第20話 『見てるし、聞いてる』

『あー。これかぁ…とりあえず相関出しときゃいいか。でもそれだけだと結果薄くなるしなぁ』


『とりあえずt検定も混ぜておこう。最低ラインはまぁこれで…』


今日もレポートまとめてるの偉いね。


あ、お菓子食べてる。可愛い。


うちはここ数日の祐君を独り占めしていた。


協力者のおかげで『クマの目』から、『充電器の耳』から得たものだけど。


バレなきゃ犯罪じゃないって言葉はまさにそうだと思う。


祐君の声に一目惚れじゃなくて一聞き惚れしたのもあって見た目も気になってたところは正直あるけど。


かなり好みな顔してるし、スタイルも好き。


今まで会った男の中でも一番上だ。


そもそもリアルであんまり交流持たないし言えないけど。


同じお菓子を口に運びながら彼の一挙手一投足を眺める。


何て幸せなんだろう。


とにかく愛おしい。


声にハマるとその人のことを盲目的に想ってしまうのは分かる人いるんじゃない?


うちは謎の言い訳をしながら4日目の映像と音声に切り替える。


1週間分の映像と録音をPCで合わせたり、編集して見やすくした。


これをスマホに転送していつでも祐君と一緒なのだ。


『さて。大井先輩をどう堕とすかなぁ…俺に惚れてそうなのは分かるけどいきなり会うのは無理そうだし』


イケるよ。即会える。


『とりあえずはチャットと通話で仲良くなってから…それであれだ。ゲーム内の結婚予行練習とかで気を持たせておこう』


最高じゃん。結婚システムのための指輪二人分課金しとこ。


『で、これくらいをメモしておいてと。明日に備えて寝るかぁ』


どうも彼はメモをする習慣があるらしく、独り言で内容を整理する癖もある。


そのおかげで色々分かったこともあるし良いんだけど。


まず、祐君は彼女はいない。


ただ、少し気にかかるのはもう既にヤンデレ化させてる女の子がいることだ。


とてもとても羨ましい。うちならすぐ堕ちたのに。


ってか、堕ちてるよ犯罪してる時点で。


まぁただ。うちを堕とすために分析やらデート場所やら一生懸命まとめてるのは本当に嬉しい。


それと祐君の意向に沿うために、女だとバレてないはずと思いこんでるポンコツ先輩を演じよう。


祐君の嬉しそうな顔を見たいし、それに…


うちがカウンターパンチをした時が楽しみすぎる。


彼がうちを堕とす計画を7日かけてしている間、うちはいかに彼が満足するかを盗撮&盗聴したモノを元にして計画していた。


ーー


「リーダーさん。1週間経過したので充電器返しにきました。クマはアロマ効果良いのでもう少し借りていいすか?」


「お?いいよいいよー。アロマ勉強に効くっしょ?これ人気やからさ」


そう。俺はサークル部屋でリーダーさんと話しながら思っていた。


部屋で余計なことを考えないで集中できるというか、何となくぼーっとできた。


「あ、安達君。クマだけど、枕元に置いても効能あるんだよ。安眠というか…?あとたまに抱きしめてあげたり、目を見て詩的なこと言うと願いが叶ったりとか」


「お、そうなんですか。ちと試してみます。あんまり願掛けはしないですけど、今はその…叶えたいことあるので」


「いいねぇ。ぜひしてあげてくれい。喜ぶよきっと」


「ん?喜ぶ?」


「あ、いや!クマも大切にしてくれてるとさ!喜ぶかな?って!」


「あー。そういう。物も大切にすると云々ありますからね」


「そそ!早速今日からね!」


「了解です」


俺は大学から帰宅し、寝る前に先輩の言うとおりのことをした。


叶うと信じて、クマを抱きしめて好きだよとかキスしてみたりとか。


とりあえず叶えて欲しいことは一通り。


毎日していたら習慣化していたのは内緒。


この映像を見て悶絶していた女性がいたそうだが、それはまた別の話。

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