馴れ初め(本編の前日談)

第5話 非日常の始まり

「(もう2年か)」


外は雪。

気温も低くなってるし、防寒しないとまともに室内でも動けないくらいのやつ。


大学1年通って初めての冬はどうにも俺のやる気を減らすために働いてるらしい。


いいんだよ、サボっても。


4月に大学2年になる俺こと安達祐あだちゆうは講義室で来年の選択科目をどれにしようか思案していた。


因みに心理学専攻なのです。


文系なのに統計学やら統計分析が必要になるから、理系くさい勉強なんだよなこれが。


やれ、有意差が~とか中央値が~とかね。


つらい数字見るの。


そんなこんなでまったり講義を受けつつ、履修登録をするというマルチタスクを終えた俺は、必修科目の心理学レポートの文献を探しに図書室に向かった。


「(さて、課題は社会と購買意欲の相関関係について…か)」


俺は自分の興味がある分野ならそれなりに探すようにしてるが、今回みたいなのはそこまでな…


与えられたらそれとなくやるので、『し』から始まる棚を眺めてると近くに気になるタイトルを見つけた。


『思考をヤンデレにしてみることで得られる一途さ』


なんだこれ。


よくわからんが、これはあれか。


浮気心ある人向けだな?さては。


俺は今の今まで彼女なんて無縁の人生だったし、関係はないんだが…


とりあえず恋愛のれの字も分からんのもあるし見てみよう。


ぺらっと中身を見てみると本当にこんなので?というコミュニケーションの取り方が書いてあった。


「(押して、押して、少し引いて、放置。相手から来たら押しまくる。依存先を自分に向けることで相手がヤンデレ化するかどうか見極めます…か)」


うーん。心理学をかじり始めた段階なのもあるけど、これで上手く行くなら誰でも彼女できるだろ。


半信半疑のままとりあえず、受付の方に貸し出し許可をもらって、帰宅した。

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