第9話 待ち合わせ
約束の日。
俺は駅前に11時に到着していた。
この日まで毎日そわそわしてたのは言うまでもなく。
講義中にも当日どうしようか、服装はラフ?着飾る?等々。
女の子とデートするにはまとめのようなサイトを見てみたけど、参考にしていいの?って印象のブログばかり。
最終的にはまぁ等身大の自分+気遣いで行くかと結論付け。
待ち合わせの時計台に向かうと、既にそこには見慣れた少女がいた。
「(かっわ…いい)」
俺は遠目から見ても可憐な姫路さんに近付く。
周りを見ても男女共に姫路さんをちら見して通りすがってるようだ。
綺麗な黒髪をポニーテールにまとめて、上は白を基調とした七分袖のシャツ。
身体のラインは少し隠してるようだが、全体像は女性らしさを感じるように思える。
スレンダーな彼女はむしろ露出が少ない方が魅力的だ。
下は同じく白を基調としながらもロングスカートの全体に紺色の刺繍が散りばめられて見た目の清楚さを際立たせる。
顔を見ると薄化粧ながらもアイラインと唇に目が引かれるくらいには整えている印象。
小さな彼女の顔立ちにぴったりな二重と少し緊張した面持ちはまさに庇護欲を刺激される。
明らかに誰かを待ってるかのようにスマホをしきりに操作して、カメラアプリか何かで髪を気にしているところが愛おしい。
そんな姫路さんにゆっくりと声をかける。
「あ、えっと。こんにちは。早いね」
「あ、安達君…!こんにちは!」
ほんのり裏返りの声でこちらまで緊張する。
俺はどもりかけたわけですが。
「いえ!たまたま早く着いただけなので…安達君も早めだったんだね」
「一応ね。遅れるわけにはいかないし、それにその…楽しみだったから」
「あ、うん…そうだね…私も楽しみで…おそろいだね…?」
お互い緊張しつつも楽しみが抜けないのか、微妙な笑顔のような何かをしていた。
「それにしても姫路さんの服装すごく可愛い。上下白で統一してると思うけど、刺繍がワンポイントっぽくてお洒落だ」
「ありがとう…!嬉しい…うん、あんまり上手く着られるか分かんなかったけどお気に入りで」
本当に嬉しそうに顔を隠しつつこちらをちら見してくる。
何だこの可愛い生き物。
「センスが良いもんね。姫路さんの清楚感にぴったりだし、俺も好みなデザインだよ」
「えへへ…そんな褒めてたら勘違いしちゃいますよ?」
「是非とも勘違いのままでお願いいたします」
俺は冗談っぽく敬語で返す。
「…分かった」
声のトーンが変わった気がしたが、まぁ気のせいだろう。
「遅れちゃったけど、安達君もカッコ良くしてきてくれてありがとう!大学の時はラフで可愛いし、いつも通りも良いんだけど…今日は少しシャキッとしてて、ドキドキしちゃうかも…」
「え、あぁ!ありがとう…そんな大したものじゃないけど」
「ううん!似合ってる…私シャツ好きなんだけど、白シャツに羽織ってる黒の上着も良いし、チノパンも少しオーバーサイズで真面目すぎないのも出してるから…バランス良くて緊張しないもん」
すごく褒めてくれて自己肯定爆上がりだけど、大丈夫か今日。
「照れるよ…ま、まぁうん。行こうか」
「う、うん…」
いつまでもお互いを褒めちぎってても楽しいが、今日はお出かけだからね。
俺達は軽くこの後の予定を確認し合いながら、目的地まで向かうことにした。
視界の端で、姫路さんが俺の手を取ろうとしようか迷ってたのはあえて気付かないふりをしていた。
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