第14話 意外な発見
「では、参ろうか」
ハーラルがそばにいた侍従に声をかけると、扉の前に立っていた二人の衛兵が厚みのある大きな扉を両方から開いた。
途端に中から盛大なファンファーレが鳴り響き、リンネアはびくっと肩を震わせる。
「リンネア様。わたくしは大広間の方で待機しておりますね。のちほどまた」
そう言ってエリダが深く頭を下げて行ってしまう。
残されたのは皇帝一家と田舎娘だけ。不安しかない。
侍従が高らかに王族の入場を宣言し、彼らは順に進んでいった。
最後に呼ばれたのはラーシュとリンネアだ。
突然、彼が右腕を出してきたので、何かされると怯んだ彼女は反射的に体をのけぞらせる。
「あ――」
せっかくここまで転ばずに来たのに、バランスを崩して踵でドレスの裾を踏みつけ、視界が斜めになった。
衝撃を覚悟してぎゅっと目をつぶると、次の瞬間、何かしっかりとしたものが背中に触れ、優しく支えられる感覚が広がる。
包み込むような温もりがあって、少しの間、時間が止まった錯覚に陥った。
「……っ」
ゆっくりと目を開けると、すぐ近くに厳格な表情を崩さないラーシュの顔があり、はらりと垂れた一筋の前髪がリンネアの頬をくすぐった。その瞬間、心臓が口から飛び出そうになる。
ラーシュの腕は彼女の背中を支え、もう片方の腕は肩に触れている。完全に彼に抱き留められている状況だ。
かあっと頬が熱くなるのを感じる。
「何をしているんだ、お前は」
ラーシュは少し怒ったような、あるいは呆れるような口調で言って、リンネアをそっと床に立たせた。
「い、いえ、あの、斬られるか殴られるかなと思って避けちゃいました」
少し声が震えてしまったのは、まだ胸がドキドキしているせい。
間近で見ても粗のない完璧な容姿はいささか卑怯では?
「そんなことをするわけないだろう。私の腕に手を添えて歩けという意味だ」
ぶっきらぼうに言ったラーシュは、再び右腕を先ほどのように差し出した。
「あ……ああ、そうなんですね。申し訳ありません」
リンネアはおそるおそる彼の腕に自分の手を添える。
ラーシュの冷ややかオーラのおかげで頬のほてりも急速に冷めていった、お礼を言わないとね。
冷血漢だと思っていたけど、本当は優しいのかも、なんてことを考えつつ、ゆっくり中に入っていく。どうやら彼女の歩幅に合わせてくれているらしい。
「陛下の腕って温かいんですね。流れる血すら凍ってるなんて聞いたから――」
「お前は私を馬鹿にしているのか?」
こちらを流し見た目はやっぱり鋭くて、優しさのかけらは微塵もなかった。
どうしよう、また怒らせてしまったかもしれない。
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