第8話 持ち主のない落とし物
「おはよう、
朝のエントランス。エレベーターから降りてきた天宮神無を待ち受けていたのは他の誰でもないロイス(
「……
そりゃ、中身が別人ですからなんて口が裂けても言えないロイスである。
「ま、いいわ。こんな朝からなにか用かしら」
「大した用じゃないんだ。これを返そうと思って」
そう言うとロイス(
「
神無はしばらくロイス(
「私のじゃないわ」
「へ?」
「聞こえなかったの?そんなかわいいキーホルダーは私のじゃないって言ったの」
まさか、違うと言われると思っていなかったロイス(
「え、だってこれ昨日
「しつこいわよ。違うと言ったら違うの。落とし物なら一階のフロントにコンシェルジュがいるからその人に渡しなさい。それじゃ」
そう言うと
「……まいったな」
コンシェルジュとかが良く分からないロイスはとりあえずポケットにスライムのキーホルダーを戻して登校することにしたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
甲高いノックの音が部屋の中に響き渡る。
「はい」
アシュリー・スノースマイル騎士長は執務の仕事の手を止めずに訪問者に応える。
「お仕事中失礼しますわよ」
間髪入れずに部屋に入ってきたのは身なりの良い女性である。自信満々な勝気な瞳が印象的だ。
「これはジュリア女王陛下。こんな所までいらっしゃるとは」
訪問者はまさかの女王陛下であった。いうまでもなくこの国のトップである。アシュリー騎士長は手を止めてジュリア女王陛下をソファに促した。
「いまだに慣れませんわね、女王陛下なんて」
「では昔のようにジュリア姫とお呼びしましょうか?」
「その呼び方も懐かしいですわね。特に二人の時は」
和やかなムードの中、アシュリー騎士長はてきぱきとお茶の準備をする。
「それで今日はどういったご用向きですか?」
「いえ、そんな大したことではないのですわ。久しぶりにあなたの顔を見に来たついでに一つ聞きたいことがあるのですわ」
「聞きたいことですか?」
アシュリーはジュリア女王陛下の前に紅茶を置き、自身もその対面に座る。
「例の任務のことですわ」
ジュリア女王陛下は少し声のトーンを落とす。
「ああ、そのことですか。それでしたらぬかりなく。既に人選も終えて異世界に送っております。すでに向こうで任務を遂行しているでしょう。向こうには
「そうですの。それならば良いのですが……」
「何か気になることでもございましたか?」
何か言いにくそうに言葉を濁すジュリア女王陛下。
「今回の件は全てアシュリーに任せていますわ。ですので何か問題があるというわけではないのですけれど、一つ気になる噂を聞いてしまいましたの。あなたが人選した第3騎士団長のことですわ」
「ロイスですね。ロイス・スノースマイル。彼がどうかしましたか?」
「あなたも人が悪いですわね。私の耳にも届いているくらいなのだからあなたが知らないはずないでしょうに」
ジュリア女王陛下は軽くため息をつく。
「彼、ロイス・スノースマイルがシュラ国騎士団で最弱と言われている、ということについてですわ」
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