第5話 兄さんはどこへ?

僕は意識を取り戻す。辺りを見回すと、そこには...


「うわぁ、やっちまった...」


先程僕を刺した男が、地面に倒れていた。

これだから、制御の出来ない能力は嫌いなんだ。ただ、被害が少ないようでよかった。


そんなことを思っていると、何者かがこちらに向かってきていることに気がついた。もしかすると、見られていたかもしれない。


「...危ねぇ奴だなぁほんと」


良かった、兄さんだった。兄さんじゃなかったらこの事が学園中に広まってしまう可能性があった。


「ごめん。でも、僕自身制御出来ないんだから仕方ない」


「お前の能力って、強い割に不便だよな」


「ほんとだよ。僕も兄さんみたいに使い勝手のいい能力が良かった。」


「別に俺の能力もそこまで使い勝手がいい訳じゃねえよ。まぁお前と比べたらいいんだろうけど。」


兄さんの能力は、光からエネルギーを吸収して、攻撃することが出来る。そのため、太陽光からエネルギーを得ることが出来る朝や昼、尚且つ野外での戦闘ではとんでもなく強い。


確かに夜の戦闘では攻撃力は必然的に落ちるだろうが、僕の能力と比べれば、使いやすいもんだ。

...まぁ、僕の能力ももしかしたら使いやすいのかもしれないけど。


とりあえずこの倒れているこいつを保健室まで運んで帰ろう。







「多少は自分の能力を制御できるようになったりしてないのか?」


「こればっかりは多分無理だろうなぁ。」


僕の能力はかなり珍しいもので、僕が何とかすると言うのは不可能に近い。何故かと言うと、僕が能力を使用する時は、それはきっと僕ではなくて...

なんだかややこしいな。




「俺買い物行ってくる。」


「あ〜わかった」


兄さんはそう言うと、すぐに家を出ていった。






そこから何時間だっただろうか。普通に買い物をしているなら既に帰ってきているほど時間が経っているのに、兄さんは一向に帰って来ない。

なにか事故にあったのだろうか。ただの交通事故であれば問題は無いが、違うような気がする。妙な胸騒ぎを感じている。


兄さんを探しに行った方がいいだろうか?でも、どこにいるかなんて少しも絞れやしない。だったら、何も無いことを祈るしかない。そう結論付け、適当に飯を食べて寝床に着いた。





翌朝になる。兄さんはまだ帰ってきていないだろう。それよりも、あることに気がついた。


「...うわ、遅刻じゃん......」


スマホに表示されている時刻は8:15。どれだけ急いでも遅刻は免れないだろう。そう悟った僕は、学校に体調不良で遅刻すると連絡を入れ、少し外に散歩しに行くことにした。


兄さんが帰ってこなくなってからの胸騒ぎは未だ治まっていない。

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