第4話 スミレの香り

 ※ショッキングな暴力、性描写があります。苦手な方や15歳以下の方は飛ばしてください。



 その家は、旧貴族家のような贅沢な作りだった。そこに家族3名が逃げ遅れていると聞いたが、周囲には特に災害の痕跡は見られず、なぜ逃げ遅れたのかは分からなかった。


 小隊のサブリーダーと同行していたDI。サブリーダーである彼女から「私は外を見て回る、君は家の中を調査しろ」と指示された。数人のメンバーが後から合流する予定でそれまで2人で捜索する。


 家の中には土足で入った。ここはすべて消滅する運命にあるため、靴を脱ぐ暇などなかった。しかし、家族の姿はどこにも見当たらなかった。彼らは隠れているのだろうか? 一体なぜ? もしかすると、情報が伝わっておらず、家の中の安全な場所に避難しているのかもしれない。だが、すべてが消滅するというのに…。


 しかし、ここは自然惑星だという。人口大気圏ではない。簡単な任務に余裕を持った俺はふと、昨日の噂話を思い出す。小耳に挟んだ情報だったが、空気にニオイがありそれは言葉に表し難い気分になるらしい。


「馬鹿らしい。空気に味などあるものか……」


 だが、試したくなる。今は1人。後でバレたにしろそんなに咎められたりするものか。俺は初めてBrynkの機能をオフにして装着を外す。その間何度か警告がでて、その度に本当に外していいのか迷ったが、一瞬だけならと決心した。


 本当にニオイがあり味があった。それは初めてものに触れたような衝撃と感動が脳をくすぐる。それは鼻や口から体内に入り神経を伝い脳に向かう。その過程が分かるかのような錯覚を覚える。


「だが、酸素が薄いな、このままではまずい……戻そうか」


 そう呟いた時、立ちくらみで足がもつれる。そのまま手を床につき座り込んだ。このニオイのする空気により、脳に溢れるような刺激が入り処理が追いつかなくなっている。Brynkを外す事態が脳に抵抗を感じるのにこの星の異常な空気感がさらに拍車をかける。酸素が薄いせいもあったかもしれない。急な幾つもの刺激を受けた脳が一瞬だがブラックアウトしたかのようだ。


 Brynkの再装着を急ごうとしたとき、微かに床の下から音が響くのを感じた。地下室があるのか。座り込んだから地下室の入り口らしい床がはっきりと分かった。「ここだ!」間違いなくこの家の家族はそこにいる。


 脳の機能不全だろうか……Brynkを付け直すことが脳に大穴が出来たかのように忘れ去られていた。床の隠し板を開け、地下室に続く階段を降りていくと、いくつかの部屋がある薄暗いそして乱雑で埃っぽい場所に着く。その部屋の隅に隠れるように少女がいた。年齢は35歳ほどだろうか、正確な年齢が表示されないことに違和感を覚えたが気にせず彼女に「早く逃げましょう」と声をかける。この時に気がついていたらこの後の大事件には発展しなかっただろう。今でも何度も悔悟の念を覚える。彼女は震えているだけだった。俺は自分が安全な人だと思わせるために優しい表情を見せた。彼女の目が俺を見つめてきた瞬間、全身に電気が走ったように感じた。数年前に恋をした彼女にそっくりだったのだ。もちろん別人だが、数年若くした彼女の顔に酷似していた。


 しかし、彼女は立ち上がらなかった。何を恐れているのか全く理解できなかったが、この自然に育ち、宇宙知らない環境で育った彼女たちは、外部の人間に恐怖を感じているのかもしれない。彼女は花のような香りがし、震えながらこちらを見つめていた。そのニオイが薄まっている俺の意識をさらに刺激した。今まで感じたことのない感情が脳を支配する。


 冷静になって考えろ。今は任務中だ。任務中? 任務じゃなければ一体俺はなにをしたいんだ……。周りを見回す彼女は3人暮らしと聞いている。そのこと自体は異常ではない。だがこの惑星では家族と住むらしい。彼女の両親はどこにいるのだろうか? なぜ両親と同居しなくてはいけないのだろう、顔も見たことのない俺にとってはそれは贅沢にも感じるし、または気苦労するようにも感じた。


