「時に佇つ(十一)」 佐多稲子 1976年 第3回

 「わたし」は30年前、20年も共にしていた男と別れた。その男・柿村広介の突然の死を、「わたし」は彼の義弟から電話を通じて知った。柿村の死からまだ数ヶ月しか経っていない。しかし、その出来事はまるで大昔のことように、曖昧にしか残っていなかった。

 私小説。老成。死。第3回も引き続きベテランによる類似したテーマの作品の受賞が続いている。ちなみに、題からも察せるように、本作は連作短篇集『時に佇つ』の第11章である。各々の作品は独立性が高く、それぞれ一編の短篇として読むことができる。


 佐多稲子は戦前、『キャラメル工場から』など、プロレタリア作家として活躍。戦後も革命運動などとも関わり、政治的衝突も絶えなかった。代表作に『樹影』『くれなゐ』『夏の栞』などがある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る