#19 歌野晶午『密室殺人ゲーム王手飛車取り』

 歌野晶午といえば『葉桜の季節に君を思うということ』が圧倒的に有名ですが、『密室殺人ゲーム』シリーズも代表作の一つ。一作目の『密室殺人ゲーム王手飛車取り』は本格ミステリ大賞の候補に、二作目の『密室殺人ゲーム2.0』では同大賞を受賞しています。


 あらすじとしては、ネット上で集まった五人が推理ゲームをするために、それぞれ実際に殺人事件を起こしていくというもの。殺人の動機はなく、犯人もわかっているので、推理しなければいけないのは「ハウ」の部分だけ。推理クイズのように次々と不可能犯罪が行われ、トリックが開陳されていきます。


 と、ここまでの紹介で受けるであろう印象は、見事なミスリードになっています。ただの推理クイズ本だったらこれほど高く評価されるわけはないのです。終盤に進むにつれて予想外の展開があり、綺麗に騙されてしまいます。


 とりあえず密室トリックだけを取り出して言うなら、お気に入りは新興住宅街の「やすらぎの丘」での事件。最新の監視システムが完備され、絶対に中に入れないと思われた家の中で起きた殺人事件です。殺人の動機が「密室トリックでみんなを驚かせたい」だからこそ実行できた破天荒なトリックです。


 続編の『密室殺人ゲーム2.0』も必読です。一作目を読んだ後で読むのが絶対におすすめ。シリーズ最終作となる三作目の『密室殺人ゲームマニアックス』は全二作ほどの衝撃はありませんが、やはり小気味良くトリックが出てくるので楽しい読書ができます。


 次回は、このミステリーがすごい!大賞の文庫グランプリを受賞した鴨崎暖炉『密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック』です。

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