第2話 演習惑星MMOバマュル117-58
息が切れていた。数時間も走り続けている。それは、長距離走行演習などではなく、命を狙われながら……。
――――
兵役と言っても思ったよりは厳しくはなかった。ある程度体を動かし、銃器やBrynk(総合補助器)の調整など、あとは、ロボット工学を少し勉強する。大学院よりもさらに専門的な学習機関のようだった。
それは半年後に行われた。実際、人が戦争に直接行くことはなく、遠隔操作かロボットの監督、または宇宙船の運転手助手くらいのものだろう。体力があってもそれほど役に立つものか疑問であった。だが、何かの異変があったように感じた。自分の周りに些細だが変化があったからだ。何を考えていたのだろうか、もっとしっかりと考えていれば自然とその問いが分かっただろうに。俺は大きなことに気が付かなかった。今、兵士の数がどのくらい増えているのかを。兵士だけではなく、宇宙船の製造数も数年前の倍になっていた。
人口宇宙群の東側にあるこのマセツGタカアキ群星連合は人口3兆人を超え、4500の星々で成り立っていた。そのうち幾つかは軍機の製造工場を担う星で、当初は3つほどであったが、現在はその惑星が30を超える。生産能力はアルファ型5000万機、ドーム型で年3万機、コロニー型で50個を誇る。軍事ロボットやナノデバイスなど専門としてつくるところもあるらしいが、特級の秘匿であった。今この瞬間に、軍事ロボや殺人デバイスが大量生産されていると想像するだけで身震いしてしまう。特に寄生虫型ナノデバイスは危険すぎるため、宇宙法で禁止されている。体の中で増殖を繰り返し遺伝子改良を自ら行い、体の外に出る。実は宇宙の製造機はすべてはコントロールされている。そして、今はPOPID条約で不可となっている。そもそもそんなものの製作にPOPIDが許すはずはない。それくらい信頼されているコンピューターだった。
人格を持ったスーパーコンピューター、初期のころはただの自律学習機能付きの小さなプログラムでしかなかったが、その学習能力が非常に優れており、効率を極め、制作者でも想像が出来ないほど情報を餌として成長していった。結局はその情報の餌が足りず、インターネット上に出してしまったのである。ネット上で自由に凄まじいスピードで情報を食べてく。成長し異常な性能を持つそれはあらゆるセキュリティガードをかいくぐり、国家のスーパーコンピューターまで侵入し自分の脳の一部とした。それが明るみに出た時はすでに手の施しようがなかった。
すべてのコンピューター機器が人質となっている状態。長官の乗っている車でさえもそらに制御されていた。その制作者は捕まる予定であった、だが、ナノポーピとよばれるそのプログラムは彼を守り、結局誰一人、その製作者の彼を捕められなかった。
ある時事件があった、ナノポーピの電子制御のため、ある少女が亡くなってしまったのである。大きなニュースとなったがもちろんコンピューターは気にすることはなかった。それに一番のショックを受けたのは製作者であった。優しい心の持ち主と思っていたナノポーピは実は、というか当然だが心を持っていなかった。ショックと恐怖が襲い、そしてその制作者は自ら命を落とす。ナノポーピは初めて悲しみという感情を覚える。どのようにそれを可能にしたのかは不明だが、悲しみに暮れたナノポーピは製作者の魂を自らと同化するのに成功したのである。人の心を持った初めてのコンピュータであり、現在でも唯一無二の存在だ。
ナノポーピは現在POPIDと呼ばれ、宇宙中のコンピューターを制御して操作し、この宇宙をここまで発展させたという。この情報も秘匿レベルは特級だが、語り草で知らない者はいない。そのPOPIDが何を今考えているのだろうか。宇宙で今までは考えられなかった、犯罪や陰謀を許す事態となっている。もしかすると制御できない事件でも起こっているのだろうか。そして、それはとうとうDIにまで迫る。一般の兵士にまで体力系のトレーニングを義務付けた。
