第三章④
延々と鬼を続けさせられたレイエルは当然、疲弊しきっていた。子供たちのパワーについて行けず、しばしの休憩を取る。
「全く。子供だからって少々舐めてかかってました。どこからあんなに力が溢れてくるんですかね」
レイエルはリタイアしたというのに、子供たちはまだ遊び足りないのか、その有り余る力を全力に鬼ごっこに注いでいる。最早ついていけそうにない。
自分も十分子供だという自覚はあるが、爆発力のようなものが昔に比べて無くなっているような気がする。それを成長と捉えるべきか衰えと捉えるべきか、その判断が付けられるほど、レイエルはまだ成長していない。
「それにしても、カラドさんはまだなんですかね。結構時間が経ったような」
鬼ごっこなんてことをさせられていたのもカラドと交代したからだ。その張本人の姿をレイエルは探し始める。
「カラド兄さんでしたら、今家から出て行きましたよ」
「えっ!?」
指差す方向を見れば間違いない。カラドと黒髪の、確かシャルという聖霊とが一緒に歩いていた。しかしその方向はレイエルたちのいる方向とは全くの逆。林の方へと入っていく。
「あっちは?」
「カラド兄さん、多分お墓に行くんだと思います」
その言葉に眉を顰める。どういった経緯でカラドが墓に行くのか。いきなり話辛くなり、どうしたものかと考えあぐねる。
色々と尋ねたいことがある。が、一番デリケートな部分をおいそれと尋ねてしまってもいいのだろうか。
「二年前に死んだんです。カラド兄さんのお父さんとお母さんは」
そんなレイエルの考えを察したのか、ステラは少し言いにくそうに漏らした。それにレイエルは当然、驚きで返す。
カラドの両親が死んでいる。それは初耳だった。それは当たり前だろう。出会って一日しか経っていない。知っている方がおかしい。
「……」
迷う。カラドを追うべきか黙って待っているべきか。ここから先は昨日今日出会った他人に踏み入れられたくない領域なはずだ。半端な気持ちで追いかけてもいいものではないだろう。
しかし、レイエルは現在カラドの監視役として付き添ってきている。逃げ出すことなど無いだろうが、何かに感化されてそうしないとも限らない。
レイエルは悩んだ挙句――
「……まあその内帰ってくるでしょう。今更逃げようなんて、さすがにバカなカラドさんでも思わないはずですし。別に信用しているというわけではありませんが、まあ走り回ってクタクタですしね」
最後の一言は要らなかった気がしないでもない。これではただの照れ隠しではないか。
本当にレイエルは、脚が使い物にならないだけ、ただそれだけで今は休憩時間でしかない。
信頼しているなんてこと、あるはずがないのだ。
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