#10 ジョン・スラデック『見えないグリーン』
欧米では、戦間期の本格ミステリ黄金期以降、本格もののミステリはめっきり減ってしまったのですが、たまにゴリゴリの本格が突然飛び出してくることがあります。1977年に発表された『見えないグリーン』は、SFを主に書いているアメリカの作家ジョン・スラデックによる本格ミステリです。
登場する密室は三つ。一つ目は、密室状態のトイレ。二つ目は、容疑者が全員屋外にいるはずの状況の家の中での殺人。三つ目は、戸締りが厳重な家の密室です。
有名なのは、一つ目のトイレの密室のトリックです。バカミスの古典と言われているとかいないとか。でも、日本の新本格ミステリを通ってきた読者なら、この程度のトリックは全然許容範囲だと思います。よくできた面白いトリックです。
個人的には、三つ目のトリックも良い。文庫版巻末の法月綸太郎の解説文に書かれていることと同じ感想ではあるのですが、あっさり描写されているあの殺しの場面を実際に思い浮かべてみると、結構むごいことをやっていることがわかります。あえて簡潔な描写にすることで作者は強烈なブラックジョークに仕立て上げていると私は思っていて、お気に入りです。
全体的に黄金期の本格ミステリのような簡素な描写が多く、時代を考えれば驚かされます。しかしながら、やはりこの作風は欧米ではウケなかったのか、探偵サッカレイ・フィンのシリーズは二作で終了しています。
次回は、ミステリ史に残る伝説の大トリックが飛び出す! 島田荘司の『斜め屋敷の犯罪』です。
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