第14話 襲撃

 俺は、包囲している敵陣を背後から突撃して、包囲を突き破った。そして、リナリーさまが乗る馬車に近づいた。

 馬車の前まで移動すると、ギルド長と目が合う。


「ギルド長……。状況は分かりますか?」


「敵は、盗賊じゃない。完全武装した軍隊だ。それと、毒は使って来なかった。こちらは、馬を射られて立ち往生だ」


「数は?」


「大分減らしたが、多く見積もっても残り30人ってとこだろう」


 詰まるところ、俺の乗って来た馬の生存も、絶対条件なんだろうな。

 敵側に、騎兵はいない。

 襲撃も山道だ。

 完全に待ち伏せされていたんだろうな。こんなピンチな状況は久々だ。【真理を知る天秤】の無謀な行進が、可愛く思える。

 俺は、周囲を確認して、勝つための道筋を構築して行く……。


「ねえ? ウォーカー君?」


「リナリーさま。俺とパーティーを組んでくれませんかね?」


「うん……、いいけど。それよりも、何でここにウォーカー君が現れるの?」


 ――ピピ


『ステータスが変化しました』


 パーティー名:未登録(リナリーのパーティー)

 HP:212

 MP:301

 STR:311

 DEX:250

 VIT:98

 AGI:200

 INT:501

 MND:493

 CHR:809


「まあ、30人程度だ。十分だろう」


 俺は馬から降りた。

 一気に終わらせる!


「〈拘束バインド〉!」


 前方に範囲型の魔法を展開する。今回は、移動阻害とした。


「「「うっ、動けねぇ!?」」」


 俺は、過去に組んだ人の魔法が使える。スキルをそんな風に作り上げた。言語化するなら〈学習ラーニング〉かな?

 単独ソロだと、MPがほぼないので使えないが、パーティーを組めばある程度は使えるようになる。

 極大魔法とかは、無理だろうけど。発現失敗で、自爆したくない。


 視線を上げる。とりあえず、全員にデバフ効果が及んだみたいだ。

 これで半分は、無力化した。


「ギルド長。こちら側を頼みます。動いた奴は、叩き潰してください」


「うっ……、うむ」


 ギルド長の武器は、ハンマーだ。正直、金属の塊だ。どんな防具を着ていても、全力の一撃ならば、即死させられるだろう。

 前後から挟まれているので、無力化した方をギルド長に任せる。

 反対側は、護衛の二人が対応していた。


「え~と、セージさんでしたよね?」


「援軍感謝する。それともう一人は、バジルだ」


 援軍って言ってもね。俺一人では、微々たるもんですよ。

 敵兵は、半分倒れているよ。血の匂いが周囲を包んでいる。この二人は強いな。

 それと、敵対している軍隊は、怖気づいている。

 もう少し、強力な魔法でいいか。


「〈麻痺パラライズ〉!」


「「「うぐっ!?」」」


 完全な行動阻害魔法を展開した。デバフ魔法の範囲攻撃ってやっぱ使い勝手がいいな。

 込める魔力量によっては、肺や心臓が止まり即死もあるえる魔法だ。これ以上の、デバフもないだろう。

 バランスを崩した、敵兵が前後に倒れ込む。

 今度は、口すらきけない、完全な行動不全だ。


「へ~、ウォーカー君って魔法系だったんだね~」


 リナリーさまが感心しているよ。それと、馬車から出ないのは褒められる。


「どうします? 一人残して、全滅させますか?」


「う~ん。もうちょっと待ってくれるかな~? もうすぐ来ると思うんだ~」


 俺以外にも、援軍が来ると言っている?


「なあ、ウォーカー殿。魔法の効果時間とか大丈夫なのか?」


「俺の魔法は、この世界の体系と異なっていましてね。俺が解除しない限りは、継続します。まあ、一日くらいならこのままだと思ってください。それと、伏兵に気を付けてください」


「承知した」


 〈テイム〉の時もそうだったけど、この世界のスキルと魔法には、効果時間が存在する。

 これは、認識の差なんだと思う。

 『消えない炎』を発現した奴がいた。俺も一度魔法が発動したら、消えないと考えるタイプだ。

 魔力を常に送り続けている訳じゃないんだし。

 人によっては、チートと感じるらしいけど、成功率100%という訳でもない。成功率もパーティーメンバーに依存する俺は、かなり確率が不安定だった。その確率も、スキルで補っている状況だ。


 この後に、セージさんとバジルさん、ギルド長の三人が敵兵の武器を回収し始めた。

 毒が付与された危ない武器もあったみたいだ。まあ、奥の手だよね。


「うふふ。大量だね~」


 盗賊の武器を大量に得ても嬉しくないんだけど?

 リナリーさまは、今の状況を分かっているのかな……。


「身元を証明するモノは見つからないな。防具は、全員バラバラだ」

「盗賊に扮装しているつもりなんだろうか?」

「しかし、ウォーカー殿の魔法は、強力だな……」


 少し会話して、時間を潰していると、空が暗くなった?

 顔を上げる。


「ペガサス?」


 羽の生えた馬? この世界には、空飛ぶ馬もいるんだ?

 一騎が降りて来る。


「護衛ご苦労」


 三人が敬礼した。リナリーさまは、嬉しそうに見ている。


「……見慣れぬ者がいるな?」


 俺のことか?


「近くの街の冒険者です。ギルド長の依頼を受けて、救援に来ました」


「……この動けぬ者達は、貴殿の仕業か?」


「そうです。デバフ効果ですね」


 騎兵が、リナリーさまに視線を向けた。


「〈未来視〉からの情報にあった、協力者とはこの者のことですかな?」


「う~ん。まだ確定じゃないけど、そうなるかな?」


 今度は、〈未来視〉と来たか。

 ここで、騎兵が一斉に降りて来た。

 その後、盗賊の拘束に入る。

 魔法は……、もう少し継続しようか。

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