第4話 ラグナロクとは

「そしてつきましては、今回貴方が人の代表、そして私が貴方のパートナーになりました。なのでよろしくお願い致しますね旦那様♪」

「旦那様って、その…まずパートナーってなんだ?」

「パートナー、言わばバディですね。各代表者には私のようなその種族に応じた使徒がサポーターとして付きます。また、サポーターは各種族で名を遺した者たちの事です」

「ん?それってつまり君は生きている人間ってことでいいのか?」

「そうでもありそうではありません」


そのあやふやな返答に俺は混乱する。


「わかりやすく言うなら歴史上の人物ですね。私のようにある一定の基準を超えた魂は世界の異空間に魂を保存されるそうなのです」

「それって現代の倫理観に外れるのでは?」

「そうは言われましても、私にはなんとも言えません。一度そこは省き続きです。私自身はそこまで有名な人物ではないのでなぜ選ばれたのかは定かではありませんが全力で貴方を支えます。なのでよろしくお願いします」


彼女はそう言って頭を下げた。

正直、彼女を置いといてもいいのかわからない。だけど、昨日のことがもし現実なのならばあの傷を治すだけの力がある。だが少なくとも彼女がまっとうな人でないのは確かだ。てか待てよ…その前にアレについて……


「なあ、その前にどうして学校に俺がいないことになってるんだ?」


彼女は頭を上げそ答えを言った。


「結論から申し上げるのなら。貴方様の存在はもうこの世界に存在しません」

「存在が……存在しない?おい、それって……!」

「言葉通りです。正確に言えば、あなたの存在は一度リセットされました」

「リセット?」

「代表者に選ばれた者たちは担当の使徒と出会った瞬間、正式な代表者となりその存在を一度リセットされます。つまり新しい存在として世界に認識されるそうなのです」

「そう……なのか……」

「これに関しては私ではなんとも…申し訳ございません」


彼女はもう一度頭を下げた。


「いや、お前のせいじゃないから頭を下げないでくれ!」


俺は慌てて頭を上げるように言った。

彼女は頭をあげてくれた。

そういえば俺、彼女の名前を聞いてないな。


「なあ、名前は?」

「名前でございますか?」

「あ、ああ、俺、お前の名前聞いてないだろう?」

「おかしいですね。既にワタクシは名乗ったはずですが?」

「……?」


俺は記憶を思い返してみる。

あの夢か、あの夢で彼女が言っていた言葉の中に…えーっと……フ、フィー……


「フィーか」

「はい、私めのことはフィーとお呼びください」

「それって本名じゃないよな?」

「はい」

「それってなんでだ?」

「本当の名を語ると言うことはそれは私自身を知られると言うこと。私は過去の人間です。何か私にまつわる情報が敵に渡って終えばそれはこちらに不利に働きます。ですので旦那様にも名を伏せさせて頂きます」


俺はフィーの説明を聞いて納得した。いや、ほんとは話のよう内容は全然噛みきれてないけど、過去の人間が自身を知られることが自らの弱点を招くと言うのはその通りだ。それに多分フィーは俺の味方だ。つまり彼女の弱体化は俺自身の命に関わる。


「分かった。ひとまずだがこれからよろしくなフィー」

「はい、よろしくお願いします旦那様」

「ああ。だが、その前にその旦那様って言うのはやめてくれないか?」

「いえ、これから苦楽を共にする身、それは正に嫁のあり方、と言うわけでして、理解してくれますか旦那様?」

「いや、だから・・・」

「旦那様・・・?」

「・・・・・・・・・・・・はい」

「よろしい♪」


どうやら俺は既に尻に敷かれているみたいだ。


「それで、仮にだが、そのラグナロクってやつに勝てたら俺はどうなるんだ?」

「旦那様の場合はこの世界の存続、そして旦那様の運勢?でしょうか、なんと言えば分かりませんが、人生が上手くいくことが確約されるようなことです」

「人生の確約か・・・・・・それってどこまでのことを指すんだ?」


人生の確約と言われてもよくわからない。それこそ、ちょっと運がよくなるだけなのか、それとも何かしら大物になれるのか、どこまでの範囲を指すものなのか。


「それについては私もよくは知りません。何せ私もラグナロクは初めてなことで、ですが私の記憶にある範囲では過去の者は巨万の富を得たか、一国の王となったか、それくらいしか」

「そうなのか……じゃあもし敗北したら」

「死あるのみです」

「そう…だよな……」


なんとなくわかってはいた。彼女は言った。これは殺し合いだと。なら俺のすることは一つ、このラグナロクを生き残ること。


「このラグナロクから生き残るためには俺はどうすればいい?」


俺は素直にフィーに聞く。少なくとも俺よりも事情に詳しい彼女に意見を聞くのは間違っていないはずだ。


「そうですね。個人的には、他がつぶし合ってくれて、最後に漁夫の利を得られればリスクも低く、最上でしょう。しかし」

「そう甘くはないよな」

「はい。相手は我々人間とは大きく異なる異界の者たち。いづれは見つかりましょう。なので私たちがするべきことはまずは旦那様の戦力強化です」

「俺の戦力強化?」

「はい。申し訳ありませんが旦那様の記憶を少し見させていただいた際、旦那様が剣術を修めている見ましたが、間違いありませんか?」

「お前記憶人の記憶を見ることができるのか!?」

「はい」


そういえば彼女が俺を運んだのはさっきの魔法だとしてどうやって俺の家を特定したのかわからなかったが俺の記憶を見ていたのか。


「その能力って他の使徒も使えるのか?」

「いえ、恐らく私の個人的な能力ですのでその可能性は低いかと。しかし絶対とは言い切れません」

「そうか……」

「それで旦那様、先ほどの答えは」

「ああ、そうだな。一応基礎は修めている。でも親父の爺さんから教わった、ほんとマイナーな流派だけどな」

「ですがあるのとないのでは大きな違いです。旦那様の記憶を見る限り、最近サボっておられたそうなので」

「ギクッ……!」

「ですので御身体が回復次第お覚悟を」

「……わかった」


覚悟を決める。一度は捨てた刀だがこの命があってのものだ、死んじゃ意味がない。

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