#03 アーサー・コナン・ドイル『まだらの紐』

 古今のミステリファンと同じく、私も小学生の頃にコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」シリーズに出会いました。一通り読みましたが特に第一短編集の『シャーロック・ホームズの冒険』が面白すぎて何度も読んでいました。『まだらの紐』はその中の一編です。


 自宅の部屋で寝ていた女性が「真夜中に口笛の音が聞こえる」「まだらの紐」などといった言葉を残した数日後に密室の中で死亡してしまいます。2年後、双子の妹が同じ部屋で寝ることになると、同じ音が聞こえてきたためホームズに依頼にやって来たのでした。


 改めて考えてみると、真相は『モルグ街の殺人』とそう変わりません。犯人の正体さえわかれば、密室の謎は大したものではなくなってしまいます。それでも、こちらは事前に伏線がしっかり張られているため、フェアな印象はします。タイトルにもなっている「まだらの紐」が、まさに真相そのものを表しているのは大胆です。


 ちなみに、今Wikipediaのページを読んでいて知ったのですが、原題のThe Adventure of the Speckled Bandは確かに「まだらの紐」と訳すことができるのですが、一方でbandには「一団」という意味もあります。海外ドラマの『バンド・オブ・ブラザース』と同じ意味のbandです。『まだらの紐』では、bandが「ジプシーの一団」を指しているとも取れるようになっているとか。つまり、タイトルだけでは「一団」か「紐」かもわからないという巧妙な仕掛けが施されていたのです。


 次回は、ガストン・ルルーの『黄色い部屋の秘密』を扱います。

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