第12話 木漏れ日

時は進み、またもや大学。


俺は最近の甘い出来事を脳内処理しつつ、ヤンデレ本を改めて読解していた。


続いて挑戦するのは『自傷型』。


一概に分類分けするのも野暮かもしれないが、ニュアンスの違いでメンがヘラるになるかもしれない。


が、相手を想うがあまり、欲求を満たせない際に相手より自身を傷つけざるを得ないという一種の自己防衛のような強迫観念もあるそうだ。


そのようなタイプはグループで動きがちな傾向があり、比較的人格者が堕ちやすいとのこと。


普段から周りに気を回してるだけあって、知らぬ間に自身を抑え込んでるってわけだ。


姫路さんとは真逆なタイプの子を狙ってみたいという欲求が成長中なため、まずはそういう子がいるサークルを探してみよう。


講義の合間に俺は学内掲示板で情報収集を始めた。


なになに。お酒好きなみんな集まれ飲みサー…


こんなものがあるのか。


何となくイメージ的に表向きは普通の活動だけど、裏は飲みサーみたいな感じだと思っていただけに少し驚き。


ストレートに飲みメインの活動って書いてる。


物色しているとちょうどチラシに体験入会と書かれていることに気付く。


なるほど。これで潜入できそうだし、飲みサーとかいかにもだ。


決めたところで早速その日の講義を全て終えてからサークル場所へ向かった。


「おっ!体験希望?うぇい!いいよいいよ!きな!」


「あ、はい」


何とまぁこれぞウェーイ系を体現したような。


高校の生徒会室のような風貌のサークル部屋に通された俺はそこにいるメンバーをちらりと見る。


チャラそうな人がほぼな印象。


落ち着いた髪色の人も何だか蠱惑的。


「うし!みんな!体験希望の子が来たぜ?よろしくしよーぜ!うぇい!」


「お?いいじゃん~」


「それなー。楽しんできー」


「男の子じゃん!あがるー!」


三者三様というか。


「とりま!自己紹介的な?的な的なやつなのしとく?」


なにこのノリ。


「あ、はい。僕は安達祐と申します。お酒は人並みですが、飲み友達がいないのでこちらで交流出来たらなと思い、お邪魔しました」


「うぇーい!めちゃ真面目くん!」


「わかる~。なにうちらと合う?大丈夫?」


「大丈夫だよ!ほら、あたしら来るものこば、こば、…だし!」


動機をそれっぽく言っただけなんだけどな。


「よっし!なら早速だけど、サークルの決めごとだけサクッと言っとくわ」


リーダーっぽい男性がニコニコ笑う。


「うちのサークルではその、なんだ…よくネットであるようなアレな目的は基本NG。大学の方針でもあるし、下手したら退学だしな。それに就職にも影響が出る。ノリはこんなんだが、決めるとこは決めておくってわけ」


なるほど。そのあたりはしっかりしてるんだな。


SNSでよくあるちょめちょめサーではないのは安心だ。


「でもあれよ?サークル内恋愛が禁止ってわけじゃねーから。そりゃ二人が好きになったらもうお好きにどうぞ!って感じ。縛りはせんが、あんま部屋でいちゃつくなら」


「…なら?」


「俺が気にくわないから外でやれって追い出す!」


リーダーさんはシュッシュッとボクシングをするかのようにパンチを繰り出す。


寂しいのね…分かるよリーダーさん、俺も彼女いないから。


姫路さんは別とする。


あの子は堕とした子だから。


「まぁあれだ。好きに酒好き同士楽しくやろーやの方針で締めるとこ締めるってだけ分かってればそれで良い。アダッチもおーけー?」


安達だけにアダッチか…距離詰め激しいな。


肩組んでくるし。


「おーけーです。ちなみにですが、僕が一番年下ですよね?」


「お?そうかもな。俺は3年だし、あいつらも3年。あ、でもサッキーは2年だから一緒くらいじゃね?」


「サッキー?」


リーダーさんが手招きするとサッキーと呼ばれた子がちょこちょこ寄ってきた。


「なになに?」


「んーにゃ。アダッチのタメはサッキーくらいかと思ってさ。タメなら気安いだろ?仲良くしてやってくれ」


「おけまる!あたしに任せろ!」


にっこにっこで明るい人だ。


俺が入室したときからヤジを飛ばしつつも気遣ってくれてたような人だったはず。


光属性と言うのが当たりそう。


「あたしは笹木春香ささきはるかって言います!安達君…いや、アダッチ…んー…言いにくいからゆうって呼び捨てでもよき?」


なんとまぁ。陽キャって下の名前で呼ぶのに抵抗がないんだね。


「大丈夫です。俺は笹木さんでいいかな」


「おー?どうせならサッキーか下の名前がええにゃー!」


「馴れ馴れしくない?」


「いーのよ!それに別に呼ばれたからって意識することとか…な、ないし??」


え、なにツンデレ?


「ならまぁ…春香で」


「おけまる!じゃあさ…」


一気に話の花が咲き始めた春香を見て、何だかまた違う青春を感じた。

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