第16話 スキルの説明1

 とりあえず、俺のスキルの説明を行うことになった。

 使えないことを教えれば、諦めてくれるとの判断だ。


「まず、俺は単独ソロでは無力です。Dランク冒険者だと思ってください。サポーターが精々です。ですが、パーティーを組めれば話が変わって来ます」


「それでパーティーを組むと、どうなるの?」


「まず、全員の位置が分かります。一度でもパーティーを組んだ相手は、大陸の反対側にいようが、サーチすることができます。それと、生存確認ですかね。組んだことがあり、死亡していれば、サーチができなくなる……。これが俺のスキルの本来の使い方になります。一番始めに創ったスキルですね」


 ギルド長が考え出す。

 まあ、顔を出さなくなった冒険者なんて多くいる。その安否確認だけでも役に立つとか考えていそうだ。


「それと、ちょっとした〈未来視〉ができます。例えば、この人たちとパーティーを組むと今日は危険か否か……。まあ、朝の占い程度の事柄を、確率として知ることができます」


「トリガーが、『誰かと組む』のみなんだね?」


「若干違いますが、その認識であっています。パーティーを組んでいれば、何時でも発現できますし。そうですね……例えば、今日リナリーさまを追いかけたギルド長を、俺が追いかけた場合は、危険度51%、追い着ける確率99%でした」


 セージさんが不思議な顔をする。


「リナリーさまを追いかけて来たのではないのか?」


「分かりづらいかもしれませんが、『一度組んだことがあるか否か』が重要になって来ます」


 分からないよね……。『フレンド登録』とか言われても。

 俺もゲームを真似て作ったんだし。


「じゃあ、さっき私とパーティーを組んだから、私の位置と安否確認はできるってこと?」


「そうなります。仮に敵対した場合は、リナリーさまを暗殺しにも行けます。まあ、それも誰と組んでいるかによるんですけどね」


 全員が、サーチスキルの危険度を理解したようだ。

 王族の位置を知れるってのは、敵国からすれば値千金の情報だ。

 逆に俺をスパイとして潜り込ませれば、敵将の首を狩り放題になる。

 国の上層部を狙い続けて、国家を麻痺させることも可能だ。


「それとさ、魔法はなんなの? さっき、〈必中〉って言ってたけど」


「俺は、大きく分けると鑑定士になります。人物鑑定のみですが。まあ、後衛というより、魔法系ですね。ですが、魔力がほぼありません。お金ができたら、〈種ブースト〉を行っている状況です」


 〈種ブースト〉が分からないみたいで、説明に時間を取られた。

 この世界では、〈MPがわずかに増える食べ物〉に価値を見いだせていない。漢方薬程度の認識かな?

 俺みたいに、ステータスを見られないからだ。実感できないんだろうな。

 それに、生産量も多くない。ほとんどが、迷宮ダンジョンに出現する怪物モンスターのドロップ品だ。

 これもゲームに近いかな。

 一応ギルドが買い取ってくれるので、分かる人には分かるんだろう。

 クレスの街で買っているのは、俺を含めて数人だけだ。


「魔力がほぼないのに、魔法系なの?」


「それもですね、パーティーを組むと変化します。パーティーメンバーに魔法系がいるとMPが増えると考えてください。『パーティーを組む』ことが、俺にとってのバフ効果になります」


「魔法は、どんな種類を覚えているのだ?」


 手の内を晒し過ぎなきがするんだけどな。

 まあ、隠しても意味がないな。


「バフ・デバフ系がメインです。直接ダメージを与える魔法は得意じゃないですね。さきほど、〈麻痺〉を撃ちましたが、魔力を込めれば、心臓停止までは行けます。特徴的なのが、味方にデバフ効果を与えられる点ですね。これは、俺の認識によるモノです。『薬と毒は同じモノ』と認識していると考えてください」


 全員が考え出す。

 まあ、何時もの光景だ。環境を変えるとこうなる。


「味方へのデバフ効果。使い方次第……ではあるのか」


 バジルさんは、なにかを思い付いたみたいだ。


「考え方次第だと思ってください。デバフ効果を受けた味方が、必ずしも弱体化しないってのが自論になります。使い方は――考えてみてください」


「女王蟻は、なんだったんだ?」


 今度は、ギルド長からだった。


「パーティーに誘えるのは、怪物モンスターも含まれるんですよ。承認してくれるかどうかは、相手によりますがね。ちなみに、女王蟻は、512回目で成功しました。30分間保証された安全地帯があれば、まあ成功はするでしょう。それと人に飼われた馬であれば、1回ですね」


「それも認識の問題なのか? 怪物モンスターと馬……。人以外もパーティーに誘えると? 〈テイム〉と思われていたが、根本が違うのか?」


「俺の……、いや、俺たちの魔法の共通点でした。"本人の認識によってスキルと魔法の性能が変化する"んですよ。俺は、人族、エルフ族、亜人族、魔人族に差を感じないと言うか。違いは分かるんですが、区別はできないんだと思います。そしてそれは、怪物モンスターや動植物も同じです。俺は、『命に貴賤はない』や『一寸の虫にも五分の魂』って考え方なんです。それが、スキルに反映されています。それと、植物ですね。俺は、動物と植物の命に、差はないと考えています」


「それは……、エルフ好きとか亜人好きとは違うの?」


 リナリーさまは、何を考えているんだろう?


「性欲とは考え方が違いますね。性別に関係ありません。あくまで命を平等に捉えています。その気になれば、朝生れて、夕方に死亡する命でさえ、パーティーに誘えると思っています」


「虫けらと人族の命が等しい……か。口にするのは簡単だが、本気で思い込んでいるのが、恐ろしいな」


 全員が考え込んでしまった。

 俺なんか可愛い方なんだけどな。『生物と無生物の区別がつかない。命を持っていることがそんなに偉いのか?』と言った奴がいた。そいつの魔法は、世界を破壊しかけたんだけどな……。

 それと、オウレンさんが、話について来れているのが意外だな。事前に情報を得ていたのか?


「ひひん!」


 馬の休憩が終わったようだ。


「移動しましょう。街に着くまでに質問を考えてください。答えられる範囲で答えます」


 手の内を晒すのは、自殺行為かもしれない。

 だけど、今は味方が欲しいのも事実だ。

 関係が悪化すれば、俺は土地を捨てればいいだけだし。

 それと……、リナリーさまの財力には期待している。金で解決できるモノは、ここで手に入れておきたい。





 途中で食事休憩を挟んだので、街に着いた時は夕方だった。

 道中はなにもなし。全滅率0%だったので、俺は気を抜いていた。正直疲れたよ。


 冒険者ギルドで、馬を返す。

 ギルド職員が来てくれた。


「助かりました。ありがとうございました」


「お礼を言うのは、こちらです。よくギルド長を助けてくれました。ありがとうございました」


 ギルド職員が、頭を下げてくれた。こんな風な感謝のされ方をされると嬉しいよね。

 若干照れたような、頬を赤らめる仕草が、流石ベテランのギルド職員だと思う。男心をくすぐる術を心得ているのを感じる。


「むう~」


 リナリーさまが、頬を膨らませている?

 嫉妬してくれているのかな?

 俺は、彼女の名前も知らないんだけどな。


 その後、今日は解散とさせて貰った。流石に疲れたよ。

 そう思ったら、背後から抱き着かれた?


「シリルさんと、ヒナタさん? 何してるんですか?」


「心配したニャ!」「心配したんです!」


「むううぅ~~~!」


 ――ピピ


 ここで俺のスキルが働いた。


『女難度99%』


 初めて出たんだけど。何の数字?

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