第4話 秋は安楽、怠惰の時期:栖川秋の場合
『情報収集メモ』
大学生1年生 社会学専攻
茶髪ショートボブ 二重
Cカップ 142cm 45kg
フィールドワークや行動範囲を広げる分野での専攻をしたいと選んだ
楽しそうというだけで、選んだので深い意味はない
趣味は観光地散策、温泉巡り
※交際する相手を自身に依存させるためにあらゆる手を尽くす
→ここのメモだけ筆跡が違う
ーー
4人目ともなると慣れてきた。
3人目で本当の意味での生命力を奪われてから2週間後。
俺は年下の後輩を求め、学内を調査してたところ偶然にも3人目から紹介される。
3人目いわく、どこの馬とも知れない奴よりはまだ知人の方が良いとのことだ。
何故後輩が良いと知っていたのか。
それは盗聴されていたからであろう。
あちら二人は高校の先輩後輩の関係ともあり、コンタクトは取りやすかった。
ただ、懸念としてこの子が一番堕とすのに厄介であった。
これまで通り、堕ちたところから記していく。
「へぇ。祐先輩ってこういうの好きなんですね」
「うっ…大井先輩から聞いたのか」
「えぇ、まぁ…」
彼女と大学の空き講義室で密会しながら、お話をしていた。
主に俺の好きそうな女の子のグラビア画像を見ながら。
「祐先輩の好みを聞かされ続けるこっちの身にもなって欲しいんですけどね」
ちらりと彼女は別の画像を目で追いながらため息をつく。
いや俺も何が嬉しくて後輩に性癖共有せねばならんのだとは思っている。
「それは大井先輩に言ってくれ。俺は別に…」
「はいはい。いいですよ。自分はできる後輩なので祐先輩の好みくらいにはなれますって」
そう言うと、彼女は隣同士に座ってた位置から俺の膝の上にちょこんと乗ってきた。
おいおい。
武装準備できちゃうから止めてくれ。
「祐先輩はこういうことされてみたいんですよね?女の子に乗られてさ。少し上で動いてみたら…ほら?」
ぐりぐりと下腹部を刺激されて、ある一点は元気を取り戻している。
「ふふ…ね?祐先輩素直です」
「小悪魔か…分かってやって…んっ!」
急に彼女は俺の顔まで急接近すると、一瞬で唇を合わせてきた。
女の子特有の香りと優しくも少々強引めな奪われ方に身体が震える。
「何か?自分、こうみえてけっこう相手に尽くすんです。だから、祐先輩のしたいこと…言ってくださいよ」
彼女は俺の目をじっと覗き込みながらゼロ距離で囁く。
こんなの好きにならない方が難しい。
「いやその。大井先輩からどれくらい聞いてるか知らないけど…こういうことは付き合ってからの方がいいとは思うんだ」
何を言ってるやら。
俺は気恥ずかしさと攻められて弱気になったのかつい口走る。
「んー?こういうことしてお互いを意識し合うってのも一つの選択肢だとは思いますけど?だって実際に祐先輩…自分のここ、見てる」
彼女は俺の手を胸部に運びながら嬉しそうに告げる。
やっぱりそこを見てるとバレるものか。
「うっ…仕方ないだろ。良いもの持ってるんだし」
「あはは…褒められて悪い気はしないですね。なら、ご褒美に…んっ」
彼女は俺の両手を胸部に無理やり押し付けると共に、先ほどより強引に唇を合わせてくる。
彼女との合わさるところが多くなればなるほど意識せずにはいられない。
男の反応がピークになりかけたところで、彼女はゆっくりと元の椅子へ座り直した。
「え…っと」
「ん?どうしました?期待しちゃいましたか?」
くっ。この子は。
「いや。違うけど」
「説得力皆無ですね~じゃ、また」
彼女はフリフリと手を振りながら講義室から出て行く。
なんだこの急な淡白さは。
態度が急に変わった彼女にもどかしさを感じつつ、次の講義への準備をしてその日はいつも通りに終了した。
