第7話 焼肉

「ここは古本屋か?」

「はい!」


俺が連れられたのは少し、昭和を感じさせる古本屋だった。

フィーはそこに嬉々として入って行った。

そして中に入るやフィーはまるでおとぎ話の中にでも入ったかのよに目を輝かせ色々な本を手に取る。


(これは邪魔しちゃいけねえな)


余りにも無邪気に本を読むフィーに話しかけるのが気が引けると思い、隼も何か面白い本はないか探した。

そして隼は一冊の本を取った。

その本は少し汚れていておおよそ10年から20年ぐらいのものだろうと思いその本を読む。

内容は文学とかではなく、日本のアニメとかにあるラノベだ、現代に魔法が存在する世界で主人公たちが自分の平穏を脅かす存在と戦う、今ではちょっとありふれた内容だったが隼はこの手の本を読んでこなかったので初めてのその世界感と今の自分の状況もあったのかその本を夢中に読んでいった。

そして気づけば既に時刻は4時を過ぎていた。


「旦那様、面白いですね」


本を読んでいると隣でフィーが笑みを向けてきた。


「そうだな」


俺も自然と笑みがこぼれた。


「何か欲しい本でもあったか?」

「気になる本はいくつかありましたが、まだお家の本も読み切れていないので後回しにしようかと。それよりお腹休憩は十分取りました。さぁランニングの時間です。気合を入れ直しましょう!」


フィーが気持ちを切り替えランニングの続きと気合を入れた。

どうしてかわからないが楽しく思えてきた俺は文句も言わず彼女の言う通りに気合を入れ直して古本屋を出て走り出す。

そんな俺を自転車でフィーが追ってくる。



***


「さぁじゃんじゃん食べましょう!まさかこの世に食べ放題なるものが存在していたとはわたくし感激です!!」


古本屋を出てランニングを続けた俺たちは気が付けば夜の8時を回っている頃まで休憩を挟みながら走り続けた。時間も時間なので、今から晩飯を作るのも手間と考え、晩飯も外食にすることにした。それをフィーに伝えたら、なにやらちょうど良い場所があると言ってどこかに行ってしまった。俺は離れないようについて行くとそこは90分4000円弱の焼肉店だった。なにやらランニングの途中にこの焼肉店のチラシを見て行くことを決めたらしい。そして俺たちはちょっと運よく個室に案内され焼肉を楽しんでいる。


「あの頃はお肉の食べ放題など幻と思っていましたが、現代ではこうも庶民と近い場所にこのような楽園があるとはまさに感動です!」


彼女の言うあの頃とは恐らく彼女が生きていた頃の、歴史に名が刻まれる前に頃の時代ことを言っているのだろう。


「俺も焼肉は久しぶりだからな今日はたらふく食うぞ!」

「そうです!何も運動だけが体を作るのではありません!栄養のある食事、活力のみなぎる食事こそ重要なのです!」


フィーは自信満々にそう力説する。


「だから焼肉を選んだのか?俺の肉体強化の為に?」


俺はカルビを口に入れ白米で追い打ちをかけフィーに聞く。


「そうですね。それもあります。お昼に数ある定食の中から魚を選んだのもその為です。まあ焼肉に関しては私が行ってみたかったのが第一でした///」


照れながらそう言うフィー。


「それにしても意外ですね。こんなにも市井と馴染んでいる場所にあまり来ないなんて」

「まあ一般市民からすると焼肉も高いからな。この国じゃこういう店は何か特別なイベント、例えば誕生日とかに来るもんだな。どちらかと言うと、家族や友人たちとの絆を深める場って印象があるからな。来る理由がそんなにないんだよ」

「そうなのですか……であるならばこの時を共に存分に楽しみましょう!!」


フィーが肉をどんどん焼いていく。それに感化され隼も肉をどんどん食らう。

隼は内心とても楽しんでいた。まだ知り会って数日程度だが、彼女のことは少しは分かって来たと感じていた。特に今日は彼女と過ごしていると自分が命がけの戦いの最中にいるなんてことも忘れそうだった。だがやはり彼女には聞かなくちゃいけないことがたくさんある。


「なあフィー、ラグナロクについて聞きたいことがある」


俺がそう言うとフィーは手に持つ箸を置き俺を見つめ返す。


「なんでしょうか?」

「聞きたいことはたくさんあるがやっぱり聞きたいのは敵についてだ。お前はサラッと神様や天使に悪魔と戦うって言ったけどそれって俺が想像しているような奴らなのか?」

「と言いますとどのようなイメージをお持ちで?」

「そうだな…神様に関しては神話とかに出てくるいかにもそれぞれが固有の権能を持ってゼウスとかの全知全能神がいたり、天使なら神を守ったり、雑用とか、人間と神様の連絡係とか、悪魔ならソロモンの72柱の魔神だったり七罪の悪魔とかだな」

「その認識で合ってはいますね。まあ少し齟齬がありますが。まずは天使から説明いたします。天使は天使といってもその役割は千差万別、そして彼ら彼女らには階級が存在します」

「それってあれか、四大天使とか七大天使とかそういうのか?」

「それはまた別枠です。今回はかなり省略しますが天使には3つの階級を更にそれぞれを3つに分けた計9つの階級があります。一般的に想像される羽の生えたキューピットとかは最下位のエンジェルに属します。そしてその一つ上のアークエンジェル、神の伝令役、分かりやすい例ならガブリエルが属していたはずです」

「ガブリエルがそんなに低い位なのか?てっきりもっと高位の天使だと思ってた」

「いえ、諸説ありますが高位の天使はいくつかの階級を兼任していたとされています。なのでガブリエルの場合は四大天使や他の高位の階級とアークエンジェルの神の伝令の役割を持っているということです。言うなれば有名作家の下で修業しながら自分の作品も執筆しているような感じです」


彼女なりにわかりやすい例として言っているみたいだがその作家の例は俺にはよくわからない。


「その中でも私が来て欲しくないのはセラフィムに属する、ミカエルやガブリエルのような高位の天使とパワーズの天使です」

「?セラフィムは分からないがミカエルとかガブリエルが属するならかなり高位の階級なんだろう。だがそのパワーズって言ういかにも脳筋みたいな名前の位はなんだ?」

「パワーズとは天使の中でも戦闘に特化した天使と覚えてくれたら良いです。パワーズは悪魔と常に戦い続ける天使たちです。戦闘に限ればこの天使たちが最も厄介になると踏んでいます」

「悪魔と戦い続ける天使たち、パワーズか……」


なるほど、そんな天使がいたのか……悪魔ってめちゃくちゃ強くて、タフなイメージがあるからそいつらと戦い続けている天使とか確かに強敵だ。


「はい。次に悪魔についてです」


この解説はまだ続きそうだ。

なので肉を食いながらじっくりと聞こうと思う。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る