第10話 事後処理と休憩
【真理を知る天秤】と王女さまは帰って行った。多分、王都にだと思う。
まあ、これから借金の返済に追われるんだろうな。王家の監視も付くんだろう。
足を引きずっているけど、自業自得だ。回復魔法もあるみたいだし、大丈夫だろう。
それと、俺には移動制限がかけられた。数日で帰って来るそうだ。
空飛ぶ魔導具か、転移魔法か……。まあ、興味はないな。
【真理を知る天秤】が使っていた武器防具だけど、査定が行われたら、王女さまが即金で買い取ってくれた。
それを街と冒険者の保証に充てて欲しいと言えば、誰も反論しなかった。
こうなると、不祥事が起きる前提で監視していたのかもしれない。
まあ、どうでもいいか。
後は、【真理を知る天秤】が借金を返せれば、全て丸く収まる。金貨何枚なのか聞いとけばよかったな。
「ウォーカー。外にいる女王蟻なんだが……」
ああ、忘れてた。しかも、女王蟻は寝ているし。
誰も攻撃しなかったのが、幸いだな。
こんな街中で暴れられたら街が半壊してしまっていた。
「なあ、ウォーカー……。〈テイム〉に制限時間とかないのか?」
「ないですよ? 厳密には、〈テイム〉とは違うし。その気になれば、俺が死ぬまで味方でいてくれます」
食事の世話とか洒落になんないけどね。
その後、現在
「ありがとな。次会う時は、敵かもしんないけど、元気でな」
――コクン
女王蟻は、頷いてから
「食料は、途中の
行きは、急いでくれたけど、帰りがどれだけの時間をかけるのかが分からない。女王蟻の気分次第だ。
冒険者ギルドに連絡しておこう。
◇
女王蟻を帰した後に、冒険者ギルドで説明を行った。
「3日ほど
冒険者の反応は、それぞれだ。まあ、3日間とはいえ収入を絶たれるんだしね。でもね、ほとんどが怪我人だ。
反論は出なかった。
その後、ギルド長室へ呼ばれた。
今は、ギルド長と2人きりだ。
「なあ、ウォーカー。何処まで知っていたんだ?」
質問が曖昧だな。ギルド長は、なにかを探っているのか?
「魔道具のことですか? 王族が来ている時点で怪しいと思いました」
「そうか……。それと、【真理を知る天秤】からの報復があるかもしれん。街への立ち入りは禁止するが、年単位だと庇いきれないぞ? 暗殺者を送り込んで来るかもしれんしな」
心配し過ぎだな。
「ないとは言い切れませんが、借金まみれの彼等に人を雇う余裕は生まれませんよ。それこそ、一攫千金を得る幸運があればですけど」
「……ないと言い切るんだな」
「まあ、彼等の
そんなのは、スキルを使わなくても分かる。
二度と会わないことを祈るだけだ。
「肝が据わっているのか、慢心なのか……。まあ、ウォーカーは図太いんだな。その若さで達観しているようにも見えるよ」
そう言われてもね。
性格は、そう簡単には治せないんですよ。
その後、冒険者への保証の話に移った。
負傷と
問題は、死者の出たパーティーだ。
「この街の最上位のパーティー2組だ。流石に、冒険者ギルドとしても依頼を出した手前、保証を出さないといけない」
ギルドから無理強いしたのかな?
「なら、【真理を知る天秤】をこき使えばいいのに。王族に渡さずに、この街で飼うことは考えなかったんですか?」
「……使い潰すのが目に見えるだろうに。最悪、街の冒険者が、殺しにかかるぞ」
俺は、打算しか考えられなんだな。少しは、人間らしい感情も覚えるか。
その後、ギルド長の相談には乗ったけど、いいアイディアは出なかった。
◇
迷宮攻略から三日が過ぎた。
俺は動けないでいた。どうやら、王女さまが事前に指示を出していたみたいだ。
宿屋の部屋から街を眺めるくらいしかできることがない。
「俺を街から出さないように……か」
毎度のことだ。
俺のスキルは真価を発揮すると、周囲が騒ぎ出す。
いや……、真価はまだ見せていないか。まだまだ本気じゃない。
それでも監視付きの軟禁状態だ。
チートというより、珍しいんだろうな。
「組んだ人によって変化するスキル。まあ、分からなくもない」
考え方次第なのは、俺が一番よく知っている。
何ができなくて、何処までできるのか。
高校生だった頃に、MMORPGにはまっていた時期がある。その時のシステムコマンドを模倣してスキルを作り上げた。
パーティーメンバーの位置をレーダーのように捕捉することから始め、各人のステータス把握、パーティーから見た敵の強さの鑑定……。思いついたスキルは全て実現できた。
そして、それだけじゃなかったんだ。
「〈
最上級魔法を撃てる状態になっても、MPが少な過ぎて撃てないバグが発生した。だけど、アイテムで補う方法を見つけた。
そして、調子に乗って今の状況だ。
「2回目の異世界転移で、ほとんどのモノを置いて来てしまった。だけど、〈
最悪、死亡する可能性があるので、独りで実験した結果が、2回目の異世界転移だった。
1回目の異世界と同じ世界なのかも、怪しいと思っている。
「同じ次元の別時間に飛ばされた可能性……。10年後とか20年後に再会できればいいんだけどな」
希望的観測に過ぎないのは、理解している。唯一の希望は、魔法を使える世界であって、その体系が1回目の異世界と同じということだけだ。根拠としては、乏しいとしか言えない。
孤独にも慣れた。
自分の右手を見る。指輪が4個はめられていた。
「これだけが、命綱ってのも頼りないけど、俺にとってこれ以上ないアイテムでもある」
昔の仲間――元クラスメイトが作ってくれた、俺専用の装備。状況次第では、この指輪一つで世界を壊せる可能性すらある。
考えていると、馬車が見えた。かなり豪華な馬車だ。
王女さまが戻って来たみたいだ。
「呼び出しがかかるんだろうな。外出する準備だけしておくか」
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