第59話 口でする②

「ねえ、柴田さん……?」


 柘植野の裸の肌が柴田の太ももに触れる。

 そこで柴田は、柘植野がまだ達していないことにようやく気がついた。


 柘植野の身体つきに似て細身な一物いちもつを手で包む。


「アッ、うぅん……」


 柘植野が身をよじって、柴田にすがりつくように身体を寄せる。柴田の耳にかかる息が熱い。


「おれも舐めていいですか?」

「……してくれる? ちょっとでいいですから」

「最後までがんばります。それで飲んでみます」

「飲まないで。まずいから」

「人生経験ですよ。若者の好奇心を殺さないでください」

「まあ……確かに。じゃあ飲んでみてください……?」


 柘植野はあぐらをかき、両手を後ろについた。


 柴田は思い切って柘植野のものを口に入れた。

 慎重に飲み込もうとするが、思っていたよりもずっと難しい行為だった。


 口を思い切り開けないと歯を当ててしまう。

 男同士だから、歯が当たったらかなり嫌だというのは分かる。分かるが、がんばっても当ててしまっていちいち申し訳なくなる。


「柴田さん、口つらいでしょう、手にして」


 柘植野に言われる。

 柴田は、「また童貞扱いするんだから」という気持ちと、「口の方が気持ちいいのに柘植野さんは本当に優しい」という気持ちで引きかれた。


 大きく開け続けたあごが本当につらい。口を離して、手でしごきながら竿を舐め回した。


「あー、柴田さん、とっても上手……! きもちいよぉ……」


 幸い柘植野は非常に感じやすい身体だった。柴田のぎこちない舌使いでも悶絶もんぜつするほどに感じている。

 柴田は若干引いた。どんな開発をすればここまで敏感になるんだろう。


「柘植野さん、イけそう? 無理そう?」

「イっていい? 口に出していい?」


 ウルウルの涙目でおねだりされた。

 柴田はズギューンと心臓を撃ち抜かれて、もう一度柘植野の先端を口でおおった。


「ほんとにいいの? もうむりぃ……あァァッ!!」


 柘植野の熱い液体が、柴田の口に吐き出された。


「は……は……柴田さん、ティッシュ」

「ありがとうございます……。飲んだけど、もう飲まなくてもいいかなって思いました」


 柴田はビールを飲んだときよりもさらに嫌そうな顔をした。


「そうだよねぇ!? ごめんなさいね柴田さん……。気持ちよかった……。大好きです」

「おれも、大好きです」


 2人はしばしキスを交わした。


「……あれ? 柴田さんに初めてフェラしてもらうのは素面しらふのときって思ってたのに! なんで止めてくれなかったんですか〜!」


 柘植野は、柴田の胸板に顔をうずめてなげいた。


「いや、大丈夫ですよ。きっと記憶は残ります」

「うん、そうですよね。そんなに飲んでないし絶対大丈夫」

「……どれだけ飲んだか覚えてます?」


 すりすりと甘えてくる柘植野の頭をでながら、柴田はある確信を得た。


「柘植野さん、セックスするとき、上ですか? 下ですか?」

「えっと、それは、第一希望は下だけど、柴田さんが下やりたいなら、上をがんばりますから」


 柘植野はおろおろして、弱気なガッツポーズをして見せた。


「おれは上がいいです」


 柘植野は頬を真っ赤に染めて、いきなりぶちゅうとキスをした。


「酔っ払い柘植野さん、おれあんまり待ちたくないです。泊まっていいですよね?」

「ふぇぇ……。そんな……。朝は朝で眠くて記憶飛ぶから……」

「そんなッ……!! おれはすっごくすっごくしたいのに……!!」

「柴田さん、ちんこデカいですよね」

「え? 柘植野さんが言うならそうでしょうね」


 柴田は急に話題を変えられて、微妙な顔をした。


「その辺で売ってるゴムじゃ合わないかも。明日ゴム買いに行きましょ。アダルトコーナーデートです」


 柘植野はニコニコして、柴田の頬にちゅっとキスをした。


 柴田は「アダルトコーナーデート」という響きにはあまりウキウキしなかった。

 でも柘植野が嬉しそうなので、愛しくなって抱きしめた。


 そういえばおれ、アダルトコーナーに入ったことないな。

 もしかして、柘植野さんをもっとえっちにするあんなものやこんなものが……!?

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