第23話――亜耶香side――

「ばいば~い」

 その声で亜耶香はふと顔を上げた。

 レイナが両手で剣を握り、今まさに亜耶香の頭部に振り下ろそうとしていた。

 亜耶香が死を覚悟した――その直後、

 ――剣が真横に吹っ飛んだ。

「……は?」

 レイナが呆けた声を出して、自分の――両腕を見つめた。

 亜耶香も一瞬何が起きたのか分からなかった。

 見た事実をそのままの順で述べるのなら、

 一、大鎌が亜耶香たちの真横から回転しながら飛んできた。

 二、大鎌の刃がレイナの両肘を切断した。

 三、切断された両腕は、剣を握ったまま、大鎌の回転に巻き込まれる形で横に飛んでいった。

 こういうことになる。

「腕が腕が腕が腕がぁあああ!」

 レイナが金切り声を上げる。先ほどまでの間延びした話し方ではなくなっている。

 レイナが死神のほうへ顔を向ける。死神はうつ伏せで倒れていて、顔は見えない。

「あの男ぉおおお!」

 レイナが走り出す。両腕を失ったためか、走り始めはフラフラとしていた。

 しかし、少しすると順応したのか、瞬く間に死神のもとへとたどり着く。

「このレイナ様の腕を! よくもよくもよくも! お前のような虫けら風情が!」

 レイナは死神を足で繰り返し踏みつけている。死神は全く抵抗する気配がなかった。

「――て、おい! こいつ死んでるじゃん! ハハハ! 笑えるぅ!」

 レイナがげらげらと笑っている。

「――はぁはぁ。……クソが!」

 レイナは息を整えると、最後に死神の死体を思い切り蹴った。

 レイナが亜耶香を見る。

「……次はお前よ」

 その目は禍々しく、亜耶香は身震いする。

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