第18話 ハリケーン襲来
ハリケーン襲来。
そんなイベントいらねえよ。
でも来てしまったもんは仕方ない。
被害状況。
屋根がない。
窓が割れた。
あらゆる扉という扉が外れている。
食器棚崩壊。
冷蔵庫転倒。
ピクシー三匹安否不明。
「ぴー、くー、しー!! どこにいるの、返事して」
つま先立ちで、散々な有様のキッチンに踏み入り、ピクシーたちを探す。転がっていた鍋を拾い上げ、下に何かいないか確認していると……。
「びー」「ぐー」「じぃーーー!」
お、お前たち、無事だったのか!
ちょうど壁に開けたピクシーたちの小さいドアの前に冷蔵庫が転倒していたんだけど、それをよじ登り、こちらに駆けてくるピクシーたちの姿が。全員、泣きじゃくっている。最後に顔を見せたしーなんて、こっちに来るまでに三度も転んでいた。
「おうおうおう、お前たち怪我はないかい」
「びー」「ぐー」「じぃーーー!」
しーは擦りむいた膝が痛いようだったけど、ぴーとくーは鼻水付きで泣きじゃくるも怪我はないようだ。この規模のハリケーンだもの。怖かったろうね。おー、よしよしよし。三匹をエプロンのポケットに入れて保護。
「外の惨状はどうなってんだろ。ニワトリちゃん、どうしてるかな」
🍃
外の状況。全作物全滅。
コンポスト破損、納屋半壊。
果樹倒木、ニワトリ小屋……丸ごと消失。
「コッコちゃああん!! どこ、えー、全員、風に飛ばされちゃった!??」
ショッ、ショックだ。
飼い始めて日が浅いとはいえ、タマゴを生み出すコッコちゃんたち三羽にも愛情はちゃんと芽生えていたのに。名前はまだつけてなかったけど。
「ぴー」「くー」「しぃーーー!」
ピクシーたちも、エプロンのポケットから顔を出してニワトリたちを呼んでくれている。すると。
ピロンッ♬
【ニワトリたちは逃げてしまいました】
逃げたっ!!
でもまあ逃げたなら……、逃げたなら無事ってことだよね。
ゲームの中とはいえ命だもの。逃げたとしてもね、うん、無事でよかったよ。
🍃
また一から庭づくりを始めよう。
わたしはレベル10のアマチュア園芸家。
素人時代よりも効率的に作業をこなせるはずさ。
まずはヒナギクを育てよう。もういっそ、全部ヒナギク畑にして、いったん心を癒そう、そうしよう。
復興中、経験値だけはぐんぐん上がっていった。そうして庭がほとんど元通りになった頃、わたしのレベルは——。
ピロンッ♬
【経験値がアップします】
【レベルアップします】
【レベル12になりました】
🍃
他のプレーヤーが公開している情報によると、ハリケーン被害に泣いたのはわたしだけではないようだ。阿鼻叫喚がたくさん。
でも攻略している人たちもいた。その人たちによると、事前にハリケーン到来に備えて、敷地全体にシールドを張り、被害から作物や家屋を守ったらしい。
「は? シールド。何その機能、知らんのですけど」
それに事前に被害を知るなんてどうやって、と思ったらそっちの情報も入手した。
天気予報だってさ。
アンテナを屋根の設置すると、受信できるようになるらしい。
何それ、どういうことよ。よくみんなこんなのわかるね。わたしのところにはそんな情報巡って来てませんけど?
……まあ文句言ってもしょうがない。
ウインドウを開いてくまなく探してみると、建設アイテムの欄にアンテナの文字。あったわー、アンテナ。で、設置。500コイン消費。
するとウインドウの項目に天気予報が載るようになった。しばらく天気はいいでしょうだって。ハア、ソウデスカ。
それでシールド機能はどこにあるのさ。ショップじゃないでしょ、インテリアアイテム? でもないな。あったー! プレイヤー欄の隅に小さくシールドって書いてあるぅぅぅ。
んもうっ、そういう大事な機能はわかりやすくしといてよねっ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます