「秋」 永井龍男 1975年 第2回
名月の秋。「私」は友人に誘われて、予てから小説の題材にしようと考えていた「月見座頭」という狂言を観ることが叶った。「私」は狂言を見物する前に、鎌倉で中秋の名月を見ておくことにした。しかし、娘は、嫁ぎ先の義母が亡くなったために忙しかったため、不参加だった。
本作は8月の花火、9月の狂言公演、そして10月の寺詣りという3つの季節感を漂わせる出来事を一編に結集させた短篇である。風情ある秋の捉え方は、古来から存在する日本的な季節の感性に通ずるものが感じられる。
受賞作の作者・永井龍男は、第2回の選考委員でもあって、本人もそのことで受賞に消極的だった模様だ。しかし、その他多くの選考委員に強く推されて、受賞となった。それ以後は選考委員の作品の候補に挙がらないようになり、また選考委員は既に川端康成文学賞を受賞している作家や、評論家が任ぜられる傾向が出来た。
永井龍男は拙作『芥川賞作品全作解剖』の番外編に当たる「朝霧」の話でも述べたように、短篇の名手として知られる。「活版屋の話」でデビューして以来、横光利一賞を受賞した「朝霧」や、『一個その他』『青梅雨その他』などの好短篇集の他に、『石版東京図絵』『コチャバンバ行き』などの長篇も遺している。
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