第23話 鉄壁
早くも土曜になり、駅前。
俺と大井先輩は密会のごとく待ち合わせをしていた。
「あぶあぶ…姫路さんからライニャ(全国的に流行ったメッセージアプリ)で連投されてたから音速返ししてた」
「ははは。愛されてるね~」
「返すの遅れると急に現れるからおっかないんだけど」
「彼女の行動分析凄いよね」
「ええ。俺の行動範囲と行動・言動から予測して、統計取ってるらしい」
「うちはそこまで頭良くないし真似できないや」
「真似されても困る。ただでさえ先輩には俺の生活筒抜けなんだからさ」
「ふふ。そういえばサッキーちゃんにも連絡入れといたから安心して」
「ありがとうございます…ってかいつの間に連絡取ってたのか」
「彼女顔広いでしょ?うちのサークルでも連絡先知ってる子いてさ」
「なるほど…仲良くしてるならいいですが」
「それなりかな?うちがサッキーちゃんの恋路を応援する体で祐君のことを教えてもらってるフリしたり」
「なんと悪い女だ…サッキーみたいな純情な子を」
「その悪い女に惚れて何股もしてるのは悪くないのかな?」
「何も言えないです。すみません」
「いいのいいの。うちは祐君の全部を知った上で好きだから。他の子はそうじゃないかもだけど」
真相を知られたらどうなることやら。
姫路さんは恐らく二度と外に出してくれないだろうし、サッキーはその場で倒れるかも。
刺されるで済めばいいなぁ。
「それはそうとして。そろそろ後輩ちゃん来るよ」
「了解です」
どんな子がくるのか楽しみだ。
事前に攻略法は見ているが、見た目の写真はまだもらってないからね。
だんだんと近付いてくるの後輩の姿が分かる。
見た目からするとまさに幼いというのが第一印象。
身長は出会った女の子の中でもかなり控えめで140少しあるかないか判断に迷うレベルだ。
それに加えて化粧を覚えたてなのか薄いアイライン程度にしており、ショートボブの茶髪もあまり遊んでないのが幼さを助長させる。
パッチリとした二重で少し緊張している面持ちはまさに小動物系女子というのが当てはまるだろう。
服装は多少のフリルがある薄緑のワンピースで、丈は清楚感を出すためなのか少し長めだ。
彼女の身長だと調整が難しいかもしれないが、そこは足元まで配慮しているようで不自然さは薄くしてある。
あまりアクセサリーは付けない主義なのか、手持ちの小さなバック以外に目に入るものは無い。
全体的に見てもまだまだ中学生か高校生と言われてもおかしくはない可愛いを全面に押し出したようなファッションであった。
「やぁ。秋ちゃん。時間通りで何より」
「はい。夏先輩。来ましたけど、この人が?」
「うん。うちが見込んだから間違いないよ」
「確かに…夏先輩は男性に厳しいですし、信頼はできるかもです。見た目はまぁ…はい、平均だなって思いますが」
おいおい。まだ俺とも話してないのに評価してくれちゃって。
「あ、ども。安達って言います。一応料理をそれなりにできるようになりたくて栖川さんの話を聞いて」
「ども。夏先輩から聞いてると思うので大丈夫だと思いますが、自分そこまで上手くないですよ?普通に料理教室行った方が良いかと」
ガード固いな。これでこそ攻略のしがいがある。
「いやいや。ガチでやるというより、一人暮らしでそれなりに食べられればいいなーくらいの温度感だからさ」
「そーなんですね」
あらあら、素っ気ない。
「まぁまぁ。とりあえず秋ちゃんの家行こうか」
「えっ、栖川さんの家でやるの?」
「他にどこがあるのさ。うちの家は調理器具無いし。祐く、安達君の家なんか女の子連れ込めないでしょ(色んな意味で)」
「た、たしかに…でも栖川さんはいいの?」
「まぁ。夏先輩いますし、変なことしたら警察呼ぶので良いかなと」
ほー?こりゃずいぶんと警戒されてるぞ。
「特にしないよ…」
うんうんと先輩は頷く。
「大丈夫。安達君は顔の通りヘタレだから。チェリーっぽいでしょ?」
「そうですね。安心しました」
先輩がそれ言うのかよ。
「まぁいいです。夏先輩も安達先輩も付いて来てください。自分の家そこまで離れてないんで」
了解と俺らは後輩の後ろを歩いて行った。
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