#02 イズレイル・ザングウィル『ビッグ・ボウの殺人』
エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人』は世界初の密室殺人だったかもしれませんが、世界初の密室ミステリとしてはイズレイル・ザングウィルの『ビッグ・ボウの殺人』がよく挙げられます。
というのも、こちらは本当に密閉された部屋の中で殺人が行われ、その実現のためにトリックが用いられているからです。しかも、作者のザングウィル自身が序文で自信満々に「これまで出入りできない部屋での殺人を書いた作家はいない」とまで述べています。
事件はいかにも典型的な密室殺人です。下宿していた男がなかなか起きてこないので、大家が起こそうとしたらドアが閉まっていました。不安な予感がしたので、大家は近所に住んでいた退職警官に助けを求めて扉をこじ開けてもらいます。すると、そこには喉を掻き切られた死体があったというわけです。
トリックは、物理トリックではなく心理的なトリックになっています。密室トリックを考える際、最初に考えるのはどうやって鍵や窓に細工をするかという物理トリックになってしまいがちなので、先行作のまだ存在しない1890年に初めて心理的な密室トリックを生み出したイズレイル・ザングウィルは偉大です。
さすがに元祖密室トリックなだけあって、ここで使われているトリックはすでに様々な作品で使われまくっています。それでもミスリードが非常に上手いので、案外、現在の読者でも騙されてしまうでしょう。独自のユーモアも大きな魅力になっています。
次回は、コナン・ドイルの『まだらの紐』を扱います。
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