第5話 雄の顔のお姫様抱っこ

 柘植野はベッドに頬を付けて悩んでいた。


 結婚式の日、ペアリングについて同期たちに相談した。


 ペアリングを贈りたいと言ったとき、貴山きやまに「ただのマーキングじゃないの?」と言われた。咄嗟とっさに答えられなかった。


 でも、マーキングでいいんじゃないか。

 将来の話をするには早すぎる。若い子に夢中になるイタいオッサンみたいじゃないか。

 だったら、マーキングって思ってもらえれば、それで……。


 柘植野が考え込んでいたとき。マンションの廊下から、キャリーケースを引く重い音が聞こえてきた。

 柘植野が耳を澄ましていると、隣室の玄関が開く音がした。


 柴田が帰ってきた!


 柴田は今日の昼の飛行機で帰ってくると聞いていたのに、全然帰ってこなかった。

 柘植野は、柴田が空港でぐるぐる迷っているに違いないと心配で、泣きそうな気持ちで待っていたのだ。


 柴田から遊びに来てくれないので、柘植野は柴田の家のドアベルを鳴らした。


文渡あやとさん! ただいま戻りました」

「おかえりなさい。とっても心配しました」


 柘植野は柴田に飛びついて抱きしめた。柴田はよく日焼けしていた。

 柴田の汗のにおいに混ざって、異国の空気のにおいがする気がした。


「おれも寂しかったです。文渡さん、ちゅー」

「ちゅう……。ちゅ……ちゅぱ……んんぅ、そんなエッチなキス……」

「文渡さん、つかまって」


 柘植野が目を白黒させている間に、柴田は柘植野の脚をすくい上げた。玄関からお姫様抱っこで、ベッドに下ろす。


「文渡さんはおれがいなくて寂しかったですか?」


 柘植野のサンダルを脱がせながら、柴田は聞く。

 その目がギラギラしていることに柘植野は今さら気づいて、これから起こることに期待してキュンとした。


 柴田は柘植野のサンダルを玄関に置いて、手を洗って戻ってきた。


「ねえ、文渡さん」

「寂しかったですぅ……」

「エッチなことできなくてつらかったですか? おれはつらかったです」


 柴田はできるだけ優しく言うが、欲情を隠せていない。柘植野はものすごくドキドキした。


 初めて柴田とセックスしてから、週に5回のペースで身体を触り合っていた。7日離れただけでも、セックスを覚えたての柴田が限界になるのは仕方ない……。

 柘植野はそう考えて、早く欲情を全部ぶつけてほしくなった。


「僕も、とっても、つらくて……」

「つらくて?」

「それは……」

「1人でエッチなことしてたんですか?」

「うぅ……。してました……」

「どうやってしてたんですか?」

「えぇと……指を挿れて……」


 柘植野は恥ずかしくて、涙目で柴田を見上げた。


「よし分かりました、今からいっぱい挿れましょうね?」

「うん、いっぱい……んむぅ……」


 柴田は柘植野の唇にしゃぶりついて、部屋着をたくし上げ、胸に触れた。

 柘植野の声は、唇をふさがれて聞こえない。


「ぷは、優さん、我慢できない……!」

「何を我慢できないんですか? おれバカだからちゃんと言ってください」

「バカじゃないですってば! ナカ、ぐりぐりされたいですぅ……っ!!」

「はー、えっちで大好きです」

「僕も……大好きですぅ……」


 表情がとろとろになった柘植野の下着とズボンを、柴田はまとめて脱がせた。

 柘植野は素直に脚を開き、柴田はたまらず、ローションが温まらないうちにそこに触れた。


「……ん? 文渡さん? なんでこんなやわらかくて……これ、ローション?」

「あ、それは……」

「まさか……!」


 柴田は最悪の想像をした。

 自分がたった7日留守にしたその間に、文渡さんはもう別の男に抱かれて……!?


「これは……! さっきも、お尻切なくて、1人で……」

「あー今すぐ指挿れてあげますからね、これでもう切なくないですね?」


 柴田は安心したが、恋人がえっちすぎるので下半身に加えて脳もイライラしてきた。


「ひゃぁん! アッ、ごりごり、だめぇ……!」

「ごりごり好きですよね?」

「しゅき、しゅき」

「指増やしてごりごりしましょうね……。あー、2本入っちゃった」


 柘植野は意識が飛びそうになりながら、必死に腕を伸ばした。柴田の股間を両手で包み込む。


「これ、ナカにほしい……!」

「もー文渡さん! せっかくほぐしてるのに!」


 柘植野はキュンとした。

 その瞬間に柴田の指が柘植野の弱点をぐっと押し込み、柘植野は1回目の絶頂に達した。


「ぁ……ぁぁ……」


 海老反りになって、てっぺんから戻ってこられない柘植野を、柴田はギラギラした雄の目で見ていた。


「は……はぁ……イっちゃった……」

「まだたくさんイきましょうね。ローション足して……と」


 柴田の先端が入り口にキスをして、一気に奥まで貫いた。


「ひゃあ!? めくれるぅ……ッ!!」

「痛い?」

「痛くない、きもちい……!!」

「おれもバカみたいに気持ちいいですよッ!!」


 愛しい人の熱い体温を感じて、柴田は恍惚こうこつひたった。

 れた人間の身体全部を自分のもので染め上げたい。なんなら印を付けてしまいたい。

 そんな本能に支配されながら、1回目の吐精をした。


 その間に柘植野は声を枯らすほどもだえ、股間がえるまで何度も絶頂していた。

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