第22話 戦場1
その後、数日が経過した。
何事もなく、馬車は進んだんだ。
たまに負傷兵と出会うことがあった。
食事を振る舞って、詳細を聞くが、やはり砦を焼かれているらしい。
「まだ、城壁が壊されていないので耐えられていますが、何時まで持つか……」
投下型爆弾みたいだな。それと、命中精度が良くないみたいだ。
初日に城壁を壊してしまえば、制圧兵を送り込んで勝ちだろうに。
いや……、敵の指揮官の問題かもしれない。
一方的な虐殺を楽しんでいるのか、政治的なパフォーマンスかは分からないけど。
「砦の指揮官は、優秀そうですね」
「どの辺がだ?」
「負傷兵を逃がしているところですね。砦の陥落を見据えているんでしょう。その後を考えているんだと思います」
負傷者に戦闘を強いるよりも、後日の決戦に戦力を割いたんだろう。
指揮官として責任は問われそうだけど、合理的だとは思う。
敗戦を悟った将としては、優秀かな。
「負傷兵が、王都に着けば、情報も得られますしね」
航空戦力が、何時まで砦に固執しているのかが不明だ。だけど、その気になれば、王都まで爆撃に行けるだろう。
問題点があるのであれば、飛行距離かな?
製造して間もないのかもしれないし。運用方法が確立していない可能性もある。
「対処法を知っていれば、教えて欲しいのだが?」
「ないですよ? 同じモノを作った方が早いです。もしくは、それ以上のモノですね」
バジルさんは、言葉を失った。
この人は、軍人なのかな? 輸送長官になるのかな?
砦に着いた後に、どんな行動に出るのか……。付き合い続けていると、俺も危ないかもしれない。
◇
「あれが、目的地になる」
山間部……、山の稜線に作られた人工物が見えて来た。砦だな。もしくは、城壁か。
そして……、上空に飛行船が見えた。幸い一機だけみたいだ。
「爆撃は、されていませんね」
「その様だな」
弾切れかな? あの飛行船が現れて、結構日数が経っている。それでも、砦は落ちていない。
爆弾を使い切ったと考えた方がいいだろう。
そうなると、地上戦が始まっていそうだ。
「……急ごう」
バジルさんが、そう呟いて馬車が走り出した。
砦に着くと、戦闘中だった。
警戒されて、門も開けてくれない。まあ、敵兵が山を迂回して伏せているんだろうな。
少し待つと、夕暮れとなり戦闘が終わった。
夜戦はしない世界らしい。
砦の門が開かれて、馬車が入って行く。
冒険者たちは、門の前で待機だ。そう思っていたら、敵兵が奇襲を仕掛けて来たよ。
砦からの弓矢で近づけさせない。
単騎で抜けて来た相手は、冒険者が対応する。
俺は、馬車を急がせるだけだ。
バジルさんが、大立ち回りをしている。
敵兵が、バタバタと倒れて行った。
馬車を収容したので、全員で下がると、敵兵も下がった。門を閉じて、任務完了だ。
「今のパーティーレベルは、バジルさんに大きく影響していそうだな。STRとかVITの値は、バジルさんのステータスなのかもしれない」
俺からすると、ちょっと高すぎる。スキル〈
〈
そして、最大の問題もある。
「砦の将兵をパーティーに加えた場合、俺のスキルは上手く働かないだろうな」
数百人のパーティーを束ねる力量が、俺にはない。
結局のところ、俺はこの場所でスキルを発揮できない……。
任務が終わったのだから、帰りたいんだけど、今だ許可が下りないんだよな。
「ウォーカー殿。手伝ってくれ」
バジルさんが、何かを作り始めた。どうやら、馬車の一台に兵器を潜ませていたらしい。他は、食料や武器なんだけどね。
テキパキと組み上げていく。
「床弩?」
組み上げてみて驚いた。
かなり大きい弩だ。
しかもそれを垂直に打ち上げるように設置したよ……。
「もしかして、飛行船を撃ち落すつもりですか?」
「リナリーさまが言うには、届くとのことだ。ウォーカー殿としては、どう使うと思う?」
飛行船は、上空3000メートルくらいだと思う。周囲の一番高い山の少し上空を旋回している。
「無理じゃないですかね? 飛んで数百メートルでしょうし」
「そうか……。使い方は皆で考えて欲しいとのことだったんだが」
この床弩を使用して、勝てるかもしれないってこと?
違うな。未来視の言葉を取り違えていると思う。
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