第4話

土曜日。


三谷の宣言通り、前日である金曜21:00に「明日部活」とたった4文字の三谷のメール文がグループチャットに流れた。


その後に山口が「追記:おそらく8:00集合。お昼ご飯前解散」と。


流石にギリギリすぎるだろう、など色々な不満で一時荒れたグループチャットも三谷からの返信が一向にないこと、通常運転などの理由で引いていき、本日である。


「もぉ、ほんとに前日に言うのやめてよね」


「忘れてたから」


「忘れてた、じゃないよ」


森が7:50に行くとすでに4人ほど部室におり、三谷は怒られていた。


「あ、新人?」


そう聞くのは森のひとつ上、三谷のひとつ下の原小夜子である。


彼女は学年の中でもかなり元気であり、兼部可能数上限の5つを学校ではじめて達した人だ。


色白で髪色はおとなしくストレート長髪、でもスカートはスカートが捲れたらすぐに見えてしまいそうだ。脚はすらっと長くて白い膝丈の靴下がピンと伸びている。


「あ、森」


森が言い終わる前に


「自己紹介で聞く」


と原はピシャっと言う。


「ごめんね。うちの部活のルールなのよ」


と言うのは、超絶美人ハーフの山口紋萌、お嬢様。色白、茶髪ふんわりカール、青い瞳。明らかに勝ち組体型。身体もほっそり、痩せすぎなほど。スカートの長さは基準通り。膝丈。白い長袖ワイシャツ。美しい。


「あ、はい」




結局、全員が揃ったのは8:30頃になった。


それぞれ片方の部屋に好きなように座った。


「えーでは、バカ部恒例。自己紹介をします」


と、三谷はすくっと立ち上がり話し始める。


「まず、俺ですが、名前は三谷解。高3。部長は3年目です。なんせ、俺が作った部なんでね。次、時計周り」


「えー僕ぅ」


ボサボサ髪、無精髭の男である。学校指定のジャージに身を包んでいる。


「面倒くさいので座ったままですんません。僕は安井護。ここのお金の管理とかあとは野原部とか、文化部の経理やってて、お金担当っすね」


安井は右横をチラッとみる。


山口はすっと立ち上がって、にっこり笑った。


「山口紋萌です。高3で三谷くんと同じクラスです。じゃ、後輩ちゃん」


森は緊張しているのかガチガチ。


「あ、えっと、新人の森りさです」


森はぎこちなく椅子に座った。


「月島紡。高2です」


月島は色黒のショート髪。いかにも運動部という見た目だが、性格はおとなしく、目元のクマもひどい。声色も暗く、いつみてもしんどそうだった。


「原小夜子!左と同じく高2。バカ部以外にも結構兼部してて4つだっけな……?だから、あんまり来れないかもです!よろ!」


原はチラッと右横を見る。


そこには、最後の部員である前野湖太郎がいるのだが、壁に寄りかかって、工作に使うのだろうダンボールの陰に隠れるようにしてうずくまっている。


「こっくん。無理っぽいね、部長」


「ま、もともとその予定だったし、代わりに原が言って」


「このダンボールに隠れているのがこっくんこと前野湖太郎くんです。私と同じクラス!新人ちゃん……えっと、りさっちは初めてだから分かんないと思うんだけど、こっくんはいつもこうだから。あんまり話してくれないけど、優しいし、かっこいいから!」


「あ、はい」


森は前野の方をチラッと見る。


前野は相変わらず体育座りで自分自身の膝に頭を押し付けている。


「ん。じゃ今日は解散ね」


三谷のこの一言で、全員ゴソゴソと帰る用意を始める。


「あ、そうだ。みんなさ、野原部のやつ、手伝うやついない?」


原が大きく手を上げて


「あたし、その日無理」


「私もです」


と月島が続いた。


安井はなにも言わずに部室から出ていく。


「まーくんもないだろうし」


「あ、三谷くんの言うまーくんは前野くんのことだからね」


森が不思議そうにしていると山口がそう付け足す。


「あ、なるほどです」


「僕やりますよ」


ダンボールの方からとてもか細い声がした。


「まーくん、まじ?」


三谷は神様でも見たような顔をする。


「もーさ、みんな協力してくれないからさ、人数不足でバイトでも雇うかって話を山口としてて……まじで神だよ!まーくん!」


前野はこくりと頷く。


「じゃ、じゃあ4人で予定通り。俺、山口、まーくん、新人!」


三谷は不安がなくなった顔で、まるで三谷の周りが虹色で輝いているようだ。


「1000円!1000円!」


と言いながら部室をスキップしながら去ってしまった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る