第19話 輸送3

「ドラゴンですね」


「ドラゴンだね……」


 順調に進んでいたと思ったら、トラブル発生だよ。

 長高5メートルってとこかな? 小型のドラゴンが現れた。

 ドラゴンの生態は分かっていない。

 突然POPするから、対策もできない。

 だけど、小型なのが幸いかな。


 ――ピピ


 ここで俺のスキルが働いた。


『全滅率67%』


 このまま戦ったら、護衛の半分は、死亡しそうだ。

 そして勝てそうにないから、3割くらいは、逃げそうだな。


「ウォーカー殿は、見ているだけなのか?」


 今にも襲いかかって来そうなドラゴンから目を離さずに、バジルさんが話しかけて来た。


「俺は、サポーターですよ? 戦闘は、専門外です」


「〈テイム〉は試さないのか?」


 期待されてもな……。成功率が低いんだよ。多分、ドラゴンの知性が高そうなので、数千回スキルを使わないと成功しないと思う。その間は、俺を守って貰う必要があるんだけど。

 護衛の冒険者は……、期待できないな。

 ドラゴンは、小型でもBランク相当の実力が必要だ。

 この中では、バジルさんだけだろう。


「バジルさんを援護しながらの、ドラゴン戦ですかね……」


「前衛一人で勝てるわけがないだろう?」


 ……詰んでるな。

 考える。利益と損害の天秤。


(まあ、俺がクレスの街を出るだけだ。数十人の命が助かるのであれば、安いもんだだろう)


 そして、〈未来視〉に操られていることも分かった。俺のスキルの上位互換だ。

 曖昧だったけど、このドラゴンと遭遇する未来が視えていたんだと思う。

 依頼を断った方が、俺の生存確率は高かったと思う。こうなると、もう俺が戦うしかない。

 考えが纏まったので、俺は馬から降りて短剣を抜いた。ドラゴンは、こちらを観察するだけで襲って来なかったのが幸いだ。


「実力を見せてくれるのかい?」


「緘口令は……、無理ですよね」


「リナリーさまに、報告するように言われている。期待しているよ」


 最悪だな。こんな所で手の内を見せるとか。

 まあ、愚痴は後からにしよう。


「……〈スキル:解放リリース〉――クリティカル・回避」


 今回は、21人でパーティーを組んでいる。

 〈スキル:解放リリース〉は、パーティーレベルのステータスを俺に還元する能力だ。

 今回は、DEXとAGIのみの限定解除だ。

 それと、【真理を知る天秤】から奪ったスキルを廃棄した。これで、ドラゴンからスキルを4回奪える。


「どんなスキルを持っているのか、楽しみだよ」


 バジルさんの言葉に、俺は……、笑った。





 ――ザシュ、ザシュ、ザシュ、ザシュ、ザシュ、ザシュ


 俺は、ドラゴンを切り刻んで行った。ドラゴンの鱗に覆われていない箇所を、ナイフで切り裂いて行く。

 ドラゴンは、爪や牙、尻尾で攻撃して来る。途中で炎を吐き出したけど、正直遅い。

 今の俺には、当たらなかった。


「ステータスは、平均900ってとこかな。まあ、負けはないだろう」


 ついでに、指輪を装備した右手でドラゴンに触れて行く。


(〈レアアイテム入手確率UP〉、〈ブレス〉、〈風魔法〉、〈重力制御〉か……。面白いかもしれないな)


 バジルさんと冒険者たちは、見学しているだけだ。手伝って欲しいけど……。まあ俺一人でも勝てそうだ。

 ドラゴンの関節を切断して行く。四肢の腱を切り刻んだら、ドラゴンが動けなくなり、地面に倒れ込んだ。

 俺は、ドラゴンの背に乗った。

 最後の攻撃として、尻尾で叩きに来たけど、見えている。ドラゴンは、自分の尻尾で頭を叩いた。

 全力の一撃だったらしく、脳震盪を起こしている。


「最後だ……、追加で〈スキル:解放リリース〉――攻撃力」


 STRも解放して、ドラゴンの脳天に短剣を突き刺した。

 鱗と頭蓋骨を貫通して、脳に短剣が刺さる。短剣は鉄製だけど、折れなかった。〈クリティカル〉を上げたのが大きいだろうな。でも、今後も続けて使用するには、不安があるので、後で交換しようか。

 そして……、ドラゴンが即死した。

 どうやら、急所に当たったようだ。俺の全力だと、短時間だけどBランク冒険者くらいの実力はあるんだろう。


「ふう……。素材回収をお願いしますね」


 全員が絶句しているよ。

 まあ、そうなるよね。一番の戦力外であるはずの俺が、独りでドラゴンを倒してんだし。

 だけど、そう簡単に使えない理由もあった。


 ――ピキ


「反動が来たよ……」


 〈スキル:解放リリース〉は、体を限界以上に酷使するスキルだ。スキル使用後に解放したステータスと使用した時間により、俺にデバフ効果が襲って来る。今回は、体が暫く動かなる選択をした。まだ、頭は働く。


 倒れそうになったところを、バジルさんが抱えてくれた。

 俺は、これから暫く動けそうにない。

 この先の道中をどうするかだな。





 遅くなりましたが、主人公のスキル解放です。

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