翌日、何となく例の空き講義室に向かうと彼女は椅子に座ってスマホをいじっていた。
「よす。暇潰しか?」
「あ、祐先輩こんにちは。そうですね。たった今暇じゃなくなったのでありがたいです」
にししと笑いながら彼女は隣に座れとジェスチャー。
「そうかい。俺が暇潰し相手になればいいが」
「なりますよ。少なくとも自分にとっては最高の時間なので」
嬉しいことを言うじゃないか。
「あ、そういえば。祐先輩お昼まだです?」
「ん?そうだな。もう少ししたら食堂に行こうかと」
ちょうど昼時ではあるが、ごった返しを回避するためあえて時間をずらしていた。
「ならちょうどいいです。どうぞ」
「え?弁当?俺にわざわざか」
「えぇ。作りすぎたので誰か食べてくれるかなー?と包んでました」
可愛らしいピンクの弁当箱を開きながら、見せてくる。
確実に男が好きそうなガッツリメニュー。
「ハンバーグ、玉子焼き、ポテト…俺の好物ばっかだ」
「それなら良かった。大体この辺は好きな人多いので外れはないかなと」
グッジョブ後輩。
「では、いただきます」
俺はパクパクと頬張ると、各おかずとご飯の相性に幸せを感じる。
「美味しそうに食べますね。嬉しいです」
彼女は少しうっとりしたように俺を見つめてくる。
「美味いからね。ありがたい」
「…ふふ」
彼女は食べている俺から目を離さなかった。
その後、1週間ほど彼女と不可思議な触れ合いを継続していた。
だんだんとその心地よさに支配されていっているのには気付かず。
『あ、祐先輩。お家の洗濯物とゴミ出しやっておいたので』
『お?サンキュー。助かる』
『いえいえ。通い妻ですから』
電話越しに彼女はふふっと笑う。
『何を言ってるんだよ…花嫁修行の練習なんだろ?俺がちょうどいいとかで』
『…まー。修行というか、予行というか。もうこのまま祐先輩の花嫁でもいいかなーとか』
『冗談でも勘違いするから止めておけって』
『冗談に聞こえてるならそれでいいです』
若干不機嫌になったように聞こえたが、気のせいとしておこう。
『それで。合い鍵渡してたけどいつ返却してくれるの』
『えー…返すんですか』
何で嫌そうなんだよ。
『そりゃそうだろ。あくまでお試し期間中の練習なんだから』
『はいはい。あと1週間待ってくださいね』
『何故…』
『秘密です』
1週間後。
彼女と大学の例の講義室で会うと、約束通り自宅の鍵を返却してくれた。
「ここしばらく修行になりました。ご協力感謝です」
「いえいえ。こちらこそ。俺の世話を何やら何まで」
お互いに椅子に座りながらおじぎをし合う。
「自分がしなくなったら祐先輩だめ人間になりそうですね」
「それはあるかもしれん」
半同棲状態だったここしばらくはたしかにとても助かっていた。
それこそ、彼女無しでは少し不安になるくらいには。
「まーまー。試用期間とはいえ、また言ってくれたら期間延長キャンペーンしますから」
「いやそれは少し申し訳ないな。俺のために自分の時間ほぼ使ってくれてたよね」
「もちろん。愛する旦那様ですから。尽くします」
そう。
彼女は俺の家に来たり、大学でもとにかく世話焼きをしてくれていた。
自分の時間があるのか?と疑問に思ってたが、全て俺に捧げてたらしい。
直接的に関係はまだ持っていないが、彼女との生活でモノにしたいと思わずにはいられない。
「感謝しかないけど…将来の旦那さんに少し嫉妬するな」
「…未来の自分に嫉妬してどうするんですか」
「…」
俺は何も言えず不覚にも頬が熱くなるのを感じる。
「…期間延長します?」
「…お願いするよ」
大学の講義が終わり次第、俺は彼女を家に連れ込み、その日の初夜を迎えた。
安達祐、婚約完了
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