第6話 ヤンデレ本

数ヶ月後。


俺は例の『ヤンデレ本(略した)』を毎日帰宅後読み漁り、ある程度コミュニケーション的な技を頭に入れた。


本当にこれで女の子に好きになってもらえるなら試す価値あるもんな。


彼女欲しいし。


だが、早まる気持ちを抑えて、実践の前に復習がてらレポートとして記していく。


まず、本にあったのは慣れるまで『1人でいる子を狙うべし』だ。


ヤンデレ化させるのに慣れたら群れている子でも良いらしいが、最初は1対1での対応をモットーに。


人との関わり方を学ぼうとあるため、それ通りにしていくのがいいはず。


そこで、1人でいる子がなりやすい『拘束型』の項目から勉強し始めた。


拘束する=自分だけを見ていてほしい。


そんな欲求を刺激することでこちらに依存させられる…らしい。


環境起因にしろ、性格起因にしろ、独りの時間が多い子にとって拠り所とも言える恋人の存在はかなり大きくなるとのことだ。


具体的な堕とす方法としては、いくつかあるがやりやすいのは同調・傾聴に加えて物理的に一緒にいる時間を増やす。


同じ学科の子を狙う場合、協力してレポートや実験をすることが多いため、比較的自然にコンタクトを取りやすい。


また、相手が勉強に対して真摯だとより良い。


勉強に前向きな人間は同じように勉強に励むように接している者に対して好印象なはず。


それが自身へ好意的に接する者なら尚更だ。


ということで、同じ心理学科で俺と同じように数人しか知り合いがいなさそうな子をターゲットにしてみよう。


学科内では週1で統計を取るための実験演習講義があるんだけど、その時に履修してる人は大体集まる。


そこを狙ってく。


グループかもしくはペアでとりあえず課題をこなせば良いから、仲良い人らはすぐ始めるし、俺みたいに余り者は似たような者同士で固まるわけだ。


演習が始まり次第、周りをざっと見渡して、いつもペアで静かにしてた女の子が1人になってるところを見つけた。


よし、あの子にしてみよう。


ヤンデレ本のおかげか普段なら絶対できない声がけもすんなりできた。

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