第2話 初めての死

(隼…逃げれたかな…)


意識が遠のく中、隼のことを思う。

時は空が暗くなり始め、生徒がちょうど誰もいなくなった時に戻る


「やばい!マジで本当にやばい!なんで今日に限ってこんなに長引くのよ!てか部長、今日は休みって昨日言ってたじゃない!!」


予定を狂わされて、急いで隼と合流しようと図書館に向かう為下駄箱に向かい上履きに履き替える時のことだった。


「正直、あまり女子おなごを傷つけるのは性に合わないがこれも仕方がない」

「誰…?」


不意に奥から知らない男性が近づいてきたのである。

見た目と雰囲気から明らかに普通じゃないことを悟った。


「答える義理は無い」


男はそう言った瞬間、肩に強烈な痛みを感じた。


「いだ……!?」


私は床に座り込み肩を押さえる。

そこからは正直言ってほとんど覚えてない。

ただ何かが私の体に刺さり、そこから体を焼くような痛みに襲われたこと以外何も思い出せない。


「美月!おい美月!!」


聞こえる…本当にうっすらだけど分かる。…これは隼の声だ…

そう思ったのも束の間、彼の後ろにあの男が見える。

急いで教えなくちゃ。


「は…や…」


ダメだ声が出ない。

何度も言おうしたけど声が…気力が……なくなる……

結局、隼はあの男に蹴り飛ばされた。

そこからはもうわからない。でも音がないから逃げれたのか…それとも私と同じ……


「なんだなんだ?ようやく相方見つけってのに、こりゃどうなっていやがる?」


力強い声、わからないけどこの声を聴いた途端目を開けることができた…薄っすらにだけど…


「あ…な…た……」

「あーあ、声を出すな。そのままだと本当に死ぬぞ?」


暗くてよく見えない。


「まだギリ死んでないな?よし。悪いがお前にはまだ生きてもらうぜ小娘。なに安心しろ。炎なら得意分野だ。これぐらいだったら。アタシの力だでどうにかできるって話だ!まあ死ぬかもしれねえが!あははは!!」


はそう高らかに笑い、そこから私は完全に意識を手放なした。




***


「はぁはぁ……」


クソッ!なんなんだよあいつは!!明らかに人じゃねえ。仮に俺を殺すとしてもたった蹴り一つで人一人吹き飛ばすなんて人間の常識を逸してる!


「まさかその傷でここまで走れるとは…褒めて遣わすぞ小僧」

「……!?」


学校から家に逃げる為に右腕を押さえながらどうにか必死に走っていた。

だが、その途中にある公園の前であの男の声がした。

俺が振り返ると、案の定、そこにはあの男がいた。


「その気力と胆力は褒めて遣わそう。しかし、これで貴様も終わりだ」


刹那、その男は隼の背後におり、何かで彼の背中を斬った。


「グハッ!?」


隼は背中の痛みに悶え、倒れる。しかし気力を振り絞り足をガタガタと震わせ、おぼつかない脚で公園に逃げる。


「よもや、まだ立ち上がるか……しかし、貴様の人生はこれでしまいよ。その背の傷は唯の傷ではない。貴様の肉体のみならず精神すら焼き尽くす業火なのだからな。してそろそろ余も戻らねば、あの男も心配するであろうからな」


男は夜の暗闇の中消えて行った。

その頃、隼は無我夢中で公園を突き進んでいた。


「はぁー…はぁー…まだ来るのか……」


隼が後ろを振り向いてもあの男の姿は見えない。

だが安堵している場合ではない。いつあの男が来るかわからないのだから。

とにかく進む、少しでもあの男と距離を取るために。

だがそう踏ん張ろうとした時、彼の背中から強烈な熱を感じた。


「ん''ん''ーーー!!??」


言葉にできない声で悶える隼。涙を流すも自身の背中を見ると、煙出ている。いや、正確には焼けていたのだ。現在進行形で彼の背中が燃えているのだ。


「これは……」


考えることもままならない。その炎は肉体にも当然相応な苦しみや傷を与えるが、それ以上に精神にとてつもない痛みを与える。


(痛い!痛い!!まるで地獄鍋にでも入っている気分だ!!)


隼は唯その場で悶えることしかできない。体の半身は機能を半ば破壊され、現在は体全体が焼かれている。その上、精神にすら直接ダメージを及ぼしている。生身の人間が生き残れるはずがないのだ。

隼はそのままその場に立ち伏せる。

息ができない、焼けた肌が風邪に当たって痛い、意識が遠のく、これが死ぬってことなのか。考える気力すら湧かない。苦しい…こんなことなら早く……死にたい。


「それは困ります。ようやくわたくしに相応しい御方に出会えたのです。こんなところで死んでもらっては困ります」


そんな時、1人の可憐な声が聞こえてきた。意識が朦朧として途切れかかる。目がまともに開けれずうっすらと1人誰かが俺を見ているのがなんとなく分かる。


君は…?


「私は…そうですね。フィーとお呼びください。少し大変ですが周りに他の使徒がいる様子もございませんし大丈夫でしょう。それにここで一度瀕死になってもらったほうがこちらとしては都合がよろしいので」


君は…何を言って…


「ご安心を、私は貴方様のパートナー、これから苦楽を共にする伴侶でございます」


そこで俺は意識が途切れた。

彼女が言っていることも使徒とは何なのか、そして俺を焼いたあの男は誰なのか…俺は一体に巻き込まれたんだ……

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