 酸素が薄い、彼女の匂いがさらに刺激する。脳が麻痺を始める。理性を失う。俺はこの脳の痺れを初めて感じる。高揚し気持ちが良かった。脳の分泌物がどばどばと流れるのを感じる。震える彼女の顔に触れる。彼女は逃げようとするがうまく立てなかった。恐怖で腰を抜かしてしまったのかそれとも、元々体が弱いのか……。どちらでも良かった。いつも寝る前に想像していた隠艶な記憶が蘇り目前に映し出される。彼女の両肩を強く抱きしめた。震える体は想像よりも華奢で柔らかく、そして暖かかった。無理やり彼女の唇を奪う。口内の感触が気を失わせるかのようなくらい強い刺激が頭を覆う。突然彼女に噛まれた。自らの陶酔を邪魔され気分が悪くなる。思いっきり彼女をひっぱたいた。彼女が震える姿に、Dlはまた欲情を覚えた。


 彼女の胸や太ももの内側を触り始めた時、彼女はもう抵抗する力を失っていた。彼女の恐怖に満ちた表情は美しいとは言えなかったが、その様子を見て興奮する自分に驚いた。自分が自分を観察する不思議な感覚だった。冷静に観察しているが、その時の自分は完全に狂っていた。狂っている自分が冷静に狂っている自分を観察して、善悪を判断する。そしてその判断はさらに刺激を求めることに同意する。


 突然、「そこで何をしている!」という怒鳴り声が響いた。彼女の父親だった。俺の肉親に会ったことがなく、愛というものを知らない。知る必要を感じたこともないしまた言われたこともない。恋はしても、愛は分からない。そんな偏狭な生活がD俺をおかしくさせたのかもしれない。


 怒りに我を忘れるこの男に弁解しようとしたが、彼女に逃げられそうになり焦った。逃げさせたくなかった。せめてもう少しでも抱きしめていたい。その匂いに包まれたい。その迷いをみせた行動に父親はさらに激怒したのか俺にに襲い掛かってきた。その瞬間、Dlは無意識のうちに手動でBrynkを操作し、緊急用の圧縮レーザーで彼を撃ってしまう。


 俺は全身を振るわせ、焦点の合わない視界で我を忘れていた。これから自分はどうなるのか。こんな時にもやけに冷静な脳の一部が自分の未来の絶望をはっきりと感じさせる。その恐怖が彼の理性を完全に失わせた。すべては、彼女を見た瞬間から始まった。なぜ、彼女がかつての恋人にそっくりだったのだろうか……。なぜ、彼女は抵抗せずに逃げなかったのだろうか……。彼女が悪い。俺は頭の中で責任を転嫁しようとしていた。そして俺の行動を見つめる冷静な俺もその判断を善しとした。


 しかしいくら責任を添加したところでこの男が倒れている周りは血に染まっていくのを止めることはできない。俺のした行為が許されるはずはない。父親は見る限りでは死亡していた。信じられない、なぜだ……銃で撃たれて死ぬなんて。

 

 ここは自然惑星、人の死をも自然とみなしている。空気中に漂う防護装置はなく、突然の事故や災害、そして殺傷武器です簡単に死ぬ。なぜこのような実験をしているのか理解できない……。憤りが頭によぎった時、悲鳴が聞こえた。娘ではなく母親であった。

 

 母親も殺してしまったのは全くをもって理由すらなかった。最悪の罪を犯してしまった俺にはすでにもう失うものがなかった。何をしても極刑以外無いだろう。

 

 俺は焦った。は他の救助隊がここを発見する前にことを済ませたかった。未来に絶望しかなければ今、やりたいことをするしかない。直情的な感情をそのまま行いたい。夢で終わらずに目の前の現実で全てを叶えたい。邪魔が入るのを酷く嫌った。もしことが終わる前に救助隊が来たら彼らと戦かうしかない?  いやそんなはずはないか、相手も軍備を持っているし戦って勝ったところで他のメンバーにやられるし、勝てない相手と戦う気などさらさらない。

 

 だから焦っていた、呆然とする娘の頬をもう一度思いっきりぶった。歯が折れたのか口から出血していた、俺はせこせことズボンを脱ぐ、そして無理にそれを咥えさせた。抵抗の影が見えるとまた手を挙げた、叩かれる前に娘は従順となる。ここまでショックを受けながらも目の前の痛みから逃げたい気持ちは強いのだなと思った。下手な口戯だったが興奮状態のおれにはちょうど良かった、上手ならすぐに果ててしまっただろう。

 

 周りには両親の鮮血が飛び散る中、彼女はまるで悪い夢を見ているかのようだった。すべてされるがままに従った。機械的であった。肌は柔らかく、そして、その頭の中はまるでロボットである。

 服を脱がされある程度膨らんだ胸をもまれた。(未だ成長段階をスタートし始めたくらいの胸だが)その頃には恐怖の顔は無かった、うつろな目に涙だけがこぼれていた。

 

 むりやり入れられた時、また大きな声が出す。焦る俺はまたぶつ。口を押さえながら泣き叫ぶその娘に、鼻息があらい、スミレのような香りがするその顔に近づき、口と普段はやわらかいが無骨な舌で傷ついた顔を犯す。強引に押し込まれているものがまるで凶器のように体の中を傷つけた。

 

 痛みに失神しそうとなる彼女はだが、痛みで気を付けさせられる。彼女は長い時間に感じた、1度動きが止まり、中に流し込まれてくる汚物に傷すらも汚される。痛みの終わりに安堵し呆然とする彼女。またDlは襲い掛かる、少女の顔を見る、そこにはあの失われた記憶が蘇る。彼女と激しく愛し合った毎日が頭をよぎりそしてその儚く消えていった顔や体のむなしさを、その体で補うのに余りある。

 

 何度果てても大きく膨らませ、さらに奥についた。彼女はその動きにいちいち悶えていた。自ら口を押さえ声を殺すが見開いた目がその痛みを物語っている。

 むりやり触られつねられる2つの丘陵も、赤いあざがいくつもならんでいる。その白い肌にはより目立つ、ときには黒っぽい青あざもまるでグラデーションのように散りばめられている。痛みに耐え気を失いそうになる彼女、悪夢が深く傷跡をこすっていく。俺の眼はもう常人ではなかった、深い陶酔感その感覚の身を頼りに生きている眼をしている、俺もまるで夢の中であった。

 

 彼の精力は彼女の願いを無情に打ち消し、何度となくいきり立つ、彼女は気を失えない中、痛みに耐えながら過去、家の周りを走り回っていた時を思い出した。周りには両親の笑顔がいつもあった。まるでそれが今の現実で、悪夢が早く覚めるよう信じているかのように。


 他の救助メンバーが彼女を保護したのはしばらくたってからであった。地下室が少しわかりづらい所にあり合流したメンバー達はいったいどこにいるのかと家を探し回っていたようだ。

 

 死体が3つとさらに狂っているのか死体に性行為をしている彼を見つけた時、何かの事故によりその男が精神異常を起こしたと思った。なぜならメンバーが駆けつけてからも腰の振りが止まらなかったのである。血まみれの中、彼自身も気を失いながらその行為をしているように見えた。その犯されている各部から出血しひどい傷の少女が息をしていると気が付いた時、メンバーは彼を強引に止めたのだ。

 

 彼女の陰部はひどく腫れていて、真っ赤な大量の血と白い汚物が交じり合って、彼女の白い肌の上で強調されていた。

 すぐに布をかぶせ、彼女に応急処置薬の痛み止めを打つ。気が動転している彼女は助けにも恐怖したが、幸いと言えないかもしれないが、逃げたり暴れたりはしなかった。する気力もなかった。彼女が助けられたと安心したのはおそらくかなり後になってからであろう。メンバー恐怖に凍り付く彼女は見ているだけでも、苦しくなりその仕打ちに吐き気がした。

 

 命には別状はなかったが、残念ながら彼女は一般生活不可と認定されたらしい。彼女は投薬と非人道的扱いでの社会復帰を強制させられるだろう。まるで心肺停止した人に電気ショックを何度も打ち付けるかのように。


 俺は軍法会議所の収容所の部屋の隅で震えていた。

 彼女の心配は無かった。これからの自分が歩む絶望と地獄への道を考えてはただ震えていた。

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