第19話 増殖するピクシー
レベル15になり、農作物の種類も増えた。
土地の広さは変わらず、畑の畝も増やしていないから、少量ずつ、いろんな野菜や草花をローテーションして栽培している。
作物の種類が増えると、作れるレシピも増え、掲示板のリクエストをこなす数も増えていく。そうなると大変なのはキッチンのピクシーたちなのだが……。
ピロンッ♬
【ピクシーたちが増員を希望しています。オッケーしますか?】
そうだよねえ。今なんて常に動き回っている状態だ。
次から次へと何かしら作らせては、掲示板で資材アイテムをもらい、納屋を増築。保管数が増えればそれだけ作る量も増えていく。
ログアウトしている時、わたしのアバターはベッドで寝ている状態なんだけど、この子たちからすると、わたしが目を覚ますたびに震え上がってるんじゃなかろうかと思う。まあそんな素振り見せずに、「ぴー」「くー」「しー!」と元気に懐いてくれてはいるんだけど。
「増員は賛成だよ。掲示板をこなす量を減らしたくないしね」
というわけでイエス。
すると増員数は30匹と出た。
「一気にそんなに増えるんだ。で、その全員がキッチンの壁に暮らすわけ?」
壁の中でうごめくピクシーの群れ。想像するとなかなかに気色悪……いや、そんなことは言うまい。
なんだかんだで今ではピクシーたちが可愛くなってきてるんだから。あのギョロギョロした目は愛嬌があるし、裂けた口からはみ出る牙もチャーミングだ。
「増員30匹もオッケー、と」
了承するとボワンと煙が湧く。それが消えると……。
「「「ピークーシー!!」」」
うわあ……大量だ。30匹のピクシー、ううん、最初のピクシー3匹を加えると、33匹のピクシーたちが大集合だ。
どれもこれも赤毛に緑のトンガリ帽子、ぎょろっとした大きな目に、ブタ鼻、目尻まで裂けた口からは牙が飛び出ている。
でも最初の三匹より一回り小さい。それに装着しているエプロンもフリルはなしの簡素な白色。胸のワッペンは、アルファベッドと一緒に番号が書いてある。P1、P2……って感じだ。
で、その子たちが、ぴーの後ろにずらっと整列。くーの後ろにはK1、K2と続き、しーのほうではC1、C2とある。どうやら最初のピクシーたちをリーダーに10匹ずつ組み分けされているようだ。
「ぴー!」とP組が敬礼。
「くー!」とK組が胸に手を当て忠誠。
「しー!」とC組がゴマすりポーズで手をすりすりすり……。
最初の子たち、ぴーとくーとしーは、三匹ともグイッと頼もしく胸を張っている。この子たちも成長したね。感慨深いよ。元々は畑泥棒としてとっ捕まえた子たちだけどさ。
「それじゃあ、みんなよろしくね。じゃんじゃん働いてもらうから!」
「「「ぴくしー!!」」」
33匹がいっせいに応じると、なかなかに壮観だ。
で、やっぱり。
トンテンカン、トンテンカン……
ガタガタガタ……
キッチンの壁の中がどえらい大工事が行われているようだ。33匹の住まいを作るんだもんね。そりゃそうか。こりゃ壁一面ピクシー小部屋になってるな。見たくない光景だ。
🍃
ちなみに増員の結果、3匹50コインから、33匹で日給100コインに増額した。でも経験値のアップ率は変動なしで3割増しのままだ。
毎日100コインかあ。まあ働きぶりからいうとごもっとも、もっと増額してもいいくらいなんだけど。
「このゲーム、コイン増やす方法って、毎日のログインとレベルアップの時のプレゼントだけなんだよなあ」
ああ、あとはガチャで当てた時もあったか。相変わらず、あのガチャではたいしたものはゲットできていない。
まあモニター特典で、10万コインが初めから付与してあったから、今まで無課金で楽しめてるんだけどさ。でも今後はどうなるか……って思っていたら。
ピロンッ♬
【
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