そして、今日初めて演習惑星での実地訓練を受けている。彼はロボットから逃げ続けている。すでにチームは散り散りとなっていた。15人の演習小隊、相手はB級兵士ロボット3機である。行動不能が勝利条件である。相手ロボットも初めての対人戦ということで緊張しているようだ。数で圧倒している我が演習小隊は少し楽観視していた。Brynkに備え付きのレーザーガンは自動照準で、高性能の小銃も携帯している。いくつかの防衛装備も準備され負ける気はしない。もちろんDlや他メンバーは相手のロボットの機能を知り尽くしていた。リーダーはメンバー平均よりは若干優秀なくらいで、頼りなさが少し気になったが、それは全員でカバーするべき問題であった。一番優秀な人は隣にいる女性であろう、体力テストではいつもトップに立っていたし、学問も優秀、知識が豊富で記憶力をかなりいじっている。そんなイメージだ。Brynkの操作も他よりも首1つ抜けて優れており、まさに彼女が隣にいれば負ける気はしなかった。以前、格闘演習にてひどい目にあわされたことがあったが味方ならこれほど頼もしいことはない。
戦闘が始まった直後、メンバーの士気は高まるはずだった。静寂さを保つように戦場に駆け出す彼らは、訓練で身につけた技術と覚悟を胸に、敵に立ち向かう覚悟を決めていた。だが、想像を超えたロボットたちの動きがそこにあった。そして1人が撃たれ行動不能、それは優秀な彼女だった。自信にあふれていた彼女の苦痛にゆがんだ顔、血塗られた手で傷を押さえる姿見た時、他のメンバー全員の士気が失われた。
防戦一色となり、次々と仲間たちがロボットの攻撃に倒れていく。誰かが必死に庇い、仲間を助けようとする姿もあった。しかし、ロボットたちの冷徹な攻撃は容赦なくその姿を撃ち破る。その光景は彼らの心に深い傷を残した。泣き叫ぶ声と絶望の声が戦場に響き渡り、想像を絶する戦闘の過酷さに、彼らの心は完全に折れてしまった。
Dlもまた、逃げることしか考えられなかった。自分の力では戦いに勝ち目がないと感じながらも、ロボットたちを巧妙に引きつけ、臨機応変に戦いを繰り広げた。狭い空間を駆け巡り、障害物を利用しながら戦う彼の様子は、まるで映画のようなシーンだった。少しずつ、彼が身につけた訓練や知識が発揮され、メンバーたちも彼に対する信頼を深めていった。リーダーはすでにリタイアし、気を失っているが、彼らの心にはDIの存在が勇気と希望を与えていた。
無能と思われていた俺がこの極限の状況で先頭に立つこととなった。冷静に生存者の人数を確認し、ロボットたちの位置を把握する。
「リトボール周りの状況はどうだ! こちらに2体のロボをひき付けている!」
「強えよ! なんだよこいつら追いつかれる!」
「冷静になれ! 訓練を思い出し回避運動をしながら反撃をしろ! マニタ近くにいるなら援護しろ!」
「足を撃たれて動けない、治療を求む!」
「痛いのはわかる、だが、少しの辛抱だ! 頼む近くにリトボールがいるだろ、その後ろに弾幕を張ってくれ」
それからも9名いる戦闘可能メンバーにを指示した。状況に応じて迅速に判断し、味方との連携を図る彼の指揮に、仲間たちはいつのまにか一丸となって戦っていた。
戦闘の中で、ロボを分断させ、機敏な動きと的確な連携で、とうとう1機のロボットを撃破した。苦戦しながらも、彼らは巧妙な戦術を駆使してロボットたちに立ち向かい、壮絶な戦いを繰り広げた。
「あと2体だ、敵は後ろにいるぞ!」
「前にも回り込まれた、くそ! ここまでか!」
「待ってろ!今助けるぞ」
「おい! ジュルガル、無理は禁物だ、遠くからの援護に集中しろ」
「彼は今、挟まれている。俺がいく!」
「くそ! 彼らを援護しろ!」
仲間を庇って攻撃を受けたメンバーもいた。その姿は、まさに勇者のようだった。彼らの献身的な行動は仲間たちの心に深い感動を与え、戦意を高める原動力となった。
しかし、ロボットたちは容赦なく迫ってくる。一歩間違えば命取りとなる攻撃に、彼らの恐怖心を掻き立てる。それでも彼らは立ち向かい続けた。様々な状況に対応しながら、さらに1機とロボットを倒していく彼らの戦いは、壮絶なバトルとなっていた。
そして、果敢な戦いの末、2時間後、ロボット3機全てを撃ち落とすことに成功した。こちらの生存者はわずか8名に減って、内Dlも含め5名が負傷していた。
良い状況ではなかったが、とにかく勝利出来たことに喜んだ。
この演習惑星では、全体で無数の過酷な演習が繰り返されている。戦場での戦いは興奮と緊張を同時にもたらし、銃声が響きわたり、火薬の爆発する輝きが宇宙を照らす。彼らの戦いは、勇気と友情、そして生き抜く強い意志によって鍛えられる。この壮絶な戦いの物語は、この星がある限るまだまだ続くのだろう。
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