#17 北山猛邦『『クロック城』殺人事件』

 2003年にメフィスト賞受賞作『『クロック城』殺人事件』でデビューした北山猛邦は「物理トリックの名手」の異名を取るほど、近年では珍しく物理トリックにこだわって作品を発表している作家だと聞きます。しかし、私はまだ『クロック城』の一作しか読んでいないので作家の話は置いておいて、作品の感想だけ書いておきます。


 『『クロック城』殺人事件』の舞台は、世界が間もなく崩壊する世紀末の1999年。数々の不思議な現象が起こる世界の中で、物語は三つの巨大な時計が設置された『クロック城』で起こった首なし密室殺人事件をメインに進みます。


 密室殺人には巨大な時計を活用した大規模なトリックが使われており、謎解きのシーンでは図解付きで解明されます。うっかり図解のページを開いてしまわないように注意してください。


 トリックは容易で、そこそこ見破れる人もいると思います。ただ、個人的には描写がややアンフェア気味なのが気になるところ。「~はできなさそうだ」と描写されていたことが実際には可能だったという箇所が見受けられました。


 でも、メインのサプライズは密室ではなくて首切りの理由。これも現実的には納得し難いのですが、よく考えたなと思います。


 世界観が十分に説明されていなかったり、犯行可能性が十分に感じられなかったり、細々とした瑕疵はあると思うのですが、あくまでもデビュー作であり代表作ではないようなのでこのくらいに留めておきます。「物理トリックの名手」とまで言われる由縁はやっぱり気になりますから、いずれ『『アリス・ミラー城』殺人事件』も読んでみたいと思います。


 次回は、ドラマ化もされた貴志祐介の『硝子のハンマー』です。

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