第5話〈二世代〉
※お祓い済みです。
我々は心霊確認班。
この世には様々な事情が交錯し、パラレルワールドのような事象が巻き起こる。
ただ一つ言えるのは、我々の世界はたった一つだけということ。
ある男子中学生が話をもちかけてきたのだが。
◎けじめ
ここにある1通のビデオ。
本当は送りたくなかった。
心霊現象なんて信じていないし大嫌い。 ドキュメンタリーだとか何だとか言って、他人の不幸で飯を食ってる奴らなんて相手したくない。
でも、自分には心当たりがある。
人間の
昔、俺は有名人と言われた家系の子だった。
家族は好きだ。
何でも習い事をさせてくれるし、欲しいものも自分で手に入れる習慣も学べさせてもらった。
世間で言う金持ちに分類される俺は、仲間にも
一緒に配達員をやっていた子が居た。 その子の家庭は俺と違って貧困で片親。 そう彼は笑って言っていた。
俺は道楽のつもりで配達員をやりたかったわけではなくて、報酬を受け取る喜びを味わいたかっただけだったのに彼は真剣に仕事をしていた。
疲れて休んでいる俺に、彼は缶コーヒーをくれた。
「
仕事で忙しくて話してなかったけどバレたようだ。
「中学生なのになんでこんな仕事してるんだ? もっと他に売り方あるはずだろ?」
確かにそうだ。 でも俺は俺の人生を自分の力で切り拓きたかった。
けど、そんな本音は言えない。
もしかしたら嫉妬される。
俺はしばらく黙った。
「ま、働く理由なんて金が欲しい以外ないよな」
彼、
コンビニでプリントアウトしたっけ。
そこにも映っていた。
謎の影と霊。
「
そこでは不可解な心霊、超常現象を検証してくれるそうだ。
だが検証映像では分からない解決をしていると聞いた。
心霊ドキュメンタリーといっても人間で出来る範囲は限られる。
彼はDVDではカメラを撮ったり、説得ばかりだが、高校生で心霊ドキュメンタリーの研究生かつある格闘家の弟だった。
俺は別の才能かつ二世タレントとしての扱いだったが、中学生の俺としては普通ではない環境で戦う道を選ぶ彼が好きだった。
何故あんなバイトをしているのだろう? といっても俺も配達員を中学生でやってるんだ。
対して不思議じゃない。
けど、この映像を渡すのは気が引けた。
あの
俺も自由だけど、実際は二世タレントとして出ているからか個人情報のちょっとした流出や悪そうな同級生や心配にたかられることもあった。
けど、けして諦めないから俺も習い事で習得した体術で応戦した。
そんな思い出を収益目当てではなく、解析の為に
それと浦泉奈選手は地上波にも出たのだがそれがあるからか避けられぬ懐疑はヤラセ事務所と
だが送られた映像の数は全てが嘘には思えなかった。
俺には霊感があるのかもしれない。
正確に言えば
あの写真やかつてのホームビデオにあった謎の霊を送り、事務所でインタビューする手筈だった。
◎門番の選定
俺は事務所に行くと一人の男子高校生が立っていた。
見れば分かる。
そして、邪気と聖気が混じった不気味な雰囲気を感じる。
何処かで見た可能性はあるが、あれは地下格闘技?
いや、あの人は一体。
「何見てる?インタビューの打ち合わせなら早くあがれ」
その人には
そこにはモニターで数多くの心霊ビデオをチェックしている
「ええ?君って確かスポーツ選手の息子の!今は将来の為にフェードアウトしたって聞いたけど? 」
「
すると門番が俺を掴む。
「ほぉ。俺は興味なかったがよく見れば有名人顔だ。中学生にしては
物で例えるな。 なんだかこの人は好きになれない。
「君が投稿者なんだね」
俺は全てを説明した。
「今回は俺がカメラを持つよ」
「野谷さんはなんて? 」
「たまには取材いってこいとさ」
浦泉奈選手は俺を連れて現場を案内させた。
試合で見る彼と演出系の仕事をしている彼。
二世の俺と特別な家庭の選手。
俺は一体何を期待している?
◎逃れられない重圧
現場では町角が腕を腫らして立っていた。
「うっ・・・礼人・・・約束時間どうりだな。
しかしなんであの
事情を説明した。 一緒に撮った写真に不可解なものが写り込んでいたこと。
浦泉奈が居たから送ったこと。
そして今後の心配。
「じゃあ、俺の腕の腫れってそれか? 」
「
しかし町角は昨日まで寝込んでいたそうだ。 この現場に誘い出されたのもその原因究明の為。
だが不可解だ。
「
いつにもまして
二世とか気にしないと思っていたのに。
浦泉奈選手は「応急処置だが」と救急箱と除霊セットを用意していた。
「霊現象は本物だ。だがその傷は霊が起こした事故の怪我。最低限のお
あの
手際よく綺麗に終わった。
町角はあまり気持ち良さそうではなかった。
「あの霊、呼んだの嫌がらせだったのに投稿するなんてな」
「仕事手伝ってくれたのは嬉しかったけど、お前の行動全部金や地位、名誉の為だと思うと白ける」
「違う!
うおおおおおおお
謎の呻き声が聞こえる?
あの霊が立ちはだかってきた。
「昔、バラエティで演武を披露していたよな?
俺は現役の格闘家、君は習い事でしっかり鍛えている。あの霊は君の友の
そして俺達はヒーロー番組よりは泥臭い形で霊を撃退した。
「やっぱり、有名人の息子が中学生で仕事体験なんて嫌われて当然なのかな」
すると
「除霊は成功した。上手くいくとは思わなかったけど、そのぉこの嫉妬加減ならさっきの彼の皮肉でどこかすれ違いがあったのかもしれないだけ。避けて通れないよ。人間関係は複雑だから」
◎
「有名人か。俺みたいに隠さないといけないタイプはこのスタッフに頼むしかないか」
「今後、あの子を引き入れてみるか」
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