻獣のタマゴをっ、食いやがるなんてえええええ!!!


 手の中のピクシーをガンガンに揺さぶると、下で右往左往しながら、仲間のピクシーたちが許しを請うように泣き叫ぶ。それでもやめないでいると、ポカポカ殴ってくるピクシーや、爪で引っかいてくるヤツ、噛みついてくるヤツまで現れた。


「お前らチビ妖精に人間が負けるもんか!!」


 ウガーッ。怒り一杯で、抵抗するピクシーたちを振り払い蹴散らしていると、ひと際大きな鳴き声が。


「びーーーーー!!」

「んんっ、貴様はぴーじゃないか。さてはお前が首謀者だろっ」


 考えれば昨日からぴーはタマゴへのあたりが強かった。孵卵器をにらみつけ、蹴とばしやがりもしたし。

 手の中で目を回しているピクシーを下ろし、代わりにぴーをつかむ。


「めっ。なんで幻獣のタマゴ食べたの!!」

「ぴー、ぴーぴー、ぴー、ぴぴっ」

「あ?」


 身振り手振りで何かを訴えるぴー。この期に及んで言い訳しようたあ、良い度胸だ。まあ話は聞いてやろうと見ていると……。


 ピロンッ♬


【キッチンのピクシーたちが怯えています】

【経験値がダウンします】


 ちょっ、おいっ、システムっ。ふざけんなよっっっ!!!

 

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