第18話 輸送2

「武器と食料ですか……。しかも千人分」


 馬車が10台並んでいた。馬も連結されていて、何時でも出発できる状態だ。


「今から、出発ですか?」


「そそっ。ウォーカー君次第で出発時間を決めることにしたの」


 マジですかい。

 護衛の冒険者まで待っているよ。それなら、もっと早い時間に依頼を出してくれても良かったんだけど。


「どうする?」


「もう、出発しましょうか。日が高くなっているし」



 俺が、先導役になって、出発することになった。

 地図を見ながら、馬を歩かせる。

 その後に、馬車が続く。

 リナリーさまは、本当に着いて来なかった。


 ――ピピ


 ここで俺のスキルが働いた。


『危険度9%』


 確率で完全な0%は、あり得ないと思っている。

 この数字なら、このまま予定通り進もう。


「のう、ウォーカー殿。この地の情報を貰いたいのだが」


 バジルさんが、話しかけて来た。


「辺境都市クレスは、人族の活動範囲を広げるために、未開の土地に築いた都市になります。街は、防壁がありますが、一歩外に出ると怪物モンスターと遭遇しますよ。それと、街を追い出されて盗賊に身を堕とした人ですかね」


「ふむ? それは聞いているが、そこまで危険だとは思えなかったぞ?」


「盗賊は追い払いましたし、怪物モンスターの大規模殲滅もしました。今は安全かもしれません」


「……もしかして怪物モンスターは、突然数が増えるのか?」


「そうなります。特に怖いのが昆虫系ですね。蟻と飛蝗が脅威です。冒険者は、街の周囲を徘徊しながら、怪物モンスターの突発的発生の予兆を探っています。群生していたら、総出で討伐に向かいます」


 蟻の怪物モンスターが増え出したと情報を得れば、討伐隊が組まれる。

 飛蝗は、どうしようもない。突然大軍が襲って来るからだ。

 最悪、森が死ぬが、再生速度も異常なので、街を壊されないように対処するだけに留められている。


 考えていると、飛蝗の怪物モンスターが現れた。

 身長1メートルの飛蝗って本当に気持ち悪い。

 冒険者に合図をして、サクッと討伐して貰う。

 飛蝗は、甲羅と羽が素材になるんだよな。それと、食べられなくはないけど、美味しくない。追い詰められた冒険者しか口にしなかった。


「冒険者が素材採集して、労働者ギルドで加工。物流を商業ギルドが仕切っていると……。理想的だね」


 今だけなんだけどね。

 昔は、街中で殺し合いをしていたんだし。

 第二次世界大戦も、アメリカの不況から始まったと聞いた。三つのギルドの内、何処かが破綻したら街の物流が止まる。その時になって慌てないように、俺は錬金術を学んでいる。

 経済は、生き物だと思ってる。簡単に破綻すると思っているのが本音だ。

 街という、100人程度の住む地域でも、長期の安定はしないと思っているのが、俺だった。


 その後、数度の襲撃があったけど、全ての怪物モンスターを倒した。今回雇った冒険者は優秀なようだ。





 陽が暮れたので野営だ。


「それで、この地は、夜は盗賊が出ます。まあ、俺たちはカモですね」


「追い払ったのでは、ないのか?」


「皆殺しはしていないので……」


 バジルさんは、黙ってしまった。

 盗賊の殲滅は、正直可能だけど、ギルド長が集まり話し合って、しないことになった。

 彼等も身分を偽ってクレスの街に来からだ。

 大きな括りでは、街の一員なんだ。


「まあ、次に捕まったら縛り首の人もいますし……。来るかな?」



 夕食は、俺が作った。まあ、鍋料理だけど。

 全員完食してくれたので、美味しかったんだろう。感想は聞けなかったのが残念だ。


 その後、火の晩を決めて、休むことになった。

 俺は……、休んでいいそうだ。

 夜は盗賊の警戒だけど……、大丈夫だろう。


 寝袋で休むことにする。

 寒くも暑くもない季節で助かった。テントなしでも寝れる。

 俺は、そのまま眠りについた。



 朝起きて、周囲を確認する。


「おはようございます。……異変はありませんでしたか?」


「おはよう。一晩何もなかったそうだ」


 警戒し過ぎたか。


 ――ピピ


 ここで俺のスキルが働いた。


『危険度8%』


 この分だと、盗賊との遭遇はなさそうだ。目的地まで順調に行ければいいな。





 朝食を食べたら出発だ。

 朝食は、火の番をしていた人たちが作ってくれていた。


「このまま何も起きないといいですね」


「それは、フラグかい?」


 サポーターは、トラブルを嫌うんですよ。

 普通の冒険者なら、喜ぶのかもしれませんけどね。

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