第3話 夏の日陰は隠れ蓑:大井夏美の場合
『情報収集メモ』
大学3年生 情報学専攻
黒髪ミディアムヘアのインナーカラー赤
小顔 一重
Aカップ 162cm 53kg
情報社会において知っておくべきことは多いに越したことはないと専攻
理系分野は得意ではないが、将来IT業界での仕事をできたらと思考中
趣味はアニメ鑑賞、ゲーム(ネットでは男性キャラを使用している)
※交際する異性のあらゆることを監視・録音・把握したがる
→ここのメモだけ筆跡が違う
ーー
続いて3人目のレポートだ。
不測の事態で2人目に半強制彼氏にさせられかけて1週間後。
俺はここまで同年代の子にターゲットを絞っていたことに疑念を持っていた。
このままだとヤンデレ化できるのは同い年だけでは?と。
そこで、2人目の人脈を使い、大学の各サークル内で有望株を見つけることにした。
もちろん、女の子を見つけることは言っていない。
これまでの行いで1人目には帰宅時間を縛られ、2人目には交友(異性)を縛られているため、行動可能タイミングは少ない。
そのため、オンラインで効率的に堕とせないかと考えた結果、功を奏した。
少し特殊だが、例に漏れず堕とした後に彼女とオフ会した時のことを記そう。
『よう。
『おうよ。黒髪にポニテ男子とか女入れ食い間違いないしな。
『んー…アバターでガチ恋されてもな。本人見てないのに何とも』
『何でだよ!それきっかけでオフ会からのちょめちょめできるかもしれんだろ!』
何故かチャットで騒いでる『彼』のアバターを見ながらコーヒーを啜る。
そう、今俺は『彼』とオンラインでマルチゲームをしている。
ジャンルはMMO風のオープンワールド日常系で、他プレイヤーと交流(結婚システム有)したり、敵と戦ったりとありきたりなものだ。
特別何かに惹かれてるわけではないが、『彼』がそれなりにプレイしていて、基本インしてることから交流ツールとして使っている。
『ちょめちょめねぇ…お前それ女の子に伝えてみろよ。引かれるどころか通報だぞ』
『通報上等。黒紅様は重課金ユーザーだからBANはされないのだ』
そうだね。
過疎ではないが、繁盛もしてない系のゲームだと一部のユーザーの課金で云々は聞くし。
『彼』はバイト代のほとんどをこのゲームのアバターに使ってるとのこと。
『それこそ夕はここで出会いとか求めないのか?結婚あるし、誘発してオフ会とか』
『無くはないけどさ。まだ何というか…ネットで知り合った人と会うのに抵抗あるというか』
『ほーほー。分からんでもない』
『だろ?まぁ、黒紅とは何回も通話してるしほとんどリア友感あるからいいけどな。大学同じなのも知ったし』
『え…それってお前』
黒紅のアバターがリアクションで寒がるように震える。
おい。
『狙われてる…?男同士なのに…?』
『ちゃうわ。あくまで会うならってこと。お互いノーマルだろ』
『すまんすまん。たしかにな』
『でもさ。同じ大学で通話もしてるのに会わないってのも何か違和感ないか?』
『おん?まぁ…たしかに』
黒紅は考え込むジェスチャー。
『今度待ち合わせしてネカフェでも行かないか?オフラインでゲーム持って遊ぶのも面白いと思うんだよな』
『…えーと。それはあれか。オフ会か』
黒紅は何故か焦ったようなジェスチャーでもじもじしている。
カッコイイ男アバターがキャラだからましだが。
『つながりがここだからまぁそうなるな。男同士だしそんな気にしなくても良いと思うけど』
『そうだな!うん。よし。今度!』
その後、適当に軽口を叩き合いながら、お互いログアウトしてお開きになった。
時は飛び、待ち合わせ日。
「(さてと。)」
俺は1人目に外出許可をもらい、午後から駅近いネカフェに訪れていた。
因みにだが、1人目の家に軟禁されかけた時、自身の家に戻る条件として、出かける際の行き先と帰宅時間を通告することを義務付けられた。
2人目に見つかる訳にもいかないため、事前にそちらにも男友達とゲームすることを伝えている。
2人目は同姓との交流は重視してるせいか、あまり探ってこないのは僥倖だ。
「えーと…夕…でいいのかな?」
「あ、はい。夕です。黒紅?」
「…はい。俺…が黒紅、です」
見た目からしてカッコイイジャケットとジーパンでお洒落系男子ここに見参といった風貌。
髪が長いのか、少しまとめて後ろに縛ってるところを見るにアバターと似せてるのかも。
「一応はじめましてだな。本名言っとく?」
「え?あー、そうね」
そうね?
ふーん。出てきたな。
「俺は安達祐。心理学専攻の2年」
「う、、俺は大井夏美。情報学専攻の3年」
「あ、先輩だったか。すんませんね」
「いや!いいんだよ!いつもの感じでいこうぜ!」
彼は俺の背中を押しつつ、誤魔化すように店に誘導していった。
個室のネカフェのルームに通され、俺らはよっこいしょと荷物を置く。
「それで。先輩はどんなゲームを?」
「うん…」
上の空気味な彼を横目で流して仕掛ける。
「まぁいいや。じゃあ俺から出すよ。嘘か真実かゲーム~」
「どういう??」
「これはですね。俺が今からある言動・行動をします。それに対して、先輩はイエスかノーで答えてください。ちなみに答えは事前に知ってるので嘘ついても分かるからな」
「なんで!予測できないだろうし、ソースないだろ!」
通話してたときのテンションに戻ったな。
「いやいや、当たってるかどうかは先輩が一番分かるはずだよ」
「うむむ…」
「よし、なら早速だけど。先輩は俺の声に惚れている。イエスorノー」
「はっ?そんなん…」
彼は少し赤くなりながら口を閉じてしまう。
「あ、黙秘した場合は罰ゲームとして脱衣してもらうので」
「なんだよそれ!恥ずかし過ぎるわ!」
「はい?男同士でそれは…密室で言われると生々しいんだが」
「うっ…冗談だよ」
よしよし。上手く誘導できてるな。
「はい、答えは?」
「い、イエス」
「よろしい。では、次。先輩は俺のことが『異性』として好きである。イエスorノー」
「はぁぁ!?お、お前!俺ら男同士だぞ!」
「回答はイエスかノーなんだけど」
「くっ…」
彼は顔を真っ赤にして俯いてしまう。
暗めなルーム内では少し扇情的に思えた。
「はい。黙秘ね」
俺はそう言うと、彼のジャケットを脱がしにかかった。
「わーーー!なにしてんだよ!!」
「何って。罰ゲームだが」
「自分で、んっ…脱ぐ、よ…」
俺が両肩に触れたと同時に吐息をしながら、上を脱いだようで。
男の仮面はがれてますね。
「おーけー。それなら、次が最後の質問。先輩は『女の子』である。イエスorイエス」
「ちょっ…まさか…お前…」
そう。
元々俺は彼が女の子であることを知っていた。
というのもリークしていたし、チャットの中身を精査してたのとゲームサークルの人から情報仕入れてたからね。
「さて。黙秘でいいなら」
俺は彼女を優しく押し倒し、シャツを脱がし始める。
「んっ…ね、ちょっと。だめ!あう…」
先輩は最初こそ抵抗していたが、すぐに俺に委ねるようにジッとし始めた。
「ほら。やっぱり先輩女の子だ」
「もうお嫁にいけない…」
先輩の名誉を守るためにあらかじめ部屋を暗くしておいてよかった。
胸周辺を完全にさらけ出させると、控えめながらも確実に女性として示すなだらかなものがそこにあった。
「先輩。もしかしてMだったりするの?されるがままだけど」
「ち、違うよ…その、祐君だから、されたいなって…」
いじらしく顔を隠しながら震え声で照れる彼女。
「なるほどー…そんなに想ってくれるならいいよね?」
「…」
黙秘は罰ゲームを分かってるってことだ。
俺はしばらく無抵抗な彼女に上から覆い被さって、その華奢な身体を撫で回して堪能した。
「ん…あっ…うぅ」
時折甘い声が出ているのはとても背徳的だ。
普段、ゲーム通話してるときの男声ではなく、明らかにこちらを好意的に捉えている女の声。
目の前の光景と今まで記憶していた彼とのイメージ乖離が激しく、既に我慢の限界だった。
「因みに…祐君」
「ん?」
俺はそろそろ武装準備をしようとしてたときに声をかけられ振り返ると。
『よし。今日はヤンデレ1号に連絡入れて、2号はこれでいいか。あの2人さばくのも慣れてきたな』
『雪と夏美って名前で呼ぶ方がいいのか?いやでもなぁ…同じ大学で会ったときに呼んだらまずいし』
『3号。待ってろよ先輩。堕としてやるからな』
「これ。ふふ。『聞いちゃった』」
やばい。
何がってこれが全て俺の部屋での独り言であること。
「祐君が他の女の子にモテるのは仕方ないし、まぁそうだなーってなるんだけどさ」
彼女はニコニコとしながら、俺を押し倒してくる。
「うちは『全部知ってたよ』」
そこからは記さないでもいいだろう。
武装準備していた物は全て無くなり、ネカフェの閉店近くまで一緒の時間を過ごすことになった。
ネカフェ後のアフターを回避するため、複数の監視カメラと録音機材を部屋に設置することを条件に解放された。
安達祐、監視完了
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