第一幕 風使いのゼファ

 少年ゼファは、今日も風車の丘の上で風を操っていた。青空が広がる風の国で、彼は鉄棒に乗り、風の力を借りて宙を舞う。それは子どもの遊びのように無邪気で、彼にとっては日常の一部だった。風を操ることは、彼にとって特別な才能ではなく、ただの楽しみ方に過ぎなかった。


「ゼファ、また気象学の授業をサボったのか?」遠くからリクの声が響いた。幼馴染である。


 ゼファはニヤリと笑って、風に乗って宙返りを一つ決める。「へへっ。あんなの堅苦しくてやってられないよ!」


 リクたちは風車のメンテナンスをしていた。彼らはゼファの突飛な行動に慣れっこだが、それでも気にかけずにはいられなかった。


 ゼファはさらに風を強め、小鳥のピッピと遊び始めた。つむじ風を起こし、ピッピがその風に乗って楽しそうに舞い上がる。ゼファは笑い声を上げた。「僕はちょっと風を操れるぐらいでいいんだ! 将来はなんとかなるって!」


 ピッピもピピッ、ピィィと返事をするように鳴いた。その小さな体が風に翻る様子は、ゼファの心をさらに軽くした。


 しかし、その平和な風景は突然の変化によって打ち破られた。黒雲が空を覆い、風の国を暗く染めていく。ゼファは風を操る手を止め、雲を見上げた。「なんだ、この雲は? まさか、魔物…!?」


 彼の恐れが的中するかのように、闇の民たちが風の国を襲撃してきた。リクたちは驚きつつも、すぐに戦闘態勢に入ったが、闇の民たちの圧倒的な力に圧されていた。


「闇の民だ! 闇の民が攻め込んできた!」


 ゼファは地面に降り立ち、真剣な表情で叫んだ。「みんな、戦う準備を!僕たちで風の国を守るんだ!」


 リクの父たちは風車の作業を中断し、ゼファに向かって叫んだ。「ゼファ、神殿へ急げ!この事態をゼフュロス神さまへ知らせるんだ!」


 ゼファは頷き、風を操り、神殿へと向かう。


ふと振り返ると、彼の目に焼け焦げる風車が映った。


「風車が……燃えている……!」


彼の胸に恐怖と悲しみが交錯する。これまでただの遊びだった風が、今や彼にとっては命をかけた戦いの一部となっていた。


「ゼファ、気をつけて!これはただの遊びじゃない!」


リクの叫びが響く中、ゼファは風をさらに強く操り始めた。彼の無邪気さは失われ、そこには風の力を最大限に活用する決意が見て取れた。


彼は風の国を守るため、そして仲間を失わないために、全力で立ち向かうことを誓った。


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