第8話 積み重ね

姫路さんと勉強をする日々を過ごしていると、やはりというか距離が近くなってきた。


初めこそ、講義の合間の時間に予習していただけだったが、だんだんとお互い講義終わりにも残って復習するようになっている。


良い傾向だ。


単純に可愛い子と一緒にいられるのも役得だし、試験対策にもなるし、それでレポートの完成度も上がる。


一石二鳥どころか三鳥ってやつ。


今日もお互い講義終わりに空き講義室で集まっていた。


「姫路さんって前まで大体早く帰ってなかった?俺に付き合ってもらってて良いの?」


「うん。私在宅バイトしてるから早めに帰ってたの。でも安達君とこうして勉強してるのも大切だなって…バイトは出来高制だし、強制じゃないからね」


なるほど。どうりでか。


「そっか。俺もこうして勉強する機会もらえてるから助かってる」


「いえいえ。こちらこそです」


お互いかしこまりながら笑い合う。


「姫路さんの時間があればでいいんだけど、お礼がてら今度どこかご飯行かない?昼でも夜でもどっちでも」


「え、そんな悪いよ…でも、お誘いいただいたのは嬉しいです。そうだなぁ…今度の土曜はどうかな?」


「ありがとう。俺は大丈夫だよ。どうしようか、昼からにする?」


「うん。お昼ご飯にしよう!せっかくの休みだし気晴らしも込めてね」


微笑みながら、姫路さんは少し饒舌に乗ってきてくれる。


何というか。


儚い系で控えめな子がテンション高くなるの可愛いな。


「了解。なら今度、駅前に11時半集合でしておこうか」


「分かった!何だかデートみたいだね!」


「たしかに…デートにする?」


「…えっと、うん…します」


姫路さんは顔を赤くしながら俯く。


俺も途端に意識してしまって、顔が熱くなるのが分かる。


冗談に乗ったら本当にデートになってしまった。


嬉しいのと恥ずかしいのと緊張で手汗が酷い。


「そ、そっか。俺は女の子とデートは初めてなのでお手柔らかに…」


「あ、そうなんだ…私も男性とは初めてなのでよろしくお願いします」


お互い初めてと知り、またもや赤面。

 

時間が進むにつれて、窓から差し込む日差しが影を映す。


昨日よりもお互いの影が重なり合うようだった。


どうにも甘酸っぱい雰囲気が漂う中、俺達は復習するという名目で日が落ちるまで一緒に過ごした。





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