八夜の光
鳳隼人
第1話 始まりの夜
息ができない、焼けた肌が風邪に当たって痛い、意識が遠のく、これが死ぬってことなのか。考える気力すら湧かない。苦しい…こんなことなら早く……死にたい。
「それは困ります。ようやく
1人の可憐な声が聞こえてきた。意識が朦朧として途切れかかる。目がまともに開けれずうっすらと1人誰かが俺を見ているのがなんとなく分かる。
君は…?
「私は…そうですね。フィーとお呼びください。少し大変ですが周りに他の使徒がいる様子もございませんし大丈夫でしょう。それにここで一度瀕死になってもらったほうがこちらとしては都合がよろしいので」
君は…何を言って…
「ご安心を、私は貴方様のパートナー、これから苦楽を共にする伴侶でございます」
そこで俺は意識が途切れた。
彼女が言っていることも使徒とは何なのか、そして俺を焼いたあの男は誰なのか…俺は一体に巻き込まれたんだ……
***
「おっは~
「おはよう
「相変わらずテンション低いわね~もう少しテンション上げてこうよ!」
「月曜の朝の登校とか学生がトップクラスにだるい時間だろ?」
「そういうもん?」
「そういうもんだ。逆にテンション高いお前の方がおかしいわ。特段イベントなんてないのに」
7月の学校の登校、蒸し暑く、学校に行かなくてはいけない。一般的に誰も彼もが家から出ることを嫌がり、サボりたいと思う日。俺自身も学校サボって冷房が効いた自分の部屋でゆっくりしたい。
「まあそんなことは気にせずに、テンション上げて夏の暑さをふっとばそー!」
「逆に暑苦しくて、こっちが死ぬわ…」
どうして彼女はこうも気が保てるのか…最近は温暖化の影響で余計暑くなってるのにこのテンションを保てること自体一種の才能なんじゃないのかって思い始めている。
学校についても普段と特段変わったことは無い。適当に授業を聞いて、適当に先生の質問に答えて、適当に昼休みを過ごす。
「ねえ隼、ちょっといいかな」
「ん?なんだ?」
「今日の放課後って暇?」
「別に暇だが?」
「そうなんだ…じゃあさ、今日の放課後ちょっと時間くれない?」
「別に良いけど」
「ほんと?ありがとう!」
そう言って美月は自分の席に戻って行った。
俺は手元に置いといた読み途中の本を読む。
それから放課後、俺は美月から連絡をもらい、どうやら急遽部活の練習が入ってしまって遅くなるそうだ。俺は図書室で時間を潰せるから残ると伝えた。そうすると美月からは本当に申し訳ないと言うメッセージとスタンプが返ってきた。
俺はそれを既読にだけして図書館に入り浸る。
元から偶に図書館は利用しており、うちの図書館には漫画やラノベもたくさん置いてあるので、俺は読み途中だった漫画を手に取り時間を潰す。
「ふぅー、結構時間が経ったけどまだ終わらないのか?」
窓の外を見ると既に外は薄暗くなっていた。
俺は美月の様子が気になってメッセージを送る。
「一旦これで良いだろう」
そう思って俺はまた漫画に集中する。
だがそれから図書館が閉館する前になっても彼女からの既読が付かない。
流石の俺も心配になって荷物を持って図書館を出て電話を掛ける。
しかし、電話をかけても応答はない。
既に最終下校時間になっている。
「美月の性格からして、さすがに連絡の一つも寄こさないのはおかしいよな?」
俺は周りに人がいないか確認する。
「もうちょっと残っても変わらないだろう」
俺は美月を探すことに決めた。
俺はまず最初に体育館に行くことにした。
「体育館とか他の生徒が聞こえないと考えると部活は終わってるはず。やっぱり鍵がかかってる。ということはここにいる可能性は低いな」
次に音楽室に向かう。
「楽器の音が聞こえなくなってかなり時間が経ってるから、ここもハズレか」
案の定ここも鍵がかかっていた。
それから俺はいろんな教室を見て回ったがどこにも美月はいなかった。
「まさか本当に忘れてたり…」
そう持ってもう一度彼女とのやり取りを確認するが未だに既読が付かない。
「だが、もうここに残っても何もなさそうだし一旦帰るしかないか…」
仕方なく一旦家に帰ることにした。
その為下駄箱に行った時、不自然と誰かが座り込んでる影が見えた。
「あれは誰だ?」
俺は警戒しながらライトをつけて近寄る。
そしてその陰の正体を照ら俺は恐怖と驚きで目を見開いた。
「美月!?」
そこにいたのは体のそこかしらから血が流れ、目の光をほとんど失った美月だった。
「美月!おい美月!!」
「は…や…」
「美月!?」
俺は彼女の口元に耳を当てると本当に微かにだが呼吸をしていた。
「美月!何があった!いや、今はそんなことより救急車を!」
「は…や…」
「美月無理するな」
俺は彼女の手を握ると彼女はもう力尽きているであろうな力で俺の手を握り返す。
だが彼女は苦しいだろうに同じ言葉を繰り返す。
「に…て…」
「美月、なんて…?」
「まさかまだこんなところに人間の男がいたとは。それにこの感じ、お前も」
「……!?」
突然後ろから男の声がした。それもただの声ではない。俺の体を縛り付けるような恐怖とも何とも言えないこの感じは……!?
俺は恐る恐る振り返ると、現代には似合わないまるで紀元前のヨーロッパ周辺で着られていたであろう白の服にオレンジ色の髪を持った美形の男性がいた。
「あんたは…」
「人間、余に口を利くとは無礼だぞ」
「グハッ………!!!!????」
俺は男に蹴られた、そう蹴られた。たった一蹴りで俺は学校の正門まで蹴り飛ばされたのだ。正門は曲がり壊れ、俺も体の右半分が、特に右腕が曲がり大量の血を流している。
「あ"あ"ーー!?いでぇ……!なんだよこれ……」
「ほう?よく余の蹴りを受けて生きているものよ。それもまだ死に体ではないとは流石はあの女と同じ使徒の器だけではあるな」
男は少し関心しながら俺の前に歩いて来た。
「なにを……それよりお前が美月……!」
「吠えるな。それに吠えたところで何も変わらん。あの女も既に死に体、まだ息があるがもう助からんだろう」
「やっぱりお前が……!」
「そうだ。だが余を恨むな。恨むのならその運命を選んだあの女が自分自身を恨むべきだ。そしてお前も選択の時だぞ?何やらあの女から言われていたようだが?」
そうだ…あの時美月は何を言おうとした?
俺は彼女の言葉を思い返す。
「に…げ…にげて……逃げて…」
あの時美月は多分早く逃げろと警告しんたんだ!?
俺は男をもう一度見る。そして唇を噛みしめながらなんとか立ち上がる。
悔しい…悔しい…でも今俺にできることは……
俺はその場から逃げ出した。
「ほう?まだ立ち上がる気力と走れる体力があるものよ。既に右半身だけでなく、内臓も壊れかけているというのに。……いやだからこそ選ばれたのか……ならばやはり早々に始末しとかないといけないかもしれんな」
男も隼を追いかけて行った。
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