第3話 救援軍保護軍

演習から一年以上が経ち、「救護軍補助員iuj -26659」という識別番号を与えられた。番号で呼ばれる引け目もあったが、自分の命が名誉ある歩みの象徴で救護補助員として新たな章が始まったことを感じる。


 さらに訓練にて冷静さと迅速な判断力を得たと、上官たちに深い印象を与えたらしく、その結果、「E級歩兵」としての資格を得ることとなった。そして、俺の配属先は第3030番歩兵師団と決定した。

 

 歩兵といっても宇宙戦艦内での訓練が仕事のほとんどだ。惑星に降り強襲する状況を想定しての体力訓練、バイクや車もまたは、ロボットの操縦訓練も一通り行う。

 1つの船に20万人ほどの将官や兵士、船の維持整備官が乗り、それと同数以上のロボットや重兵器が収納される。宇宙内でも活動できるロボは、それの半数に相当する。あとは着陸後に活躍するということだ。これが一般的なドーム型宇宙戦艦である。積載された戦闘車両や重火器の多くはシールドタイプに変形され、戦艦表面部分や内側防壁に張り付けられる。宇宙空間にて砲撃や重力子砲に直撃した際は反射誘爆をして戦艦を守る要となっている。惑星地表に着艦した場合はガードから外れて戦闘車両として機能する。

 

 師団の番号はそのまま船の番号である。

 3030歩兵師団は救護軍師団として任命された。

 

 現在、宇宙はPOPIDの管理下にあり戦争は起こらない。だから軍といっても、そのほとんどは災害による救助活動が主な仕事である。自然災害、宇宙災害、人為的な災害もある、コンピューターのエラーでの事件も最近は増えているのである。

 

 POPIDはエラーを出すことはない。だが、なんの意図か分からないが最近エラーが頻繁に出ているということだ。人を試しているのか、とまず疑った。そしてこの大宇宙でPOPIDの能力が限界を迎えたのかと有り得ない想像までしてしまう、それくらい不可解なのだ。

 コンピュータは古くなると当然エラーをだす。だが、劣化した部品やショートしそうな歪んだ回路があれば、エラーになる前には機能を止め自ら修繕アドバイスを送り、オートロボにより更新されるのが当然としている。少なくともこの100年以上は問題なく繰り返されていた。なので、最近エラーが多発していること自体が異常なのである。

 

 今回の任務もそのエラーによる障害の対応だろうと思った。俺が所属する救助師団は5つの小隊に分かれ、調査船にのる。いつも空振りばかりの任務であったが、今回はどうも違うらしい。非常に難しい仕事であり3030師団は全班で対応した。

 

 その緊急任務とは、ある惑星内にある一部地域の避難誘導であった。その星は自然保護惑星といい、人や動物が共存する世界を残している。マザーコンピュータの支配下から抜けてBrynkを持っているどころか旧式のコンピューターがあるくらいで時代遅れにも程があった。

 自然を残すという目的で作られたその星は、世知辛い俺たちの世界から見るとまるで優雅であった。家族単位での生活をしている数少ない星。仕事や生活ではあまりロボットに頼らず人の手を多く使っていた。

 知識にはあったが、実際目の当たりにしてこんなコロニーもあるんだなと感心したくらいであった。

 

 数時間もかけずに目標を発見。着陸地点から少し離れた所にその家があった。そこで大きな事件を起こしてしまうとは、素行指数の上昇が順調であった今の俺には考えられるはずがなかった